この自民党憲法草案に、「新しい人権」を新たに書き加えたと、自らを礼賛している。
『Q&A』は、こう書いている。
日本国憲法改正草案では、「新しい人権」(国家の保障責務の形で規定されているものを含む。)については、次のようなものを規定しています。
(1)個人情報の不当取得の禁止等(19 条の2)
いわゆるプライバシー権の保障に資するため、個人情報の不当取得等を禁止しました。
(2)国政上の行為に関する国による国民への説明の責務(21 条の2)
国の情報を、適切に、分かりやすく国民に説明しなければならないという責務を国に負わせ、国民の「知る権利」の保障に資することとしました。
(3)環境保全の責務(25 条の2)
国は、国民と協力して、環境の保全に努めなければならないこととしました。
(4)犯罪被害者等への配慮(25 条の4)
国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならないこととしました。
なお、(2)から(4)までは、国を主語とした人権規定としています。これらの人権は、まだ個人の法律上の権利として主張するには熟していないことから、まず国の側の責務として規定することとしました。
19条の2は、重大な問題を有するのであとから論じるつもりであるが、それ以外の事項については、国の「責務」、あるいは「配慮」としてあり、「義務」とされているわけではない。逆に、なぜ国民の権利にしないのか、きちんとやるつもりがないからだろうと思う。たとえば、こうすればいいのだ(でも、別に現行の人権規定から、すでに環境権などは権利として確立されているから、あえてこうした条文をつくる意味はないのではないか)。
国民は、健康的な、より良い環境を享受できる権利を有する。
国民は、国政上の行為につき、説明を求める権利をもつ。
さて次は第24条である。自民党憲法草案を掲げる。
第二十四条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
現行憲法は以下の通り。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
なぜか、自民党憲法草案では、現行憲法の「婚姻は、両性の合意のみに基いて」から、「のみ」をカットしている。婚姻の成立をそれ以外の要因を含めようというのであろうか。
草案の第3項、現行憲法の第2項の異同については、その趣旨がわからないので指摘だけにとどめる。
問題は、憲法草案に家族の規定が盛り込まれていることだ。おそらくこれは、家族の扶養義務を強化しようとしているのだろう。
憲法を、国家が国民に守らせたい規則を記した、いわば「御触書」にしたいという意向が、ここでも確認できる。