浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

まっとうな思考

2013-06-28 13:31:33 | 日記
 今日の『東京新聞』のコラム。

<俺は殺されることが 嫌ひだから 人殺しに反対する、従つて戦争に反対する、自分の殺されることの 好きな人間、自分の愛するものゝ 殺されることのすきな人間、かゝる人間のみ戦争を 讃美(さんび)することが出来る>

▼白樺派の作家、武者小路実篤の詩「戦争はよくない」の一節だ。自分は殺されたくない。愛する人が殺されるのを見たくもない。夫や子を戦場には行かせたくない。そんな思いこそは、戦争を防ぎ、不幸にして起きた戦争を終結させる最大の力だ

▼米軍の無人機のパイロットたちを送り出す妻が、夫の戦死を案ずることはないだろう。無人機が飛ぶのは米国から一万キロも離れた戦場の上空だが、操縦は本土の基地で行う。仕事を終えたら、テレビの連続ドラマに間に合うようにマイホームに帰る

▼そんな戦争の新しい形を支えているのが人工知能だ。『ロボット兵士の戦争』(P・シンガー著)によれば、米国内で人工知能研究に費やされる資金のうち、八割は米軍が提供しているという

▼自ら敵を探し、仕留める。当然ながら、何の疲労も葛藤も感じないまま。そんなロボットの開発は凍結すべきだとの勧告が
国連に出された。勧告は「ロボット兵器に殺人を許すことは、命の重みを軽んじかねない」と指摘する

▼<殺されることが嫌ひ>という感情こそは、ロボット開発に必要な「安全回路」だろう。



 こういう文は読んでいて安心できる。まったくまっとうな感情であり、思考である。これを「極左」というなら、「極左」こそまっとうだということである。
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自民党憲法草案(その14)

2013-06-28 12:48:38 | 日記
 さて各部大臣によって構成される内閣であるが、自民党憲法草案には大きな特徴がある。それは、内閣総理大臣の権限を強くしていることだ。

 『Q&A』には、次のような記述がある。

現行憲法では、行政権は、内閣総理大臣その他の国務大臣で組織する「内閣」に属するとされています。内閣総理大臣は、内閣の首長であり、国務大臣の任免権などを持っていますが、そのリーダーシップをより発揮できるよう、今回の草案では、内閣総理大臣が、内閣(閣議)に諮らないでも、自分一人で決定できる「専権事項」を、以下のとおり、3 つ設けました。
(1)行政各部の指揮監督・総合調整権
(2)国防軍の最高指揮権
(3)衆議院の解散の決定権
(1)行政各部の指揮監督・総合調整権
現行憲法及び内閣法では、内閣総理大臣は、全て閣議にかけた方針に基づかなければ行政各部を指揮監督できないことになっていますが、今回の草案では、内閣総理大臣が単独で(閣議にかけなくても)、行政各部の指揮監督、総合調整ができると規定したところです。
(2)国防軍の最高指揮権
72 条3 項で、「内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する」と規定しました。内閣総理大臣が国防軍の最高指揮官であることは9 条の2 第1 項にも規定しましたが、内閣総理大臣の職務としてこの条でも再整理したものです。内閣総理大臣は最高指揮官ですから、国防軍を動かす最終的な決定権は、防衛大臣ではなく、内閣総理大臣にあります。また、法律に特別の規定がない場合には、閣議にかけないで国防軍を指揮することができます。
(3)衆議院の解散の決定権
54 条1 項で、「衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する」と規定しました。かつて、解散を決定する閣議において閣僚が反対する場合に、その閣僚を罷免するという事例があったので、解散の決定は、閣議にかけず、内閣総理大臣が単独で決定できるようにしたものです。


 現行憲法は、「行政権は、内閣に属する」(65条)となっている。ところが、自民党憲法草案では、65条で、「行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。」とし、傍線部分がつけ加えられているのである。

 その「特別の定め」とは、第72条。

第七十二条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。
    2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。
    3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。


 果たしてどのようなことから、「専権事項」を考え出したのか。現行の行政権は、「内閣」に属する、つまり閣議で話し合って決定していくという手続きであるが、それが本当に不要なのか。「行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う」という、どのようなことを示しているか判然としない概念で提示されているが、それが一人歩きしたときに、独裁的な政治を生み出すおそれはないだろうか。

 国防軍に関しては後の総合的に論じるつもりである。
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自民党憲法草案(その13)

2013-06-28 12:29:01 | 日記
 さて次は統治機構について考えていこう。
 
 まず第66条。自民党憲法草案は、こうなっている。

第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する。
    
     2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。
     
     3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。


 現行憲法は、以下の通りである。

六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
   ② 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない
   ③ 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。


 ほとんど同じであるが、下線部が異なる。実はこれは重要な違いである。「文民」とは、「軍人でなく、職業軍人の経歴を持たない人」をいう。

 自民党は、「現役の軍人」でなければ、退役軍人ならよいというわけだ。

 振り返ると、森本敏という防衛大臣がいたが、彼は防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入った経歴があり、もと職業軍人であった。純粋な「文民」ではない。この問題については、水嶋朝穂氏(早大教授)の解説に委ねておこう。

http://www.asaho.com/jpn/bkno/2012/0618.html

 すでに職業軍人であった者が大臣に就任している。自民党は、今後もそうした者を防衛大臣に起用する心構えなのだろう。しかし、平和主義をうたった現行憲法からは、疑義がある。
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自民党憲法草案(その12)

2013-06-28 07:00:43 | 日記
 公務員の労働基本権について、自民党はどうしても認めたくないようなのだ。これも、世界の動向とは背馳する。

 第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。


 この第2項は、現行憲法のままである。第2項が新設である。

 この28条が存在していても、公務員の労働基本権は戦後ずっと侵害されてきた。様々なりくつをこねて、公務員労働者の権利は奪われてきたのである。

 そのかわり、人事院(地方自治体では、人事委員会)が設置され、給料等の労働条件についてはその勧告に基づいて決められてきた。

 世界の趨勢は、公務員にも労働基本権が保障されている。


http://www.gyoukaku.go.jp/senmon/dai8/siryou13.pdf

 自民党は、公務員は従順でなければならないと考えているようだ。いや公務員だけではなく、国民が政府(国家)に逆らわないようにしたいと思っているのだ。この憲法草案がその証拠である。

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自民党憲法草案(その10)

2013-06-28 06:44:19 | 日記
 自民党憲法草案は、第25条の3として、「在外国民の保護」を新設した。

 第二十五条の三 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。


 しかし「在外国民保護」は、近代日本の歴史を振り返ると、それを口実に軍隊を派遣し、侵略の発端になったことがしばしばある。1932年の「上海事変」などがその例であるし、さらにさかのぼれば1928年の「山東出兵」もそうではなかったか。

 ボクはこの条項に軍事的な匂いを感じてしまうのである。

 と同時に、国家は自国民を保護するのは当たり前なのであり、あえてこういう条項を掲げる必要はないのである。

 自民党政権は、イラクで日本人ジャーナリストらが現地で「ゲリラ」に拉致されたとき、「自己責任」の大合唱をマスメディアと共に行い、積極的な対応をしなかったし、ひとりの日本人旅行者が拉致されたときも「自己責任」の論理により救出のためのいっさいの行動をとらなかった。

 ボクは昔あるジャーナリストから、海外で何らかの事件に遭遇したときは日本大使館に逃げ込むのではなく、ヨーロッパの国の大使館に逃げ込めといわれたことがある。日本大使館は在留法人保護には積極的ではないことを、ある実例をもとに助言されたのだ。

 そういう自民党がなぜ新設したか。やはり軍事的な意思を感じるのだ。
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