インフルエンザ治療薬「アビガン」の、「新型コロナウイルス」感染者に対する治療薬としての期待から、海外80か国近く要請が来ている、というニュースがあった。
産経新聞:「アビガン」80ヵ国近くから要請 茂木外相「ものすごく関心高い」
昨日エントリの中でも「アビガン」については、富士フイルムの子会社である富士フイルム富山化学という会社が製造している、と書いた。
一部では富士フイルムという、新興製薬会社の薬だから承認が遅れているのでは?という、指摘があるようだ。
実際には、「富士フイルム富山化学」という社名になったのは最近のことで、1936年創業の「富山化学」という企業だ。
富士フイルム富山化学:沿革・歴史
「富士フイルム富山化学」という名前は、新興企業のように見えても実績十分な企業である、ということぐらい許認可をする厚労省が知らないはずはない(本当に、知らないのだとしたら厚労省の勉強不足ということになる)。
とすれば、他の理由があるのでは?という気がしてきたのだ。
何故なら、国内承認をしていない薬を海外からの要請という理由だけで、80ヵ国超の国へ提供するということ自体、辻褄が合わないような話だからだ。
とすると、他の理由があるのでは?という気がしたのだ。
それは「イレッサ訴訟」だ。
既に国と製薬企業の責任は予見できなかった、という内容で結審しているはずだが、この「イレッサ」という肺がんの薬を、世界初承認をしたのが日本だったのだ。
その後、投与した患者さんの中には、効果が無いばかりか、間質性肺炎という副作用を起こして亡くなる患者さんが、数多く出たことで、承認取り消しを行うことになった、というがん治療薬でもある。
厚労省が承認を急いだ理由の一つといわれているのが、肺がん患者の急増で、これまでの抗がん剤で効果が上がらない患者さんに投与し、各段に良い治療成績が治験で認められたからだ。
しかし、承認後上述した通り副作用の間質性肺炎で亡くなる患者さんが、数多く出たことでいったん承認取り消しをしている。
その後、肺がんの中でも特定のタイプの患者さんに対して、高い効果があることが分かり再承認される、という経過をたどった薬なのだ。
そのような「苦い経験」がある為、厚労省が「副作用による訴訟」が怖く、なかなか承認に至らないのでは?と、言う気がしている。
もちろん、素人考えなので厚労省の治験継続の理由は、違う可能性は高い。
ただ、厚労省が言い続けている「海外とのドラッグラグ(海外承認済みの薬品を、国内で承認するための時間がかかり過ぎる)は、短くなってきている」という言葉とは裏腹のような、「アビガン」に対する対応のような気がするのだ。
日本のように「副作用が起きてはいけない」という考えが強い国では、国内で開発された薬の承認は、慎重にならざる得ないかもしれない。
「イレッサ訴訟」の時には、製薬企業(アストラゼネカ)と国が訴訟の対象となり、アストラゼネカ側は開発費などの回収が厳しかったという話もあったようだ。
とはいうものの、素人考えとして既に「インフルエンザ治療薬」として承認されているのであれば、「羹に懲りてなますを吹く」ような慎重さは、必要ないような気がするのだが・・・。