「宮永愛子 - 岸にあがった花火」展 すみだリバーサイドホール・ギャラリー

すみだリバーサイドホール・ギャラリー(墨田区吾妻橋1-23-20 墨田区役所1階)
「宮永愛子 - 岸にあがった花火」展
6/16-7/15



ナフタリンを用いたアートを手がける現代美術家、宮永愛子の個展です。会場のすぐそばを流れる隅田川もテーマに、時とともに移ろうものの儚さや美しさを表現します。

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まずはそのナフタリンによるオブジェ、「貴族的なピエロ」が美感に優れています。アクリルケースの箱へ大切におさめられていたのは、ナフタリンによって象られた靴や時計、それにネクタイなどの装身具でした。それはどれも制作当初は確かな形を持っていましたが、展示期間中に進むナフタリンの気化によって徐々に崩れ、今では殆どその残骸を見るにとどまっています。ちなみにこれらは、実際に使われていたものから型をとって作られたものです。展示の最後には、形をとどめることなく消滅してしまうのかもしれません。まさに時の移ろいを感じさせる作品です。



隅田川と関連のある作品では、展覧会のタイトルにもなった「岸にあがった花火」が充実していました。これは、二つの白いパネルの間に無数の糸を直線的に張り巡らせたインスタレーションで、その糸に吾妻橋のたもとの川底より採取した塩の結晶が織り込まれています。糸はパネル内にて二層の面を作り出し、一方をまるで波のように力強くせり上げていました。また、その糸の下を身を屈めて進むことも可能です。さながら水中をもぐっているような感覚が味わえます。

古びた陶器の器の並ぶ「そらみみみそら」は、視覚ではなく聴覚に訴えるインスタレーションです。この界隈の住民が持ち寄ったという茶碗へしばらく耳を傾けていると、どこからともかくパチパチという音が聞こえてきました。これは宮永が陶器へかけた水色の釉薬の割れる音だということですが、当然ながら音の出るタイミングはとてもランダムで、回数も決して多くはありません。ここはじっくり構えて楽しみたいところです。(私は偶然にも聞くことが出来ましたが、実際には30分ほど待っても音が出ない場合もあるそうです。)

合わせて展示されているルオーとの関係云々については説得力に欠けていましたが、崩れ去りつつあるものに見る美意識は、まさにタイトルにある「花火」に通じるものがあります。「アサヒ・アート・フェスティバル2007」の一環の展覧会です。隣接のアサヒビール本社ロビーにも数点の展示があるので、見逃されないようにご注意下さい。

入場は無料です。今月15日まで開催されています。(7/7)

*「ばら色の踊り子」(2004):展示されている作品とは異なります。
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