容易に持ち歩ける軽い道具があると、それまで諦めていた風景に眼がゆくようになる。掲載したカットは、いつものGF-1に180mm相当の単焦点レンズを用いて、御所の庭から室内の障壁画を撮影してみた。あら!なかなか美しいではないですかという新たな発見があった。
もちろん室内は大変暗いので、撮影したカットは、フォトショップで相当な修正を加えた。歪曲収差の少ないレンズだから、比較的自然に見られるようだ。
その時は、前のブログで使用しているズームレンズを付けたFuji FinepixS5、GF-1に望遠レンズという二台を持ち歩くスタイルだったので、重さが苦にならず大変軽くて便利で楽ちんなシステムであった。
昔、ニコンF4にF3をサブに持ち、広角、標準、望遠とf2.8の3本のズームレンズのフルセットを入れた撮影システムをカメラバックに詰め込んだ。 そしてハスキーの三脚を加え、さらに私は研究者だから、文献や資料やパソコンが加わる。これで装備は完璧であるから、さあ、なんでもこい!、という気分だ。そこで意気揚々とこれらすべてを担いで出かけようとした。
だが肩にくいくむ複数のバックや三脚は、とても1日を軽快に歩き回れる重さではなかった。結局このフルシステムでは、私の場合は研究も撮影もできないということがわかり、フィールド調査に持ち出したことは一度もなかったという経験がある。
あるとき私の教え子で新聞社に就職し、写真記者をしているF君が、フラリと私の研究室にやってきた。あれ!いつもの重たい機材バックはどうしたの?、といいたくなる軽装であった。「最近これがとても良いのですよ」、といって出してくれたのが、ニコンの18~70mmのズームレンズを付けたD70が1台だけであった。それがもの凄く知的で精悍に見えたことを覚えている。
F君は、この極めて軽い機材で、新聞に多くの建築関連の記事を書いていた。最近のプロは、写真だけを撮っていては仕事にならないので、取材のために軽装でアクティブに活動できることが、報道の仕事の前提にあるのだろう。だから写真記者なのであろう。
そういえば、大艦巨砲主義という言葉だが、昔の日本海軍の戦艦大和がその象徴であり、最後は時代に合わなくなり航空機の雷撃によってあえなく沈没するのであるが、どうも今のメーカーのブログを見ていると、いまだにその古色蒼然とした主義を貫く重量級機材が目につくのには驚きを覚える。それに価格も重量級だ。あの巨大なプロダクトは、一体誰が使うんだろうか。私の教え子である写真記者F君のように、毎日仕事をしているプロは意外に軽装ではないか、というのが個人的認識なのだが・・・。
京都御所,御常御殿,
GF-1,TELE-ELMARIT f2.8/90mm,
シャッター:1/60,絞りf4.0,ISO400,撮影モード:スムーズ.