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政府方針に振り回される「基礎研究」

2019-11-25 12:19:20 | 徒然

先日、iPS細胞の研究をされている京大の山中教授が、日本記者クラブで「政府からの支援の打ち切り」の記者会見を行った。
huffpost:京大のiPS細胞備蓄事業、国が年10億円の支援打ち切りか

確かに、年間10億円という金額は少ない金額ではない。
しかし、これまで官製事業として行ってきた事業の多くは、年間10億円以上の赤字を計上し続け、破綻したケースなどは数々ある。
最近話題になった「クールジャパン機構」の累積赤字などは、これまで国がiPS細胞の為に支援してきた90億円を遥かに上回る、179億円と言われている。
BusinessJournal:クールジャパン機構、累積赤字179億円、成果乏しく存在意義薄く…米国企業にも投資

これほどの赤字を抱えているにもかかわらず、クールジャパン機構への投資はまだまだ続いているようなのだ。
クールジャパン機構が官民組織だからと言って、国から支援を受けていない訳ではない。
むしろ、民間よりも国が支援している額のほうが、多いのでは?と、感じている生活者も多いのではないだろうか?

iPS細胞への支援とクールジャパン機構が米国企業などを含む様々な事業に投資することと、天秤にかけるのはおかしいかもしれないが、やはり「iPS細胞への支援に比重を置くのが、当然なのでは?」と、感じる生活者のほうが多いのではないだろうか?
何故なら、クールジャパン機構が行っている事業そのものが、生活者にとって分かりにくいだけではなく、私たちの生活や暮らしに影響を与える要素が無いからだ。
それに比べ、iPS細胞の研究は「再生医療」という分野だけではなく、「創薬」などへの期待も大きい研究だ。
3年ほど前だろうか?「加齢黄斑変性」の患者さんに、iPS細胞によってつくられた網膜色素の移植が行われ、その後も大阪大学医学部では今年、iPS細胞から作製した角膜移植を実施し、「夢の細胞移植」から「現実的な細胞移植」へと変わろうとしている。

そしてiPS細胞に代表される「再生医療技術」は、世界中でしのぎを削るような「基礎研究」であり「応用研究」でもある。
正に「生き馬の目を抜く」ような、熾烈な研究競争が繰り広げられている、と言っても過言ではないだろう。
そのような中で、山中先生の「iPS細胞」は抜きんでている研究であり、日本の医科大学を中心に連携をしながら「実用化」に向けての研究が進められている、という状況なのだ。
何より重要なことは「iPS細胞による再生医療や創薬」についての世界的標準(=世界のスタンダードとなる特許などを取得)を獲得することによって、もたらされる利益(あまりお金のことは言いたくはないが、この点が今後の研究で一番重要視される点でもある)は、莫大なものになる。
それは、協力をした製薬会社よりも国にもたらされる利益が多い、ということにもなるはずだ。

それを目先のことばかりを追って、「戦略的な事業」としての「再生医療とiPS細胞」という視点がないのが、とても残念で仕方ない。