Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

PEN LIFE1517.  スモールマス

2018年01月18日 | diving

 スモールマスという市場概念がある。日経MJ紙2018年1月17日1面では、インターネットやSNSが主流になってくると消費者個人の声が聞こえてくる。そんな小さな市場向けに商品開発したのが、亀田製菓のたっぷりピーナッツの柿の種であり、崎陽軒のタケノコ煮を増量したシュウマイ弁当などを紹介している。そうして定番以外の商品をだしてみると、むしろいつもの定番商品への認識が高まったという記事だ。

 個人消費者の性格をよくあらわした現象である。いやー、もっとタケノコが多い方がいいなぁー、そう思って実験したら、やはり定番商品がいいや、という結論になる。それは定番再認識の市場戦略なのだろう。個人の声を聞けば市場がわかるというのはプロの立場からみれば幻想であることは今も変わらない。

 個人消費者は気分で意見を述べ、そして企業がそれに応えるためには生産ラインを新しくつくる投資をしなければならないから、とても個人の気分につきあっていては企業が成立できない。そう考えれば、既に私たちは大きな生産・物流システムの中にどっふりとひたってこれを利用しているわけだ。だから容易にはスモールマスの市場には手を出したくないし、個人消費者もじゃあ手作り弁当にしようとなるだけの話である。

 企業活動の現場では、消費者個人の意見を把握している担当者と現場の生産ラインとが対立する図式になり、それぞれの担当者の悩みどころとなる。そうした場合結論は明白であり、生産システムに乗せられなければ個人の意見は無視するほかない。文化系の商品開発や広報の担当者が悩んだところで、線形計画法で武装した工場現場の担当者を口説けないだろう。

 同紙面には気になる記述があった。企業の事業開発部長の意見として「いはまどんどん多様化しバラバラな方向をみている。しかもそのばらばらのライフスタイルが主張される時代」とあった。ホントにそうだろうか。実はバラバラバラではなく、ネットやSNSによって簡単に無責任気分で大きな声でものがいえるといった具合に、ものすごく画一性の高いライフスタイルではなかろうか。そうでなければユニクロや無印良品がここまで業績を伸ばしたりはしないだろう。

 今の私たちの社会は、巨大な生産物流システムに支えられたものすごく単純なライフスタイルの社会だという認識も成り立ってくる。だからこそ画一化に嫌気がさした消費者が気まぐれ的に発言する時代になったし、それがネットやSNSだと捉えるいうべきである。

 個人の意見を尋ねて失敗した例がある。イギリスのEU離脱問題がある。世界的経済は好調なのにあえて選挙で真意を尋ねたら離脱派が勝利した。といってイギリスは、なかなかEUから離脱しない。やっぱり離脱しない方がよかったのではないかとする意見もあるだろう。今頃気がついても遅いのだが、それが個人の意見の特性なのだ。つまり、はっきりとわかるまで時間がかかるということだ。だからもう一度選挙をすれば、EU復帰になる場合もあるだろう。他山の石としてこちらは勉強しておこう。

 そうした考え方をひろげてゆくと、すでに民主主義社会というのが幻想になってくる。我々は帝国主義でもなく民主主義でもない新しいイデオロギーに到達しているのではなかろうか。まあそれは文化系の仕事なので、私はその答えを知らないが・・・。

 

沖縄県儀志布島カメパラダイス

OLUMPUS E-M1,M.ZUIKO DG FISHEYE 8mm/F1.8
 ISO200,露出補正-1.3,f/7.1,1/100

 

 

 

 

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