浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「一強」という問題とメディア

2014-06-24 07:20:43 | 政治
 今日の『毎日新聞』のネット記事(一部)である。

自民党:相次ぐ舌禍、「1強」の慢心?

毎日新聞 2014年06月24日 東京朝刊

 政府・自民党が、閣僚や同党の東京都議の相次ぐ失言に危機感を強めている。自民党の石破茂幹事長は23日、都議の女性蔑視ヤジ問題を陳謝し、菅義偉官房長官も「不適切な発言だ」と改めて強調。党執行部は先週末からヤジを飛ばした本人に謝罪を迫るなど早期の幕引きを求めてきた。しかし国会でも都議会でも多数を占める「1強」のおごりがゆるみにつながっているとの指摘もあり、引き締めは容易ではなさそうだ。


 そして今日の『中日新聞』社説。以下に紹介するが、その中に「「決められない国会」も問題だが、「決めてはならないことを決めてしまう国会」もまた、問題なのだ。」とある。「決めてはならないことを決めてしまう」国会と、「決められない」国会、この両者を天秤にかけたときに、どちらを尊重すべきか。明らかに、決めてはならないことは決められないようにする国会こそがあるべき姿である。

 今まで、マスメディアが国会を非難するときに多用された「決められない政治」は、「言論の府」としての国会にとって、あるべき姿ではなかったのか。問題があるから決められないのである。マスメディアが「決められない国会」と非難するときの立ち位置は、官僚や自民党からのものであった。

 メディアは無責任である。現在の自民党「一強」は、メディアの報道が作り出したものでもある。『中日(東京)』は「決められない国会」といった主張はしていなかったと記憶するが、『毎日』はしていた。そのほかのメディアもそれを輪唱していた。つまり、メディアは自民党に肩入れしていたのだ。

 自民党が選挙で「圧勝」したらどういう事態が生まれるか、そうした想像力をメディアはもたない。

 細川内閣の時、「政治改革」ということばで小選挙区制が成立したが、小選挙区制がいかなる事態を招くのかは、日本の歴史を振り返ればすぐにわかることだ。しかし、メディアは、小選挙区制導入という「政治改革」が行われなければ日本の政治はダメになると、それはそれは熱心に報道していた。そのなかには、今では考えを改めた山口二郎という政治学者もいた。「一強」は、小選挙区制が産みだしたものだ。

 メディアは、現在の安倍政権の暴走を批判するなら、選挙制度の改正を強く主張すべきだ。民意をできるかぎり国政に反映できる選挙制度はいかなるものかを報道すべきではないか。


通常国会終わる 「言論の府」劣化を憂う

2014年6月24日

 昨年とは様変わりである。衆参ねじれ状態解消後、初めての通常国会が終わった。法案の成立率は上昇したが、審議の形骸化も目立つ。暮らしを最優先に、との国民の期待に応えたとは言えない。

 97・5%。安倍内閣が二十二日に閉会した通常国会に提出した法案の成立率である。成立率が90%を超えたのは、国会がねじれ状態となる前、第一次安倍内閣当時の二〇〇七年以来、七年ぶりだ。

 法案成立率の高さは、一つの目安ではある。しかし、高いからといって、充実した審議が行われたとは限らない。「決められない国会」も問題だが、「決めてはならないことを決めてしまう国会」もまた、問題なのだ。

 議員提出分も含めて成立した法律には、高齢者の負担増となる地域医療・介護総合確保推進法、首長の権限を強める改正地方教育行政法、憲法改正の手続きを定めた改正国民投票法、特定秘密を監視する審査会を衆参両院に置く改正国会法などが含まれる。

 これらは国民の暮らしや国の在り方に関わる重要な法律だ。審議は衆参両院で多数を得た与党ペースで進んだが、国民にその利点や問題点を明らかにした上で、議論を尽くしたと言えるのだろうか。

 非協力的な野党を切り捨て、協力的な勢力は味方に付ける。数の力で持論を通そうとする安倍晋三首相率いる自民党政権の政治手法があらわになってはいまいか。

 極め付きは「集団的自衛権の行使」を、政府の憲法解釈を変更して認めようとしていることだ。

 憲法九条の平和主義を骨抜きにし、戦後日本の「国のかたち」を変えてしまう重要問題であるにもかかわらず、与党内の調整ばかりに力を注ぎ、国会審議をないがしろにするとは何ごとか。

 国会審議形骸化の責任は与党だけにあるわけではない。特に、民主党は野党第一党の責任を果たしているとは言い難い。安全保障など、徹底した党内論議で政策をまとめ上げる気迫がなければ、政権側に足元を見透かされてしまう。

 いわゆる第三極勢力も、日本維新の会は分党を決め、みんなの党は「政治とカネ」の問題で党首が交代した。野党の内紛、弱体化は政権与党を利するだけだ。

 言うまでもなく、国会は国権の最高機関だ。いくら議院内閣制とはいえ、国会が首相官邸の思うがままであってはならない。「言論の府」としての誇りと責任感、民主主義を全うする使命感を、与野党ともに取り戻すべきである。


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