日経ビジネスに、センセーショナルな見出しがあった。
記事の内容は、有料会員のみしか読めないのだが、その見出しだけを見ても「やはりな~」という、気がするものだった。
日経ビジネス:「このままでは自動車会社は下請けに」ノーベル賞・吉野氏が警告
実際の記事を読む必要があるとは思うのだが、「やはりな~」と私が感じたのはあるシーンだった。
昨年の秋ごろ、トヨタ自動車とSoftbankが事業提携をする、というニュースがあった。
東洋経済:トヨタ自動車がソフトバンクを選んだ「必然」
この報道関係者向けの発表の時、トヨタ自動車の社長・豊田章男さんがSoftbankの孫さんの方へ行き、握手を交わしたのだった。
これまでなら、Softbankの孫さんがトヨタ自動車の豊田章男さんの方に近づき、握手をしていたのでは?と思える場面だった。
何故なら、孫さんは過去に何度もトヨタ自動車に出向いていて、熱心に「これからのモビリティー」について話をしていたが、トヨタ自動車の豊田章男さん側が断っている、という「噂話」があったからだ。
だからこそ、些細な場面のように思えるこの豊田章男さんと孫さんの動きが、今回の事業提携の主導権がどちらにあるのか?ということを、如実に表す場面だったように思う。
そのような些細な場面から推察できるのは、自動車の未来は通信システムの一つに組み込まれるのでは?ということだ。
実現に向け自動車メーカー各社だけではなくIT関連会社も開発に向け、しのぎを削っている「自動運転」などは、一番分かりやすい例だろう。
グーグルがこれから先どれほど積極的に、関わってくるのか?という点では、疑問なところがあるが今や「自動運転」の為に必要なものは「自動車」そのものではなく、ITやIOTにAIという情報産業が中心である、ということになるのでは?というのが、吉野先生の指摘のような気がする。
とすれば、今の日本の「物づくり」の中心である自動車産業自身が、IT企業の傘下に入らずに生き残ることを考えなくてはならない。
何より、このような「カタチの無いものづくり」そのものが、日本の企業は苦手である、という点を忘れてはいけないだろう。
思い出すのは、Appleが「iPod」や「iPhone」を出したときの、日本のメーカー側の「当社でもこのような技術は持っている」という発言だ。
それらの発言をした企業が、今やPCやスマートフォンの製造を縮小させることになっているのは、PCやスマートフォンをつくり、売ろうとしていたからだ。
ユーザーは、そのような製品を求めているのではなく、自分たちの暮らしの快適さを求めていることに気づかなかった、という「生活者の思考」を見誤ったという、日本の製造業の失敗を二度と繰り返さない為に、自動車産業そのものがドラスティックな思考の転換をする必要がある、ということなのだと思う。