日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

DeepSeekショックから、新たなショックになるのか?‐AIの行方‐

2025-01-29 22:25:04 | ビジネス

週明けから、中国のAI企業であるDeepSeekが話題になっている。
Huffpost:Deep Seek(ディープシーク)とは?世界に激震を与えているAIは何がすごいのか? 

昨日の夕方見た日経新聞のWebサイトには、「DeepSeek」の文字が並んでいた。
そして週明けから、米国の半導体メーカーNDIVIAの株価が大幅に下がったのは、ご存じの通りだ。
NDIVIAの株価が大幅に下がった理由が、このDeepSeekが発表したAIに関係している、と言われている。
これまでAI向けの半導体として、注目され株価が上昇し続けていたNDIVIAの株価が、このDeepSeekによっていきなり暴落した、というだけでも話題になる中国発のAIソフト、ということらしい。

「らしい」としたのは、私自身がChatGTP等を積極的に使っていない為、どれほどすごいモノなのか?ということを十分理解しているとは、言えない為だ。
ただ一つ分かっているのは、AIのソフト開発に係る費用が数十億といわれているのに対して、560万ドルという安価でつくられた、という点だろう。
もちろん、これにはそれなりの理由があるのでは?と、思っていたら「やはり」という記事が、朝日新聞のWeb版にあった。
朝日新聞:中国企業ディープシーク、オープンAIのデータを無断使用か 米報道 

AIの開発には、様々なデータの蓄積が必要となる。
そのデータ収集に、膨大な費用が掛かるのだろう、ということは想像できる。
単なる言語的なデータだけではなく、多角的視点で推測できるようなデータが、必要だからだ。
そう考えると、安価に開発された=どこからかデータを持ってきたのでは?と、考えるのが自然だろう。
そして「やはり」という感じで、米国側はデータの無断使用を疑い始めている。

確かに話題となり、AIにおける世界的シェアを獲得できそうな勢いのDeepSeekだが、話題になって早々にこのような問題が疑われる、ということは決して良いことではない。
まして現在の米国大統領は、「自国ファースト」を謳うトランプ氏だ。
トランプ氏がどれほどAIに対して、理解を持ち国の成長戦略として位置づけているのかは不明だが、「自国益が損なわれた」として、強硬策に出る可能性もあるのでは?

なにより気になるのは、日本の企業と政府の動きだ。
「デジタル庁」には、全く期待していないが、AIという分野においては様々な視点を持ち、日本らしい戦略を立てなくては、今後の日本経済にも大きな影響を及ぼすだろう。
さて、この騒動の行方はどうなるのだろう?


フジテレビの問題は、オールドメディアという問題ではない

2025-01-24 21:37:36 | ビジネス

昨日、フジテレビの副会長である遠藤龍之介氏が、記者会見を行った。
NHK:【会見ノーカット】フジ 遠藤副会長「企業風土の改善が必要」 

NHKのニュースサイトのリンクを紹介したのは、遠藤副会長の会見がノーカットで見られるからだ。
FNNプライム(フジテレビ)をはじめとする民放のニュースサイト動画は見られるのだが、このような記者会見はノーカットで見なくては意味がないからだ(NHKを信用している訳ではない)。

今回の発端となったのは、フジテレビに所属している女性アナウンサーが、中居正広さんに対して接待要員として上司にあたるフジテレビ幹部から連れ出され、性的なことを強要された、という点だった。
中居さんからすれば、「いつものこと」のような感覚だったのかもしれないし、女性アナウンサーを連れ出したフジテレビ幹部も、同様の感覚だったのだろう。
それが「仕事の一環」だと思って疑わなかった、ということのように思える。
事実、遠藤副会長は会見で本音ともとれる発言をしている。
週刊女性PRIME:フジ副会長・遠藤龍之介氏「ついつい本音が・・・」中居正広騒動に言及も、視聴者が聞き逃さない決定的な“言い間違い”

とすれば、遠藤副会長が会見で話した通り「企業風土」として、そのような企業文化があり、その根底にあるのは「女性蔑視」や「女性に対する支配欲」のようなモノがある男性が企業幹部にいたし、そのような男性が出世してきた、ということになるだろう。
それが「企業文化」となり、企業内で当たり前となってきた、という経緯が垣間見れる。

何となくだが、このような企業文化があり、それが「企業風土」となっているのは、いわゆるキー局と呼ばれる在京テレビ局なのでは?という、気がしている。
その理由の一つは、スポンサーとなる大企業が、キー局となる東京に集中しているからだ。
トヨタのように、本社は地方にあっても広報や広告を担当する部署は、東京に事務所を構えている企業は、少なくない。
当然、芸能事務所等も大手と呼ばれる事務所は、東京にある。
「東京にあるから問題になった」というのではなく、問題となる舞台がいくつもある、ということなのだ。
当然、大企業をスポンサーとして契約できる為、番組制作でもそれなりの経費をかけるコトができる(と言っても、主な制作そのものは、安い制作費で下請けにやらせている可能性は、十分にあるのだが)。

だからと言って、テレビ局=オールドメディアだからダメだ、と言い切れないような気がしている。
そう感じる理由は、Tverのような見逃し配信サイトで、地方局制作の番組にはキー局制作のような、「嫌味感」をあまり感じないからだ。
MCが出演者をディスるようなこともないし、少ない予算の中で視聴者に楽しんでもらえる番組を、模索しながらつくっている感がある。

そう考えると、オールドメディアの一つである「テレビ局」がダメになったのではなく、かつてもてはやされ、バブルの頃と変わらない感覚を持っている在京テレビ局がダメになっている、ということなのだと思う。
その一つが、フジテレビであった、ということに過ぎないのではないだろうか?


脱脂粉乳とアパレル

2025-01-22 11:28:17 | ビジネス

今朝、FMを聞いていたら、「こんなビジネスが起きているのか?」という話があった。
その内容は、脱脂粉乳を繊維化し、アパレルに使う、というものだった。
日本農業新聞:在庫問題“肌”で感じて 鈴木大樹さんが起業 脱脂粉乳Tシャツ考案、酪農応援 

実は今この脱脂粉乳そのものは、食品として注目をされている。
その注目される分野というのは、「シニア向け粉ミルク」という市場だ。
森永乳業:大人のための粉ミルク「ミルク生活」 

脱脂粉乳というだけあり、余分な脂肪は取り除かれ、カルシュウムや鉄分、複数のビタミン等シニア層に不足しがちな栄養素を加えている。
脱脂粉乳の利点は、保存という面だろう。
紙パックの牛乳は美味しいのだが、開封してから飲み切るまでの消費期限は短い。
その為、シニア層にとっては飲み切れない、ということになりやすい。
それに比べ、脱脂粉乳であれば保存性も高い、というメリットがある。
牛乳に含まれない栄養素も含まれていることも、大きなメリットかもしれない。

とはいえ、国内生産される脱脂粉乳が余剰状態になり、廃棄処分されているとすれば、フードロスという視点でもよいこととは言えないだろう。
食糧事情の悪い国に対しての支援物資としての提供と言っても、難しい点があるかもしれない。
もう一つは、脱脂粉乳そのものが、水や熱闘では溶けにくい、という扱いにくい点もあるだろう。
第二次世界大戦後から始まった学校給食だが、開始後20年位は牛乳の代わりに提供されていたのが、脱脂粉乳であり、当時の脱脂粉乳はおせいじにも美味しいとは言い難かった、と言われている(私の世代は、脱脂粉乳から牛乳に切り替わった直後の世代だろう)。
それが、脱脂粉乳のイメージを悪くさせている、ということも影響しているかもしれない。
通販のサイトを見ていても、脱脂粉乳を購入される方のレビューの多くは「パンを作る時に使っている」というコメントが目立つ。

その新たな使い道として、脱脂粉乳の中に含まれるたんぱく質に注目し、作った繊維ということのようだ。
とはいえ、牛乳のたんぱく質なので、乳アレルギーの方は着用できないようだが、綿と合わせることで絹のような肌触りと綿の特性を併せ持った素材となったようだ。
現在はTシャツの展開のようだが、乳アレルギーの人で着ることができる、という視点を持てば、Tシャツのように素肌に着るものではなく、アウターに使う、ということも考えられるのでは?
例えば、繊維から布にする過程には、「わた」にしているのでは?
「わた」の状態であれば、真綿のアウターという考え方もできるかもしれない。
ダウン特有の匂いに、アレルギーに似た反応を示す人もいらっしゃるので、ダウンに代わる素材となるかもしれない。
なにより「エコ繊維」として、海外のデザイナーから注目される可能性もある。

そのような視点で見た時、「スキムミルク(=脱脂粉乳)繊維」は、今後注目されていくのでは?と期待したい。


「トランプ詣で」をした,GAFA達

2025-01-21 20:13:33 | ビジネス

米国時間の今日、ワシントンで大統領になるための宣誓式をし、就任演説を行ったトランプ大統領。
その就任式に、錚々たる米国のIT企業のトップたちが、顔を見せた。
毎日新聞:米大統領就任式、IT大手トップが勢ぞろい「トランプ詣で鮮明に」 

IT大手=GAFAと呼ばれる「Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon」の4社のことを指す、ということはご存じだろう。
もちろん、大統領選の頃からトランプ支持を表明していた、Xのイーロン・マスク氏もこのメンバーに加わっている。
GAFAのメンバーではないが、マイクロソフトの創始者であるビル・ゲイツも昨年暮れに、トランプ氏との面会を希望していた。
Reuters:ビル・ゲイツ氏「面会を希望」、トランプ氏が明らかに 私邸で27日 

ビル・ゲイツ氏の意向を汲んだかのように、就任式前にマイクロソフト社の現CEOが、イーロン・マスク氏同席で、トランプ氏と会っている。
Boolmberg:マイクロソフトCEO、トランプ氏とAIを巡り協議ーマスク氏も同席 

前回のトランプ政権の時、これらの企業とトランプ氏との関係は、良好であったとは言い難い。
むしろ、トランプ氏の度重なる虚偽の発言や大統領選を混乱させるような行為に対して、相当な反発をしていた。
それが、今回のすり寄り状況は、ある種の気味悪さのようなモノすら感じてしまう。

では、何故彼らがトランプ氏にすり寄ってきたのか?
その一つは、中国発の「TikTok」の規制なのでは?
以前から、ユーザー情報(=個人情報)を中国が抜き取る、という問題が以前から指摘されてきた。
その為、米国だけではなくEU諸国でもTikTokの使用を禁止する、という動きがあったのだ。
むしろ、GAFAにとってのTikTokの問題は、中国が開発したSNSでありFacebookやInstagram、X等よりも若い世代のユーザー数は多いと、言われている点のような気がする。

ITの世界では、実際の商品が動く訳ではない。
サービスを提供することで、収益に結びつけているはずだ。
とすれば、ユーザーが自分たちのサービスよりも多いTikTokを排除し、今後IT界の覇権を得るために動いてくれそうな、トランプ氏にすり寄るのは、当然のことかもしれない。
なんといってもマイクロソフトやGAFAは、TikTokが登場する前まではネットサービスの覇者だったからだ。

それは、今後ネットビジネスで求められる「公平性・虚偽の有無や人権の監視」等よりも、「自国優先」というトランプ氏の考えに自分たちの利益を優先したように見えてしまう。
そのことに、GAFAの彼らは気づいているのだろうか?


フジテレビがメディアの再編成を引き起こすのか?

2025-01-20 11:50:55 | ビジネス

先週末、静止画像の記者会見を開いた、フジテレビ。
記者会見の内容は、ご存じの通り「有名タレント他に対する、女性あっせん(過激な表現だが、あえてさせていただく)が、日常的に行われていたのか?」ということに対する、フジテレビ側の釈明会見だった。
しかし、テレビ局でありながら「静止画像で音声も放送させない」という、摩訶不思議な対応をしたため、大炎上になっている。
常日頃、テレビ局の容赦ない報道に対して、保身の極致と受け止められるような、記者会見を開けば「自分たちが日ごろやっていることは、棚に上げ、自分たちにとって触れられたくない問題だと都合よくこのようなことをするんだ」という、社会的不信感を強めるだけに終わってしまったからだ。
容赦ない報道というのは、芸能人のゴシップに限らず、事件・事故で亡くなられたご遺族に対しても、容赦なくインタビューをしたり、語質を取り、あたかも「メディアが正義」と言わんばかりの態度で映像を流しているからだ。

中居正広氏の問題が、雑誌に取り上げられた時、思い浮かんだのは「#Me Too運動」だった。
覚えていらっしゃる方も多いと思うのだが、米国の映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインが、映画出演等の口利きをする代わりに性的関係を求め、時には性暴力をはたらくコトで女性を屈服させてきた、という事件が明るみに出たことで始まった、「性暴力に対して声を上げよう」という運動だ。
米国だけではなく、「力で相手を屈服させることで、自尊心や征服欲を満たす」ような思考の輩は、どこにでもいる、ということを感じたのだ
問題なのは、そのような卑劣な行為にテレビ局の幹部と言われる人が、積極的に関与し隠ぺいし続け、発覚したとたん「メディアは正義」というそれまでの態度を一変させ、より問題を小さく見せようとしたことだ。
このような態度を示せば、「社会からの信頼は失墜する」ことは、わかりきっていたはずだ。
にもかかわらず、そうせざる得なかった背景や理由が、あるとすればそれが一番の問題なのだと思う。

当然のことながら、フジテレビの番組視聴率は大きく下がっていくだろう。
局全体の視聴率が下がれば、スポンサー企業はテレビCMを出す魅力は無くなる。
先週末の時点で、トヨタ自動車をはじめとする、大企業のいくつかがテレビCMの差し止めを発表している。
週明けの今日になれば、ますますテレビCMを見合わせる大企業は増えていくだろう。
番組スポンサーとなっている場合、テレビ局の不祥事なので違約金のようなモノを請求される場合もあるかもしれないし、番組制作費そのものが無くなってしまう可能性もある。
番組制作そのものは、フジテレビが外注している場合が多いので、外注している(中小規模の)制作企業が、制作を断る可能性もある。
春始まりのドラマ等の撮影が始まっていれば、出演している俳優さん達にも関係してくる問題でもある。

そう考えると、「テレビ局崩壊のはじまり」をフジテレビが起こした、ともいえるのかもしれない。
それが「テレビ局の再編」となるのか、「テレビ局の崩壊」で終わってしまうのか?
フジテレビを除く民放各社の企業姿勢によって、変わってくるような気がしている。





EV車と寒波

2025-01-11 21:20:20 | ビジネス

年末から今月にかけ、日本列島に寒波襲来している。
昨日の朝は、名古屋でも薄っすらと雪が積もり、午前中は雪が舞うような寒さだった。
考えてみれば、40年位前はこのような寒さや降雪が当たり前だったのかもしれないのだが、あまりにも昔のことなので記憶が定かではない。
逆に、このような寒さと降雪で思い出されるのは、昨年、米国北部を襲った大寒波だ。
特に問題となったのは、テスラが販売をしていたEV車とその高速充電ステーションが機能しなかった、という点だ。
Forbes: 「EVの航続距離」は、氷点下の気温で大幅に減少 その原因と対策 

Forbesの記事は、昨年の1月の記事で、丁度昨年北米を襲った大寒波で露呈したEV車のウィークポイントを指摘した内容となっている。
なぜ、このような記事を思い出したのか?というと、Youtube等で頻繁に登場するEV車の広告を見ながら、昨日の寒さを実感していたからだ。

以前から、指摘されていた事だが、EV車と高速充電ステーションは、寒さに弱いと言われてきた。
寒さに弱いというよりも、その性能が大きく損なわれるといった方が良いのかもしれない。
高速充電ステーションの問題は、EV車に充電する為の接続部分が凍結してしまう、という点が大きな問題のようだが、電気が通っているので急いで凍結部分をとかそうとしても水や温水をかける訳にはいかない。
それ以外の方法で、凍結部分を安全にとかす方法を考えなければならない。
とはいえ、性能そのものが大きく損なわれているので、充電時間もかかってしまう、ということになる。

ではEV車はどうなのか?
おそらくいつも通りの走りは、期待できないだろう。
とすれば、EV車の魅力そのものが、減ってしまう。
排気ガスを出さない等の環境性能としての魅力はあっても、クルマ本来の「走る=移動する」という目的が失われてしまうことの方が、問題となるの明白だろう。

排ガス等の問題を解決しつつ、環境性の高いクルマという点はもちろん、様々な自然環境の中で、クルマ本来の性能を失わないコト、という点が重要になってきている、ということになる。
それを示したのが、昨年北米に襲った大寒波だとすると、今年頻繁にYoutube等に流れるEV車は、そのような問題点を解決しているのだろうか?
クルマを必要としている地域の多くは、公共交通機関が十分に提供されていない地域が多い。
1時間に1本のバスを待つことができる人は、どれほどいるのか?
というよりも、クルマで移動する生活に慣れてしまった生活者に、公共交通機関を使うことの心理的ハードルは高くなりすぎているのでは?

個人で所有するEV車の高速充電システムであれば、車庫の中に設置すれば解決することもできるだろうし、家屋に隣接するようにつくられたビルトインガレージであれば、ガレージそのものを暖めることもできるかもしれない。
ガソリンスタンドのような高速充電ステーションの場合は、場所や天候に左右されないようなステーションつくりが、必要となるだろう。
今までのガソリンスタンドの延長線のような発想では、これから先様々な自然環境の変化に対応できない、ということでもある。

昨年、北米を襲った大寒波。
今年の日本の例年にない大雪等、クルマ本来の目的を十分果たす為のEV車の性能とはなにか?ということを、改めて問題提起をされたような気がする。
果たして、日本の自動車メーカーはどのような「こたえ」を出すのだろうか?



USスチールを巡る様々な思惑

2025-01-07 11:09:52 | ビジネス

昨夜遅く飛び込んできた「日本製鉄が、米国政府を提訴」というニュース。
Reuters:日本製鉄が提訴、米大統領のUSスチール買収禁止命令無効などを求めて 

日本の企業が、米国政府を提訴するということ自体、これまでになかったと思う。
もちろん、日本製鉄が提訴したい理由は分かる。
そもそも民間企業の買収案件に、政府が口出しをしたのだ。
これでは、グローバル経済の中でますます盛んになるであろう、国家間を越えた企業の買収ができない、ということになってしまう。
民間企業の経済活動に政府が口を出す、ということ自体、米国のような「自由経済」を目指してきた国としては、珍しということだけではなく、米国政府の思惑そのものが、わかりにくいからだ。

このことに対して、石破総理が「買収禁止命令」の理由となった「安全保障」について、米国政府に説明を求める、という状況にもなってきている。
TBS News DIGITAL:石破総理、アメリカ側に「懸念の払拭に向けた対応を強く求めたい」日本製鉄によるUSスチール買収計画をめぐり 

「自民一強」と言われていた故安倍総理の時でも、米国政府に対して不満を述べるということが無かったような気がする。
弱小与党だから、このような強気の発言をすることで「強い石破政権」というPRもあったのかもしれないが、異例な印象を受けたのは、私だけではないと思う。

とすると、「日本製鉄とUSスチールの買収案件」は、企業間の買収という問題ではなくなりつつある、ということのようにも受け止められる。
その背景は何か?と考えると、やはり米国内における鉄鋼業界と米国政界との結びつきのようなモノも見えてくる、と言われている。
日経新聞:日本製鉄「労組・競合と結託」主張 米大統領ら複数提訴

以前、拙ブログでこの話題を取り上げた時、USスチールの買収を巡っては、日本製鉄が手を上げる前、USスチール側が複数の企業に打診をしていたが、その買収額等の条件により話が進展しなかった。
そこに手を挙げたのが、日本の企業である日本製鉄だったのだ。
その為、米国の製鉄労働組合が、猛烈な反対表明をし、その反対に同調したのが米国政府であった、というのがこれまでの経過だ。
米国政府というよりも、昨年行われた米国大統領選において、労働組合との関係は重視したいという、本音があったのでは?という、想像ができる。

もう一つは、USスチールが買収の話を持ち掛けた1社・クリーブランド・クリフスが、USスチールの倒産を待って、買いたたきたいという思惑もあるのでは?ということも言われているという。
クリーブランド・クリフスが倒産後のUSスチールを買取る条件として、米国政府がUSスチールの従業員の雇用等についての条件を付け、米国政府お墨付きの底値買いたたき、買収ができる、ということだ。
米国社会では、「USスチールという米国の企業と従業員を救った、クリーブランド・クリフス」、というイメージつくりにもなるだろう。

もう一つは、日本製鉄という日本企業を中国企業と混同している、という米国政府の残念さも指摘されている。
というのも、米国政府側が「安全保障の問題」とした理由に、「米国企業が他国の企業に買収されることで、米国経済に対する懸念」の「他国の企業」の部分が「中国の企業」と、記されていたという指摘もされているからだ。
日本製鉄とUSスチールにとって、迷惑千万な話だが、この言葉が示すことは「日本企業の世界的求心力の低下」ともいえるだろうし、「米国政府の自国企業以外で興味がある(=経済的警戒すべき国)のは、中国である」とも考えられる。

今回の日本製鉄(とUSスチール)が、米国政府を提訴したことで、様々な米国内の思惑が見えてきたような気がする。


USスチールの買収阻止を考える

2025-01-04 21:08:44 | ビジネス

今朝、驚くようなニュースがあった。
これまで買収話を進めてきた、USスチールと日本製鉄との話し合いに、いきなり現米国大統領・バイデン氏が、買収阻止を発表したからだ。
これまでも、USスチールと日本製鉄の間で進められてきた買収問題。
様々な、横やりが入ってきた。
一つは、SUスチール側の労働組合の買収反対だったように思う。
それ以外にも、米国を代表する製鉄企業を日本の企業が買収する、ということで社会的な批判もあったと思う。

元々、トランプ氏等はこの買収について、反対をしてきたので、トランプ政権になる前に決着したいという思いが、USスチールにも新日鉄にもあったのでは?と、想像しているのだが、まるで最後の置き土産のように、バイデン大統領が、買収阻止を表明したことは驚きだった。
バイデン氏は、既に大統領の座から降りることが決まっているし、ここで政治的判断をしても、トランプ氏が引き継ぐとは限らないからだ。
もちろん、バイデン氏が買収阻止を発表すれば、トランプ氏の手柄ではなくバイデン氏の実績となることには違いないが、当事者たちは「政治的なものを感じる」として、反発をしているようだ。
Reuters:日鉄とUSスチール「法的権利守る措置講じる」、米政府の買収阻止を受け 

まずこの「買収」について、整理をする必要があると思う。
BBCNews:バイデン米大統領、日本製鉄のUSスチール買収計画を阻止。安全保障上のリスクがあると

BBC Newsに詳しい経過があるので、そちらを読んでいただくとわかるのだが、USスチールは日本製鉄と買収の話をする前から、買収をしてくれる(あるいは資金援助をしてくれる)相手を探していた。
しかし、なかなか相手が見つからいところに、日本製鉄が手を挙げた、というのが、今回の買収話のスタートだ。

確かに、バイデン氏が言うように「安全保障にかかわる問題」と言われれば、そうなのかもしれない。
何故なら、USスチールは米国を代表する製鉄会社だったからだ。
それだけではなく、製鉄業そのものが米国における、主要産業だった。
当然、雇用者数のも多いはずだし、労働者側も「米国を代表する企業で働く」という、誇りもあっただろう。
「日本企業の傘下に入るなんて、都落ち以上の屈辱」と、感じたかもしれない。

とはいえ、「企業として存続し続ける」ということの方が、重要なはずだ。
時代の潮流に合わなくなったわけではないにせよ、設備投資等で多額の費用が必要となっていたUSスチールとしては、他国の同業分野の企業に買収してもらい、企業として立て直しを図りたかった、ということだろう。
それを政治利用されては、買収話を進めてきた2社にとって、迷惑なコトだろう。
だからこそ「法的措置を講じる」とまで、言っているのだ。

何となくだが、かつての基幹産業であっても一度傾き始めたら、自国内でのM&Aだけでは経営の継続そのものが、難しくなりつつある、というのが今の時代なのだと思う。
とすれば、これから先、様々な業界でこのような買収話が出てくるかもしれない、という気がしている。


「衛星直接通信」、日本の企業に勝算はあるか?

2025-01-02 20:55:27 | ビジネス

明けましておめでとうございます。
昨年は、足首骨折という大けがをし、長期にわたるお休みをしました。
今年は、そのようなことが無いように、と思っています。

さて、今朝FMを聞いていたら、今年話題になりそうな話があった。
TFM「ワンモーニング・TREND NET」:“空が見えれば、携帯電話がどこでも繋がる”衛星直接通信 

そもそも「衛星直接通信」という言葉そのものを聞いたことが無かったので、「一体なんのこと???」と思ってしまった。
ここでキーワードとなるのが「Starlink」で、全国各地に設置されている通信基地局と同様のモノを、自分で持ち運ぶことができる、というアンテナのようなモノであり、通信システムのことのようだ。
KDDI au:SPACE X・空が見えれば、どこでもつながる 

SPACE Xという名前を見て、気づかれた方も多いと思うのだが、イーロン・マスク氏がかかわる宇宙開発事業の会社が、このStarlinkに関わっているのだ。
目的としては、海上や山中、あるいは基地局が災害等で使えなくなった被災地等のような場所での活用が、考えられているようだ。
このSPACElinkは、「持ち運び基地局アンテナ」という位置付けとなるからだ。
そのSPACElinkを使った本格的実証実験をauが、今年から始める様になる、という。

ここでNTTdocomoは?と、思われた方も多いのではないだろうか?
おそらくNTTdocomoではなく、KDDIauが先に動くことができたのは、その企業の成り立ちに関係しているのでは?と、想像している。
若い方はご存じないと思うのだが、auの前に付く「KDDI」の前身企業の一つが「国際電信電話株式会社(=KDD)」だったからだ。
NTTが、日本国内の電話通信網を担当し、国際電話については国際電信電話が企業の事業として行っていたのだ。
その為、国際電話を利用するためには、国際電信電話=KDDを利用するしか方法が無かったのだ。
逆に言えば、海外との通信システムに関してはKDDがそのネットワークを持っていた、ということになる。
すなわち、NTTよりも国際通信という点では、KDDIの方が得意な分野でありknow-howも持っている、ということになる。

とはいえ、今回auが利用するSPACElinkは、米国のSPACE Xの関連企業だ。
日本の企業がこのような事業分野へ参入するには、新たに設立するか現在宇宙開発に積極的な国内企業の協力を得るしか方法は無い。
上述したように、災害の多い日本では海上通信というよりも、災害時の通信手段としての有効性が期待されているはずだ。
とすれば、NTTがこのような事業に参入することは十分考えられるし、その状況を指をくわえて待っているようなSoftbankの孫さんではないだろう。

「プラチナバンド」と呼ばれる周波数の獲得だけではなく、宇宙衛星+衛星から発せられる電波をキャッチする機器とシステムという新たな通信システムのビジネス競争が始まるのが、今年かもしれない。


トヨタグループvsホンダ・日産連合?‐自動車業界の再編成か‐

2024-12-18 11:35:38 | ビジネス

今朝、朝のFM番組を聴いていたら、日経新聞のスクープとして、ホンダ・日産が持ち株会社を設立、その後三菱自動車も加わる、というニュースを知った。
日経新聞:ホンダ・日産が経営統合へ 持ち株会社設立、三菱自動車の合流視野 

ホンダと日産が経営統合の協議をしている、という話もビックリしたが、何よりも驚いたのは日経新聞の企業名の並び順序だった。
これまでなら「日産・ホンダ」という並び順だったのでは?
それが「ホンダ・日産」という並びになっている、ということはこの話は日産ではなく、ホンダ側が主導的、あるいはホンダ側優位で進められてきた話なのでは?という、想像がつく。

では、何故ホンダ側が日産にこのような「経営統合」や「持ち株会社」の話を持ち掛けたのか?
一つは、トヨタ一強のように言われている日本の自動車業界に、風穴を開けたい、という気持ちがホンダにも日産にもあったのでは?ということだ。
確かにここ10年ほどの間で、トヨタはダイハツをはじめいすゞなどの自動車メーカーを傘下に収めることに成功している。
結果ダイハツは今でも軽自動車の分野の市場を確保しているが、いすゞは自家用車事業から撤退し、いわゆる大型商用車に完全にシフトしている。
トヨタはこれまで自社の不得意で市場的優位性のない分野の企業を傘下に収めることで、一大トヨタグループをつくることに成功してきた、という経緯がある。

当然、ホンダや日産はそのことに対して危機感を覚えていたはずだ。
日産の場合、経営不振に陥った三菱自動車を傘下に収めたことで、三菱自動車は息を吹き替えしつつある気がする。
ただ、解せないのはホンダが何故日産との経営統合を進めるのか?という点だ。

若い方はご存じないかもしれないが、1960年代~1970年代、日産は「技術の日産」というキャッチコピーで、企業の強みを訴えるCMを出していた。
それに対して、ホンダは創業者・本田宗一郎の精神を引き継ぎ「チャレンジする企業」というスタンスだった。
トヨタのような「ファミリーカーのトヨタ」という、位置づけではなかった、という点では共通している。
とすれば、ホンダ側も日産側も「これからの自動車、モビリティーとは?」という発想を、多角的求めているということなのかもしれない。
だからと言って、企業の独自性を失いたくないからこそ、持ち株会社をつくることで資金面での強化を図ることを考えたのか?ということも考えられる。

とすれば気になるのは、軽自動車のスズキとバイクのヤマハ発動機の動きだ。
この2社は、実はトヨタ自動車が一定数の株を保有している。
それだけではなく、ヤマハ発動機についてはトヨタのスポーツカーのエンジンを供給してきた、という実績を持っている(トヨタ自動車の知人は、全力で否定していたが)。
トヨタ側は様々な面で経営というよりも技術面での協力を得たい為に、株式の保有率を上げようとしているようだが、いずれも断っている、と言われている。
バイクという分野に限って言えば、スズキとヤマハ発動機は、ホンダのライバル企業ということになる(この点については、小・中学と浜松で過ごしてきたので、実感として持っている)。

ただ、トヨタが自社の弱い事業分野の企業を次々と傘下としてきたことが、果たして日本の自動車産業にとってプラスだったのか?という、疑問もある。
そして今回のように、ホンダと日産の経営統合によって、日本の自動車産業の再編がされることが、日本の自動車産業にとってプラスばかりではないような気がするのだ。
もちろん「自動車産業・オールジャパン」として、来年発足する米国のトランプ政権等に対抗することや、新興企業となる中国やインドなどの自動車メーカーなどに立ち向かう為には、必要なことなのかもしれない。
ただ、それぞれの自動車メーカーのオリジナリティや創業の精神だけは忘れずにいて欲しい、と願うのだ。