インターネットでNHKニュースをみたら、なんと反対運動を報じている。NHKにしては珍しいことだ。反対運動が強まったので、無視できなくなったか。
以下は、『信濃毎日新聞』の記事。ほんとに、戦時体制下を想起してしまう。歴史の転換期、平和から戦争へという、そういう転換期。
斜面 11月21日(木)
踊るスパイに心を配れ/防諜(ぼうちょう)は銃後を護(まも)る鉄兜(てつかぶと)/口と財布はしっかり締めよ/皆に言ふなと一人に言ふな―。秘密が漏れることを防ぐ防諜。その活動に参加を要求するスローガンが戦時中、街にあふれた
◆
〈一億が一つ心で防諜団〉と国民総動員を求め〈舌と心に銃後の武装/防諜に国の眼となれ耳となれ〉と密告を促す。「傑作国策標語大全」から引いた標語だ。1941年5月には全国一斉の防諜週間が実施され、防諜と相互監視は生活に浸透していった
◆
この年の3月。国防保安法が制定される。日中開戦以降、国は軍事秘密保護の法制を整えてきた。この法律が仕上げだった。対象の国家秘密は事実上、範囲に限りがなく、漏えいや収集などの行為はもちろん、未遂や陰謀も処罰する。外国に漏えいすれば、最高刑には死刑を科した
◆
纐纈(こうけつ)厚山口大副学長の「防諜政策と民衆」によれば、同法は防諜の普及に利用された。国民をどう喝しつつ、スパイ監視者に仕立てた。地域社会では住民も自ら役割を担い、監視の網をつくった。沖縄戦では、住民が仕立てたスパイ容疑者を軍が処刑した
◆
審議中の特定秘密保護法案をひとごとで済ませられない。いつか、自分や家族や友人が監視対象になり、あるいは密告の当事者になるかもしれない。今また国防が個人より優先されようとしている。防諜の過去は忘れたころに、繰り返す。http://www.shinmai.co.jp/news/20131121/KT131120ETI090004000.php
以下は、『信濃毎日新聞』の記事。ほんとに、戦時体制下を想起してしまう。歴史の転換期、平和から戦争へという、そういう転換期。
斜面 11月21日(木)
踊るスパイに心を配れ/防諜(ぼうちょう)は銃後を護(まも)る鉄兜(てつかぶと)/口と財布はしっかり締めよ/皆に言ふなと一人に言ふな―。秘密が漏れることを防ぐ防諜。その活動に参加を要求するスローガンが戦時中、街にあふれた
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〈一億が一つ心で防諜団〉と国民総動員を求め〈舌と心に銃後の武装/防諜に国の眼となれ耳となれ〉と密告を促す。「傑作国策標語大全」から引いた標語だ。1941年5月には全国一斉の防諜週間が実施され、防諜と相互監視は生活に浸透していった
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この年の3月。国防保安法が制定される。日中開戦以降、国は軍事秘密保護の法制を整えてきた。この法律が仕上げだった。対象の国家秘密は事実上、範囲に限りがなく、漏えいや収集などの行為はもちろん、未遂や陰謀も処罰する。外国に漏えいすれば、最高刑には死刑を科した
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纐纈(こうけつ)厚山口大副学長の「防諜政策と民衆」によれば、同法は防諜の普及に利用された。国民をどう喝しつつ、スパイ監視者に仕立てた。地域社会では住民も自ら役割を担い、監視の網をつくった。沖縄戦では、住民が仕立てたスパイ容疑者を軍が処刑した
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審議中の特定秘密保護法案をひとごとで済ませられない。いつか、自分や家族や友人が監視対象になり、あるいは密告の当事者になるかもしれない。今また国防が個人より優先されようとしている。防諜の過去は忘れたころに、繰り返す。http://www.shinmai.co.jp/news/20131121/KT131120ETI090004000.php
安倍政権を支える自民党、公明党。そして秘密保護法案に賛成する野党。いずれも日本の民主主義の破壊に手を貸す者たちだ。
しかしいくら選挙制度が「悪」であったとは言え、国民の多くはこれらの政党に投票している。つまり国民も、民主主義の破壊に手を貸しているということだ。
さて、その秘密保護法案。この法案は、いずれ牙をむくこと必定である。この法案こそ、葬り去らなければならない。
『中日新聞』社説は、その事例を報告する。
特定秘密保護法案<4> 捜査が暴走し始める 2013年11月21日
普通に生活する町のクリーニング業者が、まさかスパイであるはずがない。でも、米軍の機密情報を入手したとして起訴され、有罪判決を受けるという、信じ難い出来事が過去にあった。
米海軍の横須賀基地(神奈川)に所属する軍艦の乗組員を相手に商売をしていただけだ。クリーニング店の支配人は、営業上の必要から、基地に勤務する軍人を料理店でもてなしたりした。そして、基地に出入りする軍艦の入港予定日や時間などを記したペーパーをもらっていた。
これが米海軍の機密にあたるとされた。「不当な方法で、探知し、または収集した」とし、一九五七年に横浜地裁は、懲役八月執行猶予二年の判決を出したのだ。罪名は日米地位協定に伴う刑事特別法違反である。
安全保障条約に基づく法律で、機密漏えいばかりでなく、探知も陰謀、教唆、扇動も処罰する。最高刑は懲役十年である。陰謀は共謀と同じだ。骨格が今回の法案とそっくりなのだ。もてなしも「不当な方法」と認定された。
特定秘密保護法案は防衛や外交、特定有害活動やテロリズムの防止-の四つの分野を対象にしている。しかも、「その他の活動」や「その他の重要な情報」など、「その他」の言葉が、三十六回も散乱する。いかなる解釈もできるよう、官僚が意図して曖昧に書いているのではないだろうか。
社会の幅広い場面で法律が適用される懸念は大きい。しかも、何が秘密であるかも秘密にされる。必然的に、どこまで処罰の範囲が広がっているのか、国民には全く手掛かりがつかめない。
民間人が秘密に近づく事前行為さえ処罰する。「話し合い」は共謀であり、「呼び掛け」は扇動となる。近代刑法は犯罪の実行を要するのに、その前段階で取り締まることが可能なのだ。
刑事裁判の場合も、秘密は公開されないはずだ。「外形立証」という、秘密指定の理由や手続きなどの審理だけで、「実質的に秘密に値する」と認める手法だ。
被告人は内容を知らないまま罪に問われる。無実の証明は困難になるだろう。「裁判の適正手続きを侵害する」などと、刑事法学者らも反対の声をあげている。
捜査当局は新たな“武器”を得るのに等しく、どんな運用をするかもわからない。歯止めのない法律は、やがて暴走し始める。 (論説委員・桐山桂一)
そして『毎日新聞』は、ニューヨークタイムス記者の意見を載せる。
特定秘密保護法案に言いたい:米国と同じ失敗するな−−ニューヨーク・タイムズ東京支局長、マーティン・ファクラーさん
毎日新聞 2013年11月20日 東京朝刊
◇マーティン・ファクラーさん(47)
秘密の範囲があいまいで官僚の裁量が大きいことや、国民、国会のチェック機能が不十分なところが問題だ。
ある程度の秘密管理は必要だが、米国ではエドワード・スノーデン米中央情報局(CIA)元職員の事件で分かるように過剰な秘密主義の弊害が目立っている。秘密機関がいったん大きな力をつけると、なくすのは大変だ。日本は米国と同じ失敗をすべきではない。
日本政府は、米国などと情報共有するには法案が必要だと言う。自民党議員は米高官からの要請があると言うが、口実に過ぎないのではないか。日本側に「情報を共有するために体制を作ってほしい」と伝えたとされるアーミテージ元国務副長官らは共和党で、オバマ政権とは関係がない。
確かに米軍は兵隊の命に関わるから情報管理の徹底を要求しているだろう。だが日本の官僚が力を得ることは望んでいない。
罰則の最長懲役10年も重い。本当の軍事秘密、国の安全そのものに関わる情報なら厳しくして仕方がない。だが、沖縄密約事件のように日本国民の知るべき情報が隠される恐れがある。
安倍晋三首相らは、米国に頼らず、英国や豪州のように対等な同盟国になることを目指しているのだろう。「情報管理をしっかりすれば相手にされるのだろう」と考えているのかもしれない。【聞き手・青島顕】=随時掲載
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■人物略歴
1966年、米アイオワ州生まれ。慶応大や東京大大学院に留学。2003年、ウォールストリート・ジャーナル記者として来日。09年に現職。
国会議員が、この法案に賛成することは、自らの職責を放棄することにもつながる。
しかしいくら選挙制度が「悪」であったとは言え、国民の多くはこれらの政党に投票している。つまり国民も、民主主義の破壊に手を貸しているということだ。
さて、その秘密保護法案。この法案は、いずれ牙をむくこと必定である。この法案こそ、葬り去らなければならない。
『中日新聞』社説は、その事例を報告する。
特定秘密保護法案<4> 捜査が暴走し始める 2013年11月21日
普通に生活する町のクリーニング業者が、まさかスパイであるはずがない。でも、米軍の機密情報を入手したとして起訴され、有罪判決を受けるという、信じ難い出来事が過去にあった。
米海軍の横須賀基地(神奈川)に所属する軍艦の乗組員を相手に商売をしていただけだ。クリーニング店の支配人は、営業上の必要から、基地に勤務する軍人を料理店でもてなしたりした。そして、基地に出入りする軍艦の入港予定日や時間などを記したペーパーをもらっていた。
これが米海軍の機密にあたるとされた。「不当な方法で、探知し、または収集した」とし、一九五七年に横浜地裁は、懲役八月執行猶予二年の判決を出したのだ。罪名は日米地位協定に伴う刑事特別法違反である。
安全保障条約に基づく法律で、機密漏えいばかりでなく、探知も陰謀、教唆、扇動も処罰する。最高刑は懲役十年である。陰謀は共謀と同じだ。骨格が今回の法案とそっくりなのだ。もてなしも「不当な方法」と認定された。
特定秘密保護法案は防衛や外交、特定有害活動やテロリズムの防止-の四つの分野を対象にしている。しかも、「その他の活動」や「その他の重要な情報」など、「その他」の言葉が、三十六回も散乱する。いかなる解釈もできるよう、官僚が意図して曖昧に書いているのではないだろうか。
社会の幅広い場面で法律が適用される懸念は大きい。しかも、何が秘密であるかも秘密にされる。必然的に、どこまで処罰の範囲が広がっているのか、国民には全く手掛かりがつかめない。
民間人が秘密に近づく事前行為さえ処罰する。「話し合い」は共謀であり、「呼び掛け」は扇動となる。近代刑法は犯罪の実行を要するのに、その前段階で取り締まることが可能なのだ。
刑事裁判の場合も、秘密は公開されないはずだ。「外形立証」という、秘密指定の理由や手続きなどの審理だけで、「実質的に秘密に値する」と認める手法だ。
被告人は内容を知らないまま罪に問われる。無実の証明は困難になるだろう。「裁判の適正手続きを侵害する」などと、刑事法学者らも反対の声をあげている。
捜査当局は新たな“武器”を得るのに等しく、どんな運用をするかもわからない。歯止めのない法律は、やがて暴走し始める。 (論説委員・桐山桂一)
そして『毎日新聞』は、ニューヨークタイムス記者の意見を載せる。
特定秘密保護法案に言いたい:米国と同じ失敗するな−−ニューヨーク・タイムズ東京支局長、マーティン・ファクラーさん
毎日新聞 2013年11月20日 東京朝刊
◇マーティン・ファクラーさん(47)
秘密の範囲があいまいで官僚の裁量が大きいことや、国民、国会のチェック機能が不十分なところが問題だ。
ある程度の秘密管理は必要だが、米国ではエドワード・スノーデン米中央情報局(CIA)元職員の事件で分かるように過剰な秘密主義の弊害が目立っている。秘密機関がいったん大きな力をつけると、なくすのは大変だ。日本は米国と同じ失敗をすべきではない。
日本政府は、米国などと情報共有するには法案が必要だと言う。自民党議員は米高官からの要請があると言うが、口実に過ぎないのではないか。日本側に「情報を共有するために体制を作ってほしい」と伝えたとされるアーミテージ元国務副長官らは共和党で、オバマ政権とは関係がない。
確かに米軍は兵隊の命に関わるから情報管理の徹底を要求しているだろう。だが日本の官僚が力を得ることは望んでいない。
罰則の最長懲役10年も重い。本当の軍事秘密、国の安全そのものに関わる情報なら厳しくして仕方がない。だが、沖縄密約事件のように日本国民の知るべき情報が隠される恐れがある。
安倍晋三首相らは、米国に頼らず、英国や豪州のように対等な同盟国になることを目指しているのだろう。「情報管理をしっかりすれば相手にされるのだろう」と考えているのかもしれない。【聞き手・青島顕】=随時掲載
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■人物略歴
1966年、米アイオワ州生まれ。慶応大や東京大大学院に留学。2003年、ウォールストリート・ジャーナル記者として来日。09年に現職。
国会議員が、この法案に賛成することは、自らの職責を放棄することにもつながる。