浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

債務の強要

2015-07-07 22:46:32 | 政治
 先日書いた「作戦」は、ギリシャの問題をみればみるほど、確信と化していく。新自由主義施策を貫徹させるための最大の武器は、「金欠」状態、つまり「借金地獄」に追い込むことだ。「借金地獄」に追い込んでいって、そこから徹底的に搾り取ろうという魂胆なのだ。

 国や自治体は、なくなりはしない。そこに住む人々がいれば、人々は生きるためにカネを稼がなければならない、だから働く、そして労働力を維持するためには消費しなければならない、安心のために保険にも入る・・・・カネはなくならないのだ。そこに住む人々は、税金を納め続ける。だから長期的にカネを搾り取ることができるのである。

 なるほど、カネを搾り取り続けることができる方法として、「借金地獄」は素晴らしいアイデアだ。「借金」を返せ、は、一見とても正しい要求のように見える。そして「借金」を返す際には、利子をつける。貸した方は必ず元が取れる、何と言っても借りたのは公的な機関であるから、取り損なうことはないだろう。

 「借金」を返さなければならないから、事業は縮小、公務員の賃金は下げよう、公務員を増やさないで、業務を民間に委託しよう(この場合は「民間企業」である。民間企業に新たな儲け先が誕生するというわけだ)、非正規を雇おう・・・・・最近の自治体の施策はこれで一貫する。

 政府は、自治体が「借金地獄」になるように、地方交付税を減らす、「合併特例債」のように餌をまいて(事業のほとんどは国が面倒をみるからという甘言で)借金をさせる・・・・。

 今日昼間記したギリシャの例でも、「軍用品を買いなさいよ、ちゃんと融資するから・・」と、独仏はギリシャに軍用品を売り込む。ギリシャは「借金」が増える。

 その方法を実践した人のインタビューがある。「エコノミック・ヒットマン」だった人の話だ。

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-8d4f.html

 ボクたちは、財政がとても厳しいから・・・という国や自治体の説明に頷いてはならない。なぜなら、ボクたちが「借金」したわけではないのだから。

 もうボクたちは、物わかりがよい国民や市民であり続ける必要はない。
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ギリシャの反撃

2015-07-07 10:26:20 | 国際
 メディアは、ギリシャを非難する。「借りたカネを返さないなんて、なんてヒドイ国だ」と。そしてギリシャは公務員天国だ・・・とか。だが、ボクたちは、メディアに同調して、ギリシャを非難することはやめよう。

 以前ジュビリー2000という運動があった。先進国が発展途上国にカネを貸し、発展途上国の国富を奪い、さらに途上国に生きる人々を貧しさに追い込んでいる現状を憂え、先進国は債務を放棄すべきだというものであった。

 だから今度もボクらは、同じような主張をしたい。

 ギリシャは、債務を返すために頑張っていたのだ。しかし債務を返すために様々な条件をつけられた。その条件とは、新自由主義的施策の採用である。ここにも「金欠」状態に追い込んで、新自由主義を押しつける政策が行われているのだ。

 それは、付加価値税の大幅引上げ、年金給付の削減、低所得者層への給付引下げなどだ。まさに格差拡大政策である。

 ジュビリー運動を行っていた北沢洋子氏はこう記している。


 4月9日、ギリシャは、IMFに4億6,200万ユーロを返済した。これはギリシャ政府にとっては、血の出るような思いであった。

 英国の「ジュビリー債務キャンペーン(JDC)」によると、IMFは、2010年以降、今年4月までに、ギリシャへの融資で、25億ユーロの利益を上げたと言っている。そして今後ギリシャが返済を続けるならば、その利益は43億ユーロに上るだろう。

 IMFのギリシャへの融資は3.6%の利子を課している。この額は、IMFのギリシャ融資に対するコストをはるかに上回っている。現在は0.9%の利子で十分だ。もし利子がこの0.9%であったなら、2010年以来、ギリシャは25億ユーロも余計に支払ったことになる。

 2010年から2014年までの間、債務危機に見舞われた国々からIMFが得た利益は84億ユーロに上る。その4分の1は、ギリシャの債務返済からであった。IMF はこの利益金を準備金に入れている。IMFの準備金は、現在、190億ユーロに上っている。この準備金は返済不能になった国に対する損失に充てることになっている。ギリシャのIMFに対する債務総額は240億ユーロである。

 JDCのTim Jonesは、「IMFのギリシャへの融資は、第一に、無制限にギリシャに融資をした市中銀行を救済するためだった。そればかりでなく、IMFはギリシャからより多くのお金を奪ったのであった。この高利貸し的利子は、ギリシャの人々にしわ寄せされている。


 そして、メディアが報じるギリシャの状況については、下記にきちんとした統計で井上氏が論じている。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20150706-00047298/

 ギリシャ政府の反撃を、ボクは支持する。
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ペシャワール会

2015-07-07 09:45:36 | 国際
 アフガニスタンの情報は今ほとんどない。しかしペシャワール会の中村哲氏をはじめ日本人スタッフが常駐していることから、アフガンのことが少しはわかる。昨日『ペシャワール会報』124号が届いた。ボクは、その会員だ。カネを送り、会報を受けとるだけの関係だが、自分ではアフガンに対する支援を行っているつもりである。

 さて、本号には、中村氏による「現地事業報告」が載せられている。その最初の部分を掲載する。

 2014年12月、破壊と大混乱を遺して欧米軍が去っていきました。あの軍事介入が何だったのか、「対テロ戦争」とは何であったのか、心穏やかにはなれません。「テロとの戦い」と言いさえすれば何でも正当化されるような狂気が、この十数年の世界を支配してきました。実際アフガニスタンでは、異を唱える者がテロリストの烙印を押され、容赦なく抹殺されていきました。その多くが国際テロ組織とは無関係な、弱い立場の人々でした。無差別爆撃による膨大な犠牲は、「二次災害」と呼ばれました。
 
 イスラム教徒に対する偏見が意図的に煽られ、人々の間に多くの敵対がつくり出されました。病的な残虐行為や拷問は日常でした。だが、欧米軍兵士もまた犠牲者でした。その多くは貧しい階層の出身で、社会的事情で志願し、半ば借り出された人々でした。少しでも良心を持つ者の一部は、自殺に追い込まれました。
 これが現地でみた「テロとの戦い」でした。細々とでも保たれてきた人間の英知とモラルは、これによって一挙に後退しました。欧米では予言者を揶揄することが流行り、それが表現の自由であるとされました。世界全体が、露わな暴力主義と排外主義の毒に冒されていくように思われました。利権を主張して弱者を圧するのが当然のように言われ始めたのです。

 このような世界をためらいつつ歩んできた日本もまた、良心の誇りを捨て、人間の気品を失い、同様に愚かな時流に乗ろうとしているように見えます。先は見えています。アフガニスタンを破壊した同盟者にならぬことを願うばかりです。


 アメリカをはじめ欧米は軍事行動を勝手に展開し、破壊と殺戮を繰り返し、そして去っていく。それぞれの国家としては、軍事行動などいろいろ「反省」や「教訓」を引き出すだろうが、しかし現地の生活を破壊し、人々を殺し、多くの苦しみを与えたことについては反省なんかしない。彼らにとって、現地の人々の生活なんか眼中にはないのだ。あたかも、白人のアメリカ人が黒人やインディアンを「人間」の範疇に入れなかったように。

 そういう輩と一緒になって、日本は同じような行動をとろうとしている。何という浅はかさだ。

 ペシャワール会は、アフガニスタンの大いなる自然と闘って、そこに住む人々の生活や健康をどうしたら保障できるのかを考え、そして自ら行動して、その答えを出している。かの欧米軍とは、正反対の行動である。

 こういう行動こそ、平和主義の憲法を持つ日本がなすべきことなのだ。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


 前文に、あるように、私たち日本国民は崇高な理想と目的を達成することを誓っているのである。ペシャワール会が行っていることこそ、日本国憲法の実践なのだ。

 ペシャワール会は、荒涼とした荒れ地に水を引き、そこを緑に覆われた大地に変えようとしている。それこそが人間のすべきことだ。欧米軍が破壊と殺戮に費やしたカネの一部でも、アフガニスタンの大地を緑に覆われた肥沃地にかえることはできるはずだ。

 欧米は、いつの時代も、人間とその生活を破壊して恥じない。日本人は、そうした欧米を真似してはならない。想起しよう、真似をした結果が、1945年の荒れ果てた国土だったことを。
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