浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

シンポジウム

2015-07-13 21:35:57 | その他
 今日は静岡で「日中口述シンポジウム」に参加した。朝9時半から夕方16時半まで。

 前半は、「日中口述歴史文化研究会」李素氏の発表、その後は中国吉林省檔案館の所員による関東軍憲兵隊の史料の紹介が行われた。前者については、いわゆるオーラスヒストリーに関するものであったが、あまり緻密な内容ではなかった。後者では、南京虐殺事件、731部隊など関東軍憲兵隊の史料のいくつかが提示されたが、それらは一旦焼却処分にされ焼け残ったものが地中から発見されたものである。

 午後は、「満洲移民」に体験者4名の「口述」がおこなわれた。うち三人の方は、静岡県の満蒙開拓青少年義勇軍の池谷中隊、神田中隊、匂坂中隊に属していた方々で、その「口述」は1945年8月9日以後の体験であった。

 そして太田尚樹氏(東海大学名誉教授)による、「岸信介と「満洲国」」に関する話があった。この内容がまったく驚異的な内容で、といってもテーマに沿ったまとまった内容ではなく、以下のような話がなされた。

 ・歴史の見方には正解はなく、「こういうふうに私は考えている」というだけのもの。
 ・「満洲」については、侵略という見方と、そこに「英知があった」という見方とがある。私は加害者と被害者の話しを聞くが、その比率は1対1である。
 ・現在日中と日韓は仲がよくない。「東京裁判史観」というものがあるが、日本は何度も謝罪している、こういう姿を見て、すでに戦火を交えたドイツやフランスは仲良くなって、日本を冷笑している。
 ・岸信介ら長州の人は日本の近代をリードしてきただけあって、若い頃から「国づくり」を考えている。
 ・「満洲国」の建国は、清朝の復活(復辟)の運動に日本が乗ってしまったものである。
 ・戦後の日本復興も、「満洲国」の産業立国、都市計画があって可能になったもので、新幹線もそうだ。
 ・「満洲国」は人類の宝であり、中国の宝である。


 開いた口がふさがらないような内容であった。帰宅してこの名前を検索してみると、歴史学者だという。まったく知らなかった。

 なぜこういう人物が参加したのだろうと疑問に思った。何でも中国側の李氏が呼んだのだそうだ。よくわからない人選である。

 この人、『朝日新聞』の5月20日付で、「「満州国」岸元首相の原点」という一面全部をつかった紙面に載っている。朝日記者と一緒に「満州」で取材したというその記事が会場で配布された。「70年目の首相」というシリーズの一環の記事のようだ。その内容は、『朝日』の現在の立場を表すような、記者自身の筆の所には批判的な内容はなく、全体的には岸やその孫の安倍らの主張を紹介するものになっている。取材した相手は太田尚樹、長谷川三千子、引用したのは岸、安倍、北岡伸一の文など。そしてコメントは李、王建学からのものであるが、批判的なコメントは王建学だけ。

 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする