浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

まっとうな意見

2013-04-29 20:03:40 | 日記
 現在、まっとうな意見を堂々と掲載する新聞は、『中日新聞』(『東京新聞』)である。もちろん『沖縄タイムス』、『琉球新報』などもあるが、広範囲の地域で発行されている新聞では、中日新聞社が代表となろう。私の友人たちも、完全に権力の翼賛機関となった『朝日新聞』をやめて、『東京新聞』にかえている。

 さて「アベノミクス」が喧伝される中で、景気が回復している報道がなされている。ボクはほとんどテレビを見ないので、友人に教えてもらったのだが、ワイドショーなどで、デパートで高級品が売れていることを流しているという。確かに株価が上昇しているから、株を持っている人は、何もしないでも資産は上昇してるはずだ。『日本経済新聞』の4月15日付けの記事に、「株高で資産増100億円超 個人株主38人の顔ぶれ」というものがあったが、この人たちだけではなく、資産家は多かれ少なかれ、資産増となっているはずで、高級品はそういう資産家が購入しているのだろう。
 
 一般の労働者には無縁な話だ。しかし、そういう情景がテレビで放映されれば、なんか景気が良くなったかのように錯覚する人もいるのだろう。それが安倍政権の支持率増大につながっている。

 だがしっかりと現実をみれば、給与所得者の場合、何も増えていないのだ。若干の企業が、安倍政権に媚びを売るために少しばかりの給与アップをはかったにすぎない。

 4月21日の『中日新聞』の社説は、そういう現実に対する、まっとうな意見である。呼んで欲しい。


週のはじめに考える 企業は国民のために    2013年4月21日

 今春闘は賃上げ率が二年連続で下がる見通しです。企業経営者に「どうすれば国民が安全で文化的な生活を送れるか」の視点が欠落しているようです。

 大手企業の定期昇給とベースアップなどを合わせた賃上げ額は六千二百三円、賃上げ率は昨年の1・94%を下回る1・91%。経団連が発表した今年の春季労使交渉結果の第一回集計です。最終集計は六月の予定ですが、その傾向は大きくは変わらないでしょう。

 名目賃金は一九九七~二〇一二年に13%も下がりました。この間、戦後最長の景気拡大期に入り、実は売上高経常利益率がバブル期を上回る水準に達していたのです。なぜ、勤労者の懐は温まる気配を見せないのでしょうか。

◆「利益は内部留保」では

 このからくりを分析した報告書が指摘しています。「企業業績の改善を賃金の上昇に結びつける行動が弱くなっている」

 財務省の法人企業統計調査を基にした分析で、利益分配が株主重視、人件費抑制の方向にあると結論づけています。株主総会を円滑に乗り切ろうと配当を厚くし、リーマン・ショックのような有事に脅(おび)えて内部留保を二百兆円以上も積み上げているのが現実です。

 報告書をまとめたのは賃上げを求める側の労働組合ではなく、厚生労働省です。さすがに、勤労者への利益分配を極端に抑え込んでいる企業の振る舞いを許容できなかったのでしょう。

 「平成24年版 労働経済の分析」と題する報告書は、自ら働いて人間らしい生活を営むことができる分厚い中間層の復活が求められる-と、非正規雇用などの分析にも踏み込んでいます。

 大企業や中小企業に雇用されている勤労者は約四千三百万人に上ります。うち派遣やアルバイト、パートなどの非正規社員が三人に一人、約四人に一人は年収二百万円以下で働いており、大切に扱われているとはとても思えません。

 男性の結婚割合は正規社員が48%、非正規は17%。子供の数も正規一・七九~一・九人、非正規一・〇九~一・三六人です。企業は平均年収百七十万円の所得格差が子供の数にも影響を与えている実態と誠実に向き合うべきです。

 千社を超える主要企業が加盟する経団連の企業行動憲章は「従業員が安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」とうたっています。

 安全で文化的な生活を国民にどう保障するかなど「国民の経済」の理念と似ています。しかし、企業にはともに重要な利害関係者であるはずの株主と従業員をこうも差別しては、自らの理念に背いていると言わざるを得ません。

◆経団連の理念に背くな

 その象徴が専門職などに限られていた派遣を製造業にも拡大した〇四年の労働者派遣法改正です。「働く人の多様化に備え雇用形態を自由化する」が触れ込みでしたが、実際は賃金を抑える企業に都合のよい雇用の流動化でした。企業の多くが「賃金が節減できた」とはっきり答えています。

 法改正したのは当時の自民党政権であり、安倍晋三首相はその経緯を知ったからこそ、経団連などに賃上げを求めたのでしょう。その答えが前年より低い1・91%では、なめられたも同然です。企業は日本を母国とする以上、国民経済に資する行動を貫くべきです。

 トヨタ自動車の子会社が岩手県で生産している小型ハイブリッド車、アクアの一二年度販売台数が二十八万台に達し、プリウスを抜いてトップの座につきました。

 燃費性能やコンパクトな車体が人気を呼んでいます。工場の従業員二千六百人に加え、千社に上る部品供給会社の雇用も増えています。発売から一年余、既に六万台近くが米国などに輸出され、海外の需要を取り込み始めました。

 宮城県に企業内訓練校を開校し、東北のモノづくりの拠点づくりにも乗り出しています。トヨタの目標は国内生産三百万台。技術革新、技能伝承に最低限必要な台数を維持し、プリウスやアクアのようなヒット商品を生み出す戦略です。これは一つのモデルケース。企業は思い切って国民生活の向上に力をつくすべきです。

 今月、岩手県も自動車産業振興課を新設し、雇用創出に向け企業の受け入れ体制を強化しました。

◆嘆かずに一歩前へ

 本業の土台を立て直し、賃金を増やして家計の財布のひもを緩めさせ、景気をよくしてデフレから抜け出す。企業の出番です。韓国企業などに追い上げられて弱気になり、賃金抑制に逃げ場を求めてはなりません。法人税が高すぎるなどと、「六重苦」を嘆いてばかりでは展望も開けません。

 生産拠点を維持して利益を勤労者に還元する。国民経済に資する企業の気概を示すときです。

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