Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

PEN LIFE1592.  小説:小樽の緑12.  朝里川温泉

2020年01月29日 | Sensual novel

 

 朝里川温泉は、北海道らしいといえばそのとおりで建物が点在しているから、街並みが続き温泉地の空気が漂うといった景観ではない。なにしろ目の前がスキー場だ。小樽から路線バスで20分一寸、冬のレジャーとしては近くて便利なところだ。 

 翠を連れて雪が積もった坪庭が眺められる家族風呂だ。中居さんが1時間までですと念をおしてくれる。

 二人になると翠がくちびるを寄せてきた。

翆「しよう!」。

 そんなわけで温泉そっちのけで洗い場をゴロゴロしながらやっちまったら、あっという間に1時間。みんなこんなことしているんだろうな。それで仲居さんが念をおしたのか・・・。

 あら量が減ったよ!、と翆は気になることを言ってくれる。

翠「なんか家族風呂って興奮しない?」

女って家族風呂で燃えるんだ。でっ部屋で遅い昼飯をたべてごろ寝してしまった。そんなわけで、温泉もそこそこに小樽に戻った頃には冷えた身体がだるい。

翆「じゃ、はやく寝ようね。」

寝てばっかりじゃないか・・・

 ・・・

 朝、熱がある。体もだるい。あっ!、風邪をひいたか・・・。

翆「市販薬は何を飲んでも効かないから病院へゆけ・・・」

翆は、そういってお店へ出かけていった。

また小樽は病院が多い。それで元ナースの翆は小樽にいるのか。

 そこで近くて小ぶりの病院を探した。雪の街の中に平屋建ての洋館風の医院、それだな、アチキのイメージは。というので名前で判断し、○△医院なんてのを探し、足取りもおぼつかない雪の坂道を下りながら鉄道を越えて海側に出た。そしたら数階建ての立派な医院、いや病院だよ。

 医者に症状を説明したら、温泉にいって風邪ね!?、と笑われ、抗生物質といくつかの風邪薬をくれた。 

 不思議と病院に行くと元気になる。多分医者の暗示作用だ。

 でっ、病院のそばの喫茶店でオムライス、風邪で味覚は鈍っているが美味しい。この瞬間、ああっ!、これが小樽の風景だ。病院の待合室、喫茶店のオムライス、あの何本もある雪の坂道、つららが下がっている翆の木賃アパート・・・、そんな風景を頭の中で記録しながら帰った。

・・・・・

夕方解熱剤が効いて汗をかいている。インナーを取り替えるのにも躊躇するぐらい部屋は冷たい。夜、翆が食材を抱えて帰ってきた。

翆「やっぱ元気ないなぁー」

といってアチキの一ブツをにぎっている。それって看護師の診断方法かい?。

翆「しばらく寝てるんだね・・・」。

食材を刻む音が聞こえる・・・。

小樽、明日は日本海を低気圧が通過してゆく予報だから、雪だ。寝ているのには調度よいか・・・。

 

 

 さて、こちらは、2つの仕事のために昨日まで沖縄にいた。遠くに見える沖縄県庁の独特の屋根が、なかなかよいではないか。建築設計は黒川紀章だから、あまりプロ筋には評価されないのだが、それでもあの独特の屋根はヨーロッパの教会のようでもあり、那覇の街の絵になっていた。

 さて、雪国に思いをはせ、小樽の翆を続けよう。晩婚化に対して早婚化とする今の時代とは逆の設定にしてみた。そこから、どんなイメージやストーリーができるかを探ろうというもの。昨今暖冬であり雪の風景がないのは寂しい。少し雪の過去画像を用いて小樽の翆に言語空間を泳いでもらおう。

コメント
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