グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

性は温度で決まる

2009年09月18日 | 哺乳類、爬虫類、他
 美しいシュスランの花の次に、ちょっと気が引けるなあ・・・失敗したタコ焼きみたいな・・・発泡トレーにのっているけど、実はこれウミガメのタマゴです。左側8個は生きていません。

 先週の日記に書いた産卵巣(さんらんそう)調査観察会の時、初参加の方から孵卵途中で除去した「生きていない卵」って、どうして分かるんですか? と、ご質問を受けたので、この場をお借りしてご覧頂きます。

 私たちが普段食べているタマゴ---鶏卵(玉子)は、カラが硬くて、中で胚が生きているのか?いないのか? 分からないですね。分からないから良いんでしょうか?! カメの卵のカラは、薄くてやわらかでマンマル。

 未受精卵(無精卵)や、胚発生が途中で停止して死んでしまった卵は、日数が経ったものなら、こんなふうに外見で分かります。

 産卵地点が波打ち際に近く、台風の接近で何度も波をかぶって砂が堆積したので、卵を掘り出してもう少し安全な場所へ移しました。浜が侵食されて卵が流出してしまいそうな場合や人間の盗掘や動物の食害の危険がある場合などに行なう保護の方法で、「卵の移植」と言います。移植の時に、明らかに生きていない卵8個を除去しました。

 先週、孵卵温度と期間の関係を書きましたが、これには続きがあります。ウミガメ類は卵の時の温度---孵卵温度で♀♂(雌雄:性)が決まります。温度に依存して性決定がされるので「温度依存性決定(TSD:temperature-dependent sex determination)」と言われる現象・様式です。このことがあるので、移植は慎重にしなくてはいけません。生まれる子ガメの性別を変えてしまう可能性があるからです。

 孵卵期間の中程の期間、温度が約29度で、生まれてくる子ガメはオス50%メス50%になるそうです。これが26~28度ではオス100%、32~34度ではメス100%とのこと。地温が高くなりがちな大島では、メスの子ガメが多く生まれているということですが、子ガメの時には外見上で雌雄が判別できないんですー。(苦!)

 8月上旬までずっと雨が多く地温が低めでしたので、見送った6匹の子ガメは男の子だったはず、と地温計測から推察してます。

 北上中の14号、台風一過、秋晴れが続いて欲しいなあ・・・次の孵化のために。


 なお、ウミガメの卵の採取は、東京都の漁業調整規則などで禁止されています。東京都漁業調整委員会から特別な承認を得た東京都農林水産総合センターに調査協力して活動しています。
   
(なるせ)
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