浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】大山誠一『天孫降臨の夢』(NHKブックス)

2014-06-20 14:26:10 | 
 最近、日本という国を誇りたいという気持を持つ人が増えてきているようだ。その背景には、経済大国であることを誇った日本が、すでにピークを過ぎて「落ち目」になりつつあるという事実があるのだろう。これからの日本人は人口減などにみられるように、下り坂を生きることになる。

 さてそういう人のなかに、日本の神道に誇りを持とうという者がいるそうだ。神道の起源をさかのぼると、それはアニミズムに行き着くようだ。現在でも、自然崇拝的な要素が、神道にはある。そしてその自然崇拝的な信仰をまとめあげたのが、8世紀に編纂された『古事記』『日本書紀』(『記紀』)となる。

 といっても、この『記紀』はきわめて政治的な意図のもとに編纂されたている。言うまでもなく、「当時の天皇家の日本統治の正当性を神代ににまでさかのぼって筋立てしようとした」(大野晋『日本人の神』、河出文庫)ものである。その意味で、『記紀』は政治的文書ともいえるのである。

 したがって、神野志隆光が指摘するように、「人間一般に対する関心をもたず、というより、人間一般を意識することなく、いわばノーカウントにして成りたつ神話化である。それが『記』『紀』の全体性の質であり、そこで民族文化や民衆社会につながる質―人間の出現―を見ようとすることは不可能である」。

 さて、天皇家が日本を統治することを正当化するために編纂された『記紀』には、天孫降臨の話がある。『古事記』『日本書紀』とはその話に大きな違いがあるが、基本は、地上の葦原中国(あしはらなかつくに)を支配するためにアマテラスの孫であるニニギが天下るということなのだが、ボクは以前からなぜ「孫」なのかが不思議であった。

 この天皇の神話化が図られたのが、持統天皇の頃。なお「日本」という国号も、「天皇」という尊称も、この天武・持統の頃からつかわれ始めたことがわかっている。

 この頃の天皇には、たくさんの妻がいた。天智天皇の娘でのちに天皇となる持統は、天智の弟と婚姻関係になり、草壁皇子を生む。持統の姉も、天武の妻となって大津皇子を生む。また他の妻と、市皇子も生まれる。有能な持統は、自らの子である草壁を皇位につけようとするが早世してしまう。草壁皇子には天智の娘・後に元明天皇となる女性との間に軽皇子(のちの文武天皇)がいた。持統はみずからの孫である軽皇子を皇位に就けようとするのだ。ところが草壁皇子がなくなったとき、軽皇子は7歳。持統はみずから天皇となって、孫の成長を待ったのだ。

 持統は、「天照らす 日女の命」(アマテラス)となって、孫である軽皇子を皇位につけるべく、軽皇子をニニギとして、神話をつくりだしたのである。

 697年持統は文武に譲位する。そして、文武の妻は、藤原不比等の娘・宮子、宮子がのちの聖武天皇を生む。ちなみに聖武天皇の妻は、有名な光明子、この女性も不比等の娘であった。

 これが「天孫降臨」の背景なのである。

 日本神話は、天皇制神話であること、この本質はしっかりとおさえておかなければならないだろう。

 大山誠一のこの本は、持統天皇の企ての背後に、藤原不比等がいること、日本の天皇制(基本的に、天皇が国政審議の場にいない)をつくりだしたのは、不比等であると断じていく。それは、天皇を神格化して、天皇を利用して、藤原氏が政治の実質的な担い手になるための制度であるとする。

 藤原不比等の企てはさておいて、「天孫降臨」の歴史的背景については、なるほどと思った。
 

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議員の品性

2014-06-20 10:14:19 | 社会
 日本の政治家には品性が欠ける人が多い。県や市町村議会の議員も同様だ。議員の姿を見ていて、利益誘導だけに熱心で、市政の問題や市の財政などについて興味関心を持つ人は圧倒的に少ない。議会は行政のチェック機関であるという認識を持たず、行政の一員であるという自覚がある。

 ある集まりで、地元の議員の挨拶を聞いたことがある。「私ども、行政を預かる者として・・・・」という発言に驚いたことがある。

 選挙について、「出たい人より、出したい人を」ということばがあるが、「出たい人」ばかり。議員のような、ああいう人たちと同じ人間だとみられたくないという賢明な認識を多くの人が持っているからか、議員に立候補する人間は、ふつうより自意識と名誉欲が強い人が多く、そのなかに下品な輩も混じる。
 
 東京都議会で起きたのも、なるほど、である。こういう人権意識をもたない人を議員に当選させる選挙民にも責任がある。

 以下は『朝日』記事(一部)

女性都議に「産めないのか」 自民?議員席からヤジ

2014年6月19日05時20分

 「自分が早く結婚すればいい」「産めないのか」。18日の都議会で、妊娠、出産、不妊に悩む女性への支援の必要性を訴えた女性都議に対し、議場からこんなヤジが飛び、所属会派が抗議する騒ぎになった。

 ヤジを受けたのはみんなの塩村文夏氏(35)。塩村氏は涙ながらに質問を続けた。ヤジは自民都議らが座る一角から上がっていた。終了後、みんなの両角穣幹事長が、自民の吉原修幹事長に抗議した。

 吉原幹事長は、発生源が自民かどうかは「わからない」としながらも、「各会派が品位を持って臨むべきだ」と話した。
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電子書籍の怪

2014-06-20 10:04:57 | 
 『朝日新聞』のwebをみていて、興味深い記事を見つけた。電子書籍はせっかく買っても、配信側が撤退したりすると、消えてしまうというのだ。

 この記事(但し一部)

買ったはずの蔵書が消える 電子書籍、企業撤退相次ぎ

2014年1月30日18時24分

 せっかく買い集めた蔵書が消える――。電子書籍の世界で、紙の本ではありえない事態が起こり始めた。電子書籍は買っても「自分の物」にならない契約が多く、企業の撤退などで読めなくなるケースがあるからだ。電子書店は乱立状態で、「撤退は今後も続く」(出版関係者)可能性がある。事業者に説明責任を求める声も強まりそうだ。


 電子書籍は、ボクの場合3冊しか購入していない。hontoで2冊、アマゾンで1冊、Kindleも持っているが、あれはほとんど無料の古典を読むためにつかっている。

 電子書籍での購入は、「アマゾンの電子書籍ストアの規約は「お客様にライセンスが提供されるものであり、販売されるものではありません」と明記」されているというのだ。ということは、電子書籍は本を買うのではなく、読む権利を得るというもののようだ。

 ボクは基本的に本は紙のもので読む、というのも、多くは赤線を引いたり書き込みをするからだ。電子書籍でもそれは可能であるが、本そのものに書き込んだほうが、あとから再読するときに便利なのである。

 この記事を読んで、本はかさばるけれども、やはり紙の本で持っていようと思う。



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