「プラハ国立美術館展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム渋谷区道玄坂2-24-1
「プラハ国立美術館展 - ルーベンスとブリューゲルの時代 - 」
6/9-7/22



プラハ国立美術館の館蔵品にて、ルーベンス一派とブリューゲル・ファミリーを中心とした17世紀フランドル絵画を概観します。Bunkamuraで開催中の「プラハ国立美術館展」です。



サブタイトルに「ルーベンスとブリューゲルの時代」とありますが、あえて言えばその「時代」に重きの置かれた展示内容だと思います。この展覧会にはとりたてて優れた、例えば名高いブリューゲル(父)の傑作があるわけではなく、その模作を手がけたブリューゲル(子)や、主にルーベンスに学んで描かれたフランドル派の作品が展示されているに過ぎません。(ルーベンスの作品はいくつか展示されています。)ただしそれが、当時、神聖ローマ帝国の中心であったプラハにおけるフランドル絵画の受容史を見ることに繋がっているようです。出品作全64点のうち約10点ほどが複製(広義の工房作)であるのも、あえて評価するのであれば、数多くの画家たちがフランドル絵画を学んでいた事実を知るのに相応しいと言えるのではないでしょうか。



ブリューゲル(子)や、少々苦手意識もあるルーベンスの作品に惹かれる要素は少ないのですが、この展覧会で印象に残ったのは、個人的に好きなテニールス(子)の作品を3点ほど見られたことと、第5章「花と静物」における殆どグロテスクとも言えるような静物寓意画を楽しめたことでした。残念ながらテニールスに関しては、身近な上野の西洋美術館の「聖アントニウスの誘惑」に及ぶ優品はありませんでしたが、後者は半ばこの展覧会で最も個性的なセクションだと思うほど充実しています。特に、クエリヌス(子)とブールの「水の寓意」における、その多産を表現した毒々しい描写は衝撃的です。魚が不気味に溢れかえり、後方には愛欲に満ちた人間たちが楽園を駆けています。またチラシ表紙を飾ったブリューゲル(子、帰属)の「磁器の花瓶に生けた花」も、実際に見るとその描写はどこかいびつで、深い黒からふつふつと湧き上がるような花束にむせ返ってしまうような生々しさすら感じました。チラシとは大分、趣が異なります。

出品作の半数が日本初公開とのことです。どちらかというと、この近辺の絵画史に詳しい方により理解の深まる展覧会だと思います。

7月22日までの開催です。(6/23)
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )