Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

PEN LIFE1593.  小説:小樽の翆13. マサヒロ君

2020年01月30日 | Sensual novel

 

 小樽の駅で積丹行きのバスを待っていたら、マサヒロ君が美術研究所に向かって歩いて行くのがみえた。どうしようかなと思っていると、向こうも私に気がついた。

「ああっ、あのときのオジサンで・す・か!」

特に返す言葉もなく、オッス!、と挨拶した。ふと、もう少し話をしてみようかなと思った。私にしては珍しい衝動だ。時間があったらお茶してく?、と呼びかけた。

「ママの喫茶店ですか?」

いやいや違うところでと返事をしたら、いいですよとついてきた。

ビルの2階の静かな喫茶店だった。ありきたりの質問からしてみようか・・・。印刷会社じゃどんな仕事をしているの。

「マックを使って編集ですよ、僕、編集が旨いんです。だって小さいときから絵を描いていたから、バランス感覚とか色彩なんて簡単にできちゃうわけです。岡本太郎という画家をご存じですか?、当時沖縄の写真を撮っていて、すごい写真なんです、でも社会では、画家なのに何処でそんな技術を学んだのかとか、新聞社のカメラマンが撮ったんだろうとか、議論が沸騰していた。でもデッサンを勉強してくれば、そんな写真を撮るなんて簡単なんですよ。それと一緒です」。

その話は、俺も同感。時々外れるけど、多分なにをやらせても旨いんだろうな。意地悪な質問をしてみようか?。おとうさんって、どんな人?

「普通のサラリーマンです。事務の仕事をしているです」

ありっ!、翆は教えてないといったのに、こいつなんで知ってるんだ・・・。

「ママは教えてくれなかったけど、僕はちゃんと調べたんです」

抜け目のない奴だな。

「調度、茉莉が妊娠したとき、僕のお父さんってどんな人だろうと興味をもったんです。そこで会社関係の興信所で調べてもらったんです。すぐにわかりました。」

茉莉さんて、まだ高校生だろ。

「僕が高校3年のとき美術部に入ってきたときは彼女が、まだ高校1年生だったんです。出会ったときにピンと来たんです、直感かな。だからつきあってもう3年たちます。世間でいえば長い春ですよ。相手が高校生というのは学校制度の話ですから、でも女としては適齢期でしょう。昔は12で嫁に行ったという話も小樽ではあります」

こいつ大人じゃん・・・。話題変えよう。お父さんからデッサンの手ほどきでも受けたの?

「手ほどきは受けていないですけど父の絵をみていたら、なんとなくわかっちゃって、ああっ、立体的に描けばいいんだということが、あとは絵具との遊びですよ」

どんな絵を描くの?

「なんでも、つまりアニメや油絵から最近はコンピュータグラフィックスが多いかな。」

・・・・・・

話題がつまったなぁー。

「あのー、ママはオジサンさんのことが好きですよ、大切にしてあげてください!。僕に彼女がいても、ママは一人だったでしょ。そんなときママのアパートに行ったら、入り口で偶然見たんです。奥でママがオナニーしているところを。寂しかったんだと思います。」

うぅっー!、若いのに、そうハッキリいわなくても・・・・こちらはトホホ!!、じゃないか。もうじきマサヒロ君の彼女に子供が生まれるし・・・。早熟!というよりは、大人になるから必要な知識は身につけている。でも、昔はそれが普通だったな。俺たちの時代が万事遅すぎるんだろう。

「そろそろ、時間なので僕は行きます・・・」

そういってマサヒロ君は、街の風景の中に消えていった。

コメント
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