浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

オシムに関わって

2014-06-22 22:02:16 | メディア
 NHKスペシャル「民族共存へのキックオフ~"オシムの国"のW杯~」をみた。サッカーが民族対立を超えるシンボルとなっている姿を知った。スポーツの可能性を示すもので、見て考えさせられた。

 ユーゴスラヴィアという国があった。第二次大戦後、チトーという大統領が、異なる民族や宗教の人々とともに、ひとつの国をつくっていた。

 チトーが亡くなってから、ユーゴスラヴィアは分裂し、内戦を起こし、そして殺しあった。今は、内戦もなくなり、平和な日常が戻っているようだ。しかし、民族や宗教が異なるという、それだけで殺しあったそのことが、憎悪として残されている。もちろん表面にはでてこないかもしれないが、しかし憎悪は確実に存在する。自分の家族が殺されたという事実、この事実は消えないからだ。こういう憎悪が徐々に歴史のなかに消え去っていくためには、相当長い時間がかかる。

 今まで一緒に仲良くコーヒーを飲んでいた人びとが、一方は殺す側に回り、他方は殺される。この理不尽。本来殺しあう必要はまったくなかったはずなのに。
 そこには、民族の違いをことさらに強調して対立をつくり出し殺しあいをさせ、それを政治的に利用した誰かがいるはずだ。

 戦争は、いかなる名前がつけられようとも、どういう理由が掲げられようとも、その本質は殺しあい、破壊し合うことだ。その戦いが終わった後でも、憎悪は残る。

 だからこそ、戦争は、決して、してはならない。「平和のための戦争」という矛盾した言い方があるが、「平和のため」という肯定すべきことばがくっついてはいるが、それであっても戦争は戦争なのだ。

 サッカーというスポーツ、時には浦和レッズによる排外主義的な動きもあるが、ボスニアの例のように、民族間の対立を超える役割も果たすことが出来る。

 ただ、そこにオシムという人物の存在が必要であった。スポーツだけに専念するのではない、知的な思慮深い人物がいた。

 スポーツも、そういう人材を育成すべきだ。勉強させないで、読書をさせないで、ひたすら部活動に専念させる大人たち。彼らの多くは、勉強や読書の楽しさを知らないままに生きていく。

 日本には、オシムのような人は生まれないかも知れない。


 
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『衝口発』

2014-06-22 20:23:15 | その他
 『衝口発』は、江戸時代、藤貞幹という国学者が著したものだ。日本の神代を含めた上代について、研究したものだ。成稿は1781年である。

 これに対して、本居宣長は『鉗狂人』(けんきょうじん)を著して反駁した(1785年)。この「鉗狂人」の意味は、狂人に首かせをかけるという意味である。つまり藤貞幹を「狂人」として、首かせをかけようとしたというわけだ。

 宣長は、激しく憤激したのだろう。

 宣長は、『古事記』の記述をほとんど歴史的事実としてみずからの考えを構築した。「漢意」をすべて除去して、「原日本」(固有の起源を持った日本)を示そうとしたから、藤の主張は許せなかった。

 藤の主張は、スサノオは「辰韓の主」であるとか、「本邦の言語、音訓共に異邦より移り来たる者也。和訓には種々の説あれども、十に八九は上古の韓音韓語、或は西土の音の転ずるもの也」、「歌は韓の古俗なること明かなり」・・・というものである。中国や朝鮮の古代史と比較しながら研究した結果を記したのである。

 常識的に考えて、古代日本は「漢字」にみられるように、中国・朝鮮の大陸文化と切り離すことはできない。近世においても、それが常識的な考えだったのだ。

 しかし宣長は、「漢意」を除去すれば、「原日本」をつかみ出すことができると考えていたから、「原日本」に中国や韓が入り込んでいるということには耐えられず『鉗狂人』を著したのだが、その反駁はきわめて感情的なものであった。

 そもそも、『古事記』そのものが「漢」や「韓」を排除して書かれたものなのだ(といっても、文化後進国日本では、漢字を使わなければならなかった)。『古事記』は8世紀初めに完成したといわれる。663年に白村江の戦いで、唐・新羅の連合軍に敗れた倭は、敗れたがゆえに、余計に意識して倭なるものを立ち上げようとした。倭をやめて国号を「日本」とした。これも、中国からみれば日本は東にあるから「日の本」だというのである。日本列島に住む者にとっては、「日の本」って何?といいたくなる。中国や韓を意識してつくった国号が「日本」なのである。

 「日本」を立ち上げるために、韓や漢を離脱しようとしたのである。その意図をさらに宣長は徹底したといえるだろう。
 
 いづこのいかなる人にかあらむ。近きころ衝口発といふ書をあらはして、みだりに大御国のいにしへをいやしめおとして、かけまくもいともかしこき皇統をさへに、はばかりもなくあらぬすぢに論じ奉れるなど、ひとへに狂人の言也。故に今これを弁じて、名づくることかくの如し

 これがその本の序文である。

 この宣長の言説に対して、上田秋成が反論を加えた。その詳細は省くが、秋成の科学的な指摘に対して、宣長は非理性的に反論した。

 日本は世界の中心であるという日本中心主義は、その後も喧伝され、その結果としての1945年を経て、それは今も生きている。

 こうした排外主義的な言説を歴史的に解き明かしながら、再び狂信的なナショナリズムが席巻しないように、注意しなければならない。


 
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権力と暴力

2014-06-22 15:44:20 | 政治
 政治権力が何らかの政策を推進しようとする、その政策に反対する運動が無視し得ないとき、政治権力は何をするか。権力は必ず不定形の暴力をつかう。それは権力の常套手段であって、戦後の歴史でもしばしばそういう姿が見られた。たとえば、1960年の安保闘争のとき。

 そして暴力を駆使するのは、警察とか軍隊とかではなく、非公式の暴力組織をつかう。右翼暴力集団や宗教組織などである。

 辺野古新基地建設現場の海岸に、反対運動の拠点であるテントがある。ボクもそこにいったことがある。そのテントが荒らされたという。本土のニュースでも報道されたかも知れないが、ボクは知らなかった。

 以下、『沖縄タイムス』の記事。

辺野古の抗議テント荒らされる 展示物など破壊
2014年6月20日 11:46

 【名護】米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沖への新基地建設に反対し、抗議の座り込みを続けるヘリ基地反対協議会のテントが20日午前、何者かに荒らされ、掲示物などが破壊されているのが見つかった。県外の子どもらが送った折り鶴なども引きちぎられ、無残な状況。安次富浩共同代表は「暴力と破壊行為で言論を封鎖しようとする許されない行為。まるで今の社会情勢を反映している」と怒りをあらわにした。

 テントが襲われたのは、2004年の座り込み開始から10年間で初めてという。安次富代表によると、前日はメンバーが午後4時に撤収。20日午前7時50分ごろ、安次富代表がテントに来て看板や傘などが浜に投げ捨てられているのを見つけた。

 テント内に張られた写真や新聞記事、横断幕なども引きちぎられて床や浜に散乱しており、「テント村」の看板は2つに割れていた。

 安次富代表は「ボーリング調査を目前にした嫌がらせだろうが、今後も私たちスタンスは変わらない。テントを片付けて、今日からまた頑張っていく」と語った。20日は座り込み開始から3715日目。

 
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沖縄 辺野古

2014-06-22 07:32:51 | その他
 沖縄の辺野古、皆さんは行ったことがあるだろうか。とても美しい海だ。ジュゴンが生息し、海に入れば熱帯魚が鮮やかな色を見せながら、泳いでいる。その海に、恒久的な米軍基地が建設されようとしている。

 沖縄の意識ある人々は、ずーっと監視活動をしている。今まで、名護市長らとともに、新基地建設を阻止してきた。しかし、安倍政権は、強引に建設を進めようとしている。

 以下のような、情報があった(「琉球朝日放送」)。日米は、さっさと工事を進めてしまおうという魂胆だ。

 日本は、今も米軍は日本のどこでも、基地建設可能である。「日米地位協定」という植民地的協定があるからだ。

 しかし、そう簡単に基地は建設されないだろう。


辺野古への基地建設に向け日米両政府は20日、名護市辺野古キャンプシュワブ沿岸部の、立ち入りを禁止する水域を大幅に拡大することを合意しました。

日米両政府は20日、日米合同委員会を開き、これまで沿岸から50メートルの範囲だった立ち入り禁止水域を最大で2キロまで拡大することで合意しました。立ち入り禁止水域の拡大をめぐっては、埋め立てに反対する市民らが、アメリカ軍の演習ではなく、工事を目的とした拡大は違法ではないかとして法的根拠を質していました。

しかし、20日の日米合同委員会の発表では、この水域を地位協定に基づき、アメリカ軍と沖縄防衛局が共同使用する形で合意することで、工事に伴う水域拡大の妥当性を示す恰好となっています。

政府は7月にも立ち入り禁止水域内でのボーリング調査に着手すると見られていて、埋め立てに向けた手続きが最終段階を迎えています。


http://www.qab.co.jp/news/2014062055094.html
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