「ヨーゼフ・ベルンハルト『鳥たちの家』」 ギャラリー・エフ

ギャラリー・エフ台東区雷門2-19-18
「ヨーゼフ・ベルンハルト『鳥たちの家』」
7/6-16



主に鳥をモチーフにして生と死との境界線を問う作品を発表している(画廊HPより引用。)という、ヨーゼフ・ベルンハルト(1960~)の個展です。趣き深い木造土蔵の空間が、鳥たちの一種の終焉の場とも化していました。これは不気味です。

まず目に飛び込んできたのは、土蔵の壁にペタペタと張られた鳥の拓本でした。赤などの鮮やかな色に象られた鳥の死骸が、拓本と言う形にて無数に「保存」されています。羽を拡げて空を飛ぶかのような姿をとる鳥は、もはやこの拓本の中でしか生きることを許されていないのでしょうか。儚いものです。

はしごをあがった二階では、鳥の生態を記録したという映像作品が展示されていました。籠の中に入れられた一羽の鳥が、時に羽をばたつかせ、またカリカリと音をたてながら右へ左へと動く様子が捉えられています。それをしばらく眺めていると、何やらこの土蔵の展示室が牢獄のようにも思えてきました。鳥はこの作品に見るカゴと映像作品自体、さらにはそれを囲む今回の土蔵、つまりは三重に閉じ込められているのかもしれません。慌てふためいたように動く鳥の動きを見ると、こちらまでが不思議な焦燥感に駆られてしまいます。

囲炉裏風のスペースにかかる、一枚の鳥の羽が印象に残りました。ベルンハルトは動物の死を極めてストレートに捉える作業を試みているようです。作品集には、直視するのも憚れるような動物の死骸の写真がいくつも掲載されていました。

画廊ではこの展覧会を「木造土蔵作りの静謐な空間を鳥たちの楽園に見立ててインスタレーションを展開する。」と紹介していましたが、これのどこを「楽園」と見れば良いのでしょう。生々しいまでの死を強く印象付けられる展示でした。

今月16日までの開催です。(7/7)
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