朝のバスレーンくねくね路線は、当然のことながら市内中心部で降りる人が多い。そんな中、一人の男性が“手袋をしたままの大きな親指で、定期券の日付をしっかりと隠したまま”降りようとした。
私が袖口に軽く触れながら「あ、すいま…」と言うよりも早く、そのジジイは「い~いっ!?(これで良いか?)」と怒ったように言いながら、私の目の前(約10cm)へ定期券を突き出した。もちろん、老眼が始まっている私にはキツい距離である。
が、何とか日付を確認できたので、私は胸の中で沸騰する熱いモノを抑えつつ「はい、いいですよ」とクールに答えて、あとは続けて降りる人たちに「ありがとうございました」と普通に繰り返していた。
バスから降りたジジイは、まだ何か言いたそうにこちらを見ながら歩道上をウロウロしていたが、そういう時に目を合わせると“相手を喜ばせてしまう”ので、私は直視せずに無視… ミラーを見て、扉を閉めて、バスを発車させた。
後になって考えてみれば、呼び止められるのを待っていたかのような反応の良さだったような… 私が何も言わないうちに、サッと定期券を突き出して… ひょっとして、あれは罠なのか… いやいや、きっと話し相手が欲しかっただけだよね、おじいちゃん!(んなわきゃねぇか…)