尖閣諸島の問題や竹島の問題は、きわめて冷静に考える必要がある。ネットなどでは無責任な放言が渦巻いているが、軍事衝突を避けるためにどうしたらよいか、冷静にかつ現実的に考えていくことが求められている。
本書は、もと外交官であった東郷氏が、尖閣諸島、竹島、北方領土、歴史認識問題(河野談話、村山談話)について、もちろん元外交官として、日本政府の立場に立ちながらも、どうしたらよいのかを考えたものである。
私とは意見が食い違うところもあるが、冷静かつ現実的な問題提起に学ぶところが多かった。
特に、「右」からの威勢の良い発言が、「我が国の国益を毀損し、場合によっては国の存立を危うくする」は同感である。
そして「憲法九条という条文一つによって、思考停止に陥り、何も考えなくなるという私たち皆がもっている、耐え難い傾向性に」対する、東郷氏の疑問である。たしかに憲法九条を擁護せよ、というだけで、東アジアの政治状況、日米関係などについてしっかりと検討しようとしないことは、大きな問題ではある。
もちろん、国際関係から考えて憲法九条がもつ意義は、とてつもなく大きいことは事実である。とくに東アジアや東南アジアとの関係で、かつての侵略国・日本の現在のあり方を示し、日本に対するある種の信用や保障を担保するものとなっていることを忘れてはならない。もしも改憲が行われたら、アジア諸国だけではなく、世界諸国の日本を見る眼は、当然厳しくなる。
エピローグで東郷氏は、「何よりも必要なことは、日本自身が、他者の痛みを感じ、他者の苦しみを理解する謙虚さのうえに立つことである。謙虚さの狭き門より日本が入るなら、日本の苦しみはかならず理解される。他者の心理を解らずに自己の正義を主張する傲慢は、今の日本にとっては、狂気となる」は、ぜひ安倍首相に聞かせてやりたい言葉である。
本書は、もと外交官であった東郷氏が、尖閣諸島、竹島、北方領土、歴史認識問題(河野談話、村山談話)について、もちろん元外交官として、日本政府の立場に立ちながらも、どうしたらよいのかを考えたものである。
私とは意見が食い違うところもあるが、冷静かつ現実的な問題提起に学ぶところが多かった。
特に、「右」からの威勢の良い発言が、「我が国の国益を毀損し、場合によっては国の存立を危うくする」は同感である。
そして「憲法九条という条文一つによって、思考停止に陥り、何も考えなくなるという私たち皆がもっている、耐え難い傾向性に」対する、東郷氏の疑問である。たしかに憲法九条を擁護せよ、というだけで、東アジアの政治状況、日米関係などについてしっかりと検討しようとしないことは、大きな問題ではある。
もちろん、国際関係から考えて憲法九条がもつ意義は、とてつもなく大きいことは事実である。とくに東アジアや東南アジアとの関係で、かつての侵略国・日本の現在のあり方を示し、日本に対するある種の信用や保障を担保するものとなっていることを忘れてはならない。もしも改憲が行われたら、アジア諸国だけではなく、世界諸国の日本を見る眼は、当然厳しくなる。
エピローグで東郷氏は、「何よりも必要なことは、日本自身が、他者の痛みを感じ、他者の苦しみを理解する謙虚さのうえに立つことである。謙虚さの狭き門より日本が入るなら、日本の苦しみはかならず理解される。他者の心理を解らずに自己の正義を主張する傲慢は、今の日本にとっては、狂気となる」は、ぜひ安倍首相に聞かせてやりたい言葉である。