『沖縄タイムス』が有益な情報を流している。海兵隊の沖縄駐留は、日本の自民党政権が求めていた。しかしこの情報は、別に新鮮ではない。自民党が、ひょっとしたら昭和天皇の遺訓を体して(?)、沖縄の米軍基地を維持したがっていたことは、すでに判明していることで、それがオーストラリアの公文書で明確になったということだ。
日本、海兵隊引き留め 1972年豪公文書で判明
11月8日 09時33分
沖縄の本土復帰直後の1972年10月、米国防総省が沖縄を含む海兵隊の太平洋地域からの撤退を検討していたことが、豪外務省の公文書で7日までに明らかになった。米国は当時、泥沼化するベトナム戦争への巨額戦費の支出で財政負担に苦しみ、基地機能の見直しを進めていた。海兵隊撤退論もその一環で検討されたものだったが、日本政府が海兵隊の駐留維持を米側に求めたことから、在沖米軍基地を大幅に縮小する機会は失われ、その後の防衛の役割分担を迫られる契機ともなった。(知念清張)
米国防総省の海兵隊撤退検討案は、米国務省のアジア担当者から同盟国である豪国の駐米大使館に伝えられていた。沖縄国際大の野添文彬講師(国際政治史)が、当時の経緯を記した豪外務省の公文書を現地で発見、分析した。
72年10月9日付の駐米豪大使館から豪外務省への秘密扱いの公電によると、米国務省政治軍事問題局のロバート・マクロム氏(アジア担当)が、国防総省の分析専門家らが海兵隊組織の検討を行ったことを説明。「沖縄やハワイなど、すべての太平洋地域の海兵隊をカリフォルニア州サンディエゴ(キャンプ・ペンデルトン)に統合することが、かなり安上がりで、より効率的」との結論を伝えていた。
73年5月にはマクロム氏はハワイや、ミクロネシア連邦などに適当な施設が見つからないため沖縄の海兵隊を韓国に移転させる構想を説明している。
さらに翌6月には、別の担当者からの「米国政府内で、海兵隊移転についての真剣な検討が続けられている」という報告が打電されていた。
日本国内では7月、日米安全保障条約運用協議会で、防衛庁(当時)の久保卓也防衛局長が「アジアにおける機動戦力の必要性を踏まえると、米国の海兵隊は維持されるべきだ」と主張。
当初、海兵隊の日本への駐留の有効性に疑問を抱いていたシュースミス駐日首席公使は11月、外務官僚との会談を踏まえ、スナイダー米国務次官補に対し「日本側の海兵隊重視は日本に対する交渉上のてこになる」と進言。在沖米軍基地の大幅縮小を訴えていた国務省も日本政府が在沖海兵隊を必要とすることに乗じて日本側の財政支援を引き出し駐留維持を志向するようになる。
「日本政府が障害に」
我部政明琉球大教授(国際政治)の話 軍の動きが公文書で出てくることは極めて少ない。ベトナム戦争が休戦に向かい、アジア全体が緊張緩和に向かう中で在沖海兵隊の撤退が、米国で真剣に議論されていた可能性がある。沖縄の米軍基地の整理縮小に日本政府が大きな障害となってきたことがあらためて分かる。
日本、海兵隊引き留め 1972年豪公文書で判明
11月8日 09時33分
沖縄の本土復帰直後の1972年10月、米国防総省が沖縄を含む海兵隊の太平洋地域からの撤退を検討していたことが、豪外務省の公文書で7日までに明らかになった。米国は当時、泥沼化するベトナム戦争への巨額戦費の支出で財政負担に苦しみ、基地機能の見直しを進めていた。海兵隊撤退論もその一環で検討されたものだったが、日本政府が海兵隊の駐留維持を米側に求めたことから、在沖米軍基地を大幅に縮小する機会は失われ、その後の防衛の役割分担を迫られる契機ともなった。(知念清張)
米国防総省の海兵隊撤退検討案は、米国務省のアジア担当者から同盟国である豪国の駐米大使館に伝えられていた。沖縄国際大の野添文彬講師(国際政治史)が、当時の経緯を記した豪外務省の公文書を現地で発見、分析した。
72年10月9日付の駐米豪大使館から豪外務省への秘密扱いの公電によると、米国務省政治軍事問題局のロバート・マクロム氏(アジア担当)が、国防総省の分析専門家らが海兵隊組織の検討を行ったことを説明。「沖縄やハワイなど、すべての太平洋地域の海兵隊をカリフォルニア州サンディエゴ(キャンプ・ペンデルトン)に統合することが、かなり安上がりで、より効率的」との結論を伝えていた。
73年5月にはマクロム氏はハワイや、ミクロネシア連邦などに適当な施設が見つからないため沖縄の海兵隊を韓国に移転させる構想を説明している。
さらに翌6月には、別の担当者からの「米国政府内で、海兵隊移転についての真剣な検討が続けられている」という報告が打電されていた。
日本国内では7月、日米安全保障条約運用協議会で、防衛庁(当時)の久保卓也防衛局長が「アジアにおける機動戦力の必要性を踏まえると、米国の海兵隊は維持されるべきだ」と主張。
当初、海兵隊の日本への駐留の有効性に疑問を抱いていたシュースミス駐日首席公使は11月、外務官僚との会談を踏まえ、スナイダー米国務次官補に対し「日本側の海兵隊重視は日本に対する交渉上のてこになる」と進言。在沖米軍基地の大幅縮小を訴えていた国務省も日本政府が在沖海兵隊を必要とすることに乗じて日本側の財政支援を引き出し駐留維持を志向するようになる。
「日本政府が障害に」
我部政明琉球大教授(国際政治)の話 軍の動きが公文書で出てくることは極めて少ない。ベトナム戦争が休戦に向かい、アジア全体が緊張緩和に向かう中で在沖海兵隊の撤退が、米国で真剣に議論されていた可能性がある。沖縄の米軍基地の整理縮小に日本政府が大きな障害となってきたことがあらためて分かる。