都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「画廊からの発言 - 新世代への視点2009」 東京現代美術画廊会議
東京現代美術画廊会議 事務局:ギャラリー山口(中央区京橋3-5-3 京栄ビル1F・B1F)
「画廊からの発言 - 新世代への視点2009」
7/27-8/8
主に京橋近辺の画廊が集まり、各オーナーの推薦する若手作家を紹介します。京橋、銀座付近の計11軒(*)の画廊で開催中の「画廊からの発言 - 新世代への視点2009」へ行ってきました。
まずは参加画廊です。
藍画廊・GALERIE SOL・ギャラリーQ・ギャラリー現・ギャラリー58・ギャラリーなつか・gallery 21yo-j・ギャラリー山口・ギャラリイK・ギャルリー東京ユマニテ・コバヤシ画廊・なびす画廊
*銀座一丁目より自由が丘に移転した「gallery 21yo-j」も参加しています。それを含めると全部で12軒になります。
貸しメインで活動されているところも多いからか、決して全てがメジャーというわけではありませんが、日頃から地道に若手作家に注目して個展を開催している画廊が多いのも特徴の一つかもしれません。以下、私が廻った順に感想を挙げてみました。
鎌田あや展@ギャルリー東京ユマニテ(中央区京橋2-8-18 昭和ビルB1F)*土曜3時以降の観覧は画廊へ電話連絡が必要。
古着、鏡、それに椅子などの家具を用いてのインスタレーション。暗室のフロアには無造作に女性用の洋服が積まれ、その隙間に映像作品の流れるモニターがディスプレイされている。DM画像はつけまつげを使った鏡のオブジェ。全て作家自身の身近な素材を使ったとのことだが、会場に流れる奇妙な音楽の他、プロジェクターによって壁面全体に映し出されたキラキラ輝く映像など、女性性を全面に押し出した展示はインパクトがあった。
古池潤也展@ギャラリー山口(中央区京橋3-5-3 京栄ビル1F)
野菜のモチーフで描いた文字絵。1m四方のパネルにはネギやカブなどの色鮮やかな野菜が比較的リアルに表現され、それが点となり線となって「正」や「今」などの漢字を象る。近寄ると抽象画のようにも見えたが、展示室をぐるりと一周、取り囲む文字絵群は、何らかのメッセージ性のある散文詩のようにも感じた。
加藤崇展@ギャラリイK(中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F)
作家自身の身体を張ったパフォーマンスを映像や写真で紹介する。顔をテープでぐるぐる巻きにしたり、口に植木鉢の如く植物をつめたりといった謎めいた行為に、プラスとマイナスの意味を含めて思わず少々首を傾げてしまう。コップから七色の液体を順に吐き出し、それを最後飲み干す映像「虹」は、まるで先日ヒロミヨシイで見たクリードの作品のようだった。
柳井信乃展@ギャラリーQ(中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F)
日本画の素材とビーズなどを組み合わせて、動物などのモチーフをコラージュ風に描く。ともかく印象深いのは、画面の上に登場するカラフルなビーズによって出来た蟻の装飾。数えきれないほどの小さな蟻のオブジェが、描かれた動物の足などの上を線をぬうように行進している。虫の苦手な方にはおすすめ出来ないかもしれない。
杉浦藍展@ギャラリー現(中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F)
板張りのフロアに唐突に立つ巨大オブジェ。壁面には何やら山のような形をした銀色のオブジェがへばりつき、中央にはカラフルなブラインドによってデコレーションされた物体が鎮座する。中を覗き込むとジオラマ的景色が広がっていたのが印象深かった。
市川裕司展@コバヤシ画廊(中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1)
4m×4mにも及ぶ透明アクリル板を折り、その表面に胡粉などを用いてダイナミックな波模様を描きだす。アクリル板の内部には灰色の布も挟まれ、それが絵具の色とも共鳴して、複層的な景色を生み出していた。絵画を超えた作品全体の造形には驚かされるものの、個人的には奥の小部屋の小品の方が馴染む。
深井聡一郎展@ギャラリーなつか(中央区銀座5-8-17 ギンザプラザ58 8F)
スカートを広げ、貴婦人の如く立つ陶の人形が十数点ほど並ぶ。その取り澄ました様子はまるで西洋人形のようだが、一部、人形のスカートの部分をそのまま拡大したような山のオブジェ、またはそこから手だけが伸びた作品など、シュールな味わいもまた独特のものがあった。なおなつかでは本企画に合わせての小品展を開催中。参加画廊の出品作家のドローイングなどの手頃な作品(価格も数千円から。)が数十点ほど展示されていた。
森哲弥展@GALERIE SOL(中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F)
横10センチ、縦4~5センチほどの木片を積み重ね、高さ3メートル近くはある少年と馬の彫刻を制作する。その他、同じく木片による等身大の人物像なども展示されていた。馬に関連した小品の平面も合わせて紹介。
佐藤裕一郎展@ギャラリー58(中央区銀座4-4-13 琉映ビル4F)
展示室の両サイドに、曲線を描いて連なる計18メートルにも及ぶ日本画を並べる。斜めに走る白、そして藍色から青へと変化するグラデーションは神秘的な様相を醸し出す。ちょうど展示室の中央、両サイドと前面とに向かい合う形で作品の前に立った時、宇宙空間の中に漂うかのような気持ちにさせられた。
菊池絵子展@藍画廊(中央区銀座1-5-2 西勢ビル2F)
ホワイトキューブに鉛筆のみで描かれたドローイングが15、6点。全て壁に直接ピンで留めてある。モチーフはコンセントやサンダル、それに凧などの日常のものだが、余白を大きくとり、全て同縮尺にて、例えば脈絡もない靴とミラーボールなどを絶妙な距離感を置いて同時に描いている様子がとても面白かった。個人的に今回見た一連の展示では一番印象に深い。今後も追っかけたい作家だ。
釘町一恵展@なびす画廊(中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F)
色鮮やかな色彩感によって表された熱帯を連想させる土地の景色。地中から魂とも炎とも呼ぶべき何かが噴き出している。決して具象に忠実ではなく、例えば人の気配などを追求したという作品は、いささか捉え難いが、何か訴えてくるものは感じられた。
統一したテーマがあるわけではないので、全体として何かが提示されるわけではありませんが、主に70年代後半から80年代前半生まれの比較的若い世代の、またこのような比較的規模の小さい画廊で活躍されている作家の『今』を知るには最適な企画と言えるかもしれません。
なお画廊の地図も掲載されたちらしの情報はギャラリーなつか(オーナーインタビュー)、また展示風景はギャラリーQのサイトが便利です。エリアも京橋から銀座6丁目までと限定的なので、ゆっくり歩いて廻っても1時間半もあれば十分に見られるのではないでしょうか。
8日の土曜(最終日は17時まで)までの開催です。また公式冊子が300円で販売されていましたが、一部の画廊では無料で配布していました。
「画廊からの発言 - 新世代への視点2009」
7/27-8/8
主に京橋近辺の画廊が集まり、各オーナーの推薦する若手作家を紹介します。京橋、銀座付近の計11軒(*)の画廊で開催中の「画廊からの発言 - 新世代への視点2009」へ行ってきました。
まずは参加画廊です。
藍画廊・GALERIE SOL・ギャラリーQ・ギャラリー現・ギャラリー58・ギャラリーなつか・gallery 21yo-j・ギャラリー山口・ギャラリイK・ギャルリー東京ユマニテ・コバヤシ画廊・なびす画廊
*銀座一丁目より自由が丘に移転した「gallery 21yo-j」も参加しています。それを含めると全部で12軒になります。
貸しメインで活動されているところも多いからか、決して全てがメジャーというわけではありませんが、日頃から地道に若手作家に注目して個展を開催している画廊が多いのも特徴の一つかもしれません。以下、私が廻った順に感想を挙げてみました。
鎌田あや展@ギャルリー東京ユマニテ(中央区京橋2-8-18 昭和ビルB1F)*土曜3時以降の観覧は画廊へ電話連絡が必要。
古着、鏡、それに椅子などの家具を用いてのインスタレーション。暗室のフロアには無造作に女性用の洋服が積まれ、その隙間に映像作品の流れるモニターがディスプレイされている。DM画像はつけまつげを使った鏡のオブジェ。全て作家自身の身近な素材を使ったとのことだが、会場に流れる奇妙な音楽の他、プロジェクターによって壁面全体に映し出されたキラキラ輝く映像など、女性性を全面に押し出した展示はインパクトがあった。
古池潤也展@ギャラリー山口(中央区京橋3-5-3 京栄ビル1F)
野菜のモチーフで描いた文字絵。1m四方のパネルにはネギやカブなどの色鮮やかな野菜が比較的リアルに表現され、それが点となり線となって「正」や「今」などの漢字を象る。近寄ると抽象画のようにも見えたが、展示室をぐるりと一周、取り囲む文字絵群は、何らかのメッセージ性のある散文詩のようにも感じた。
加藤崇展@ギャラリイK(中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F)
作家自身の身体を張ったパフォーマンスを映像や写真で紹介する。顔をテープでぐるぐる巻きにしたり、口に植木鉢の如く植物をつめたりといった謎めいた行為に、プラスとマイナスの意味を含めて思わず少々首を傾げてしまう。コップから七色の液体を順に吐き出し、それを最後飲み干す映像「虹」は、まるで先日ヒロミヨシイで見たクリードの作品のようだった。
柳井信乃展@ギャラリーQ(中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F)
日本画の素材とビーズなどを組み合わせて、動物などのモチーフをコラージュ風に描く。ともかく印象深いのは、画面の上に登場するカラフルなビーズによって出来た蟻の装飾。数えきれないほどの小さな蟻のオブジェが、描かれた動物の足などの上を線をぬうように行進している。虫の苦手な方にはおすすめ出来ないかもしれない。
杉浦藍展@ギャラリー現(中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F)
板張りのフロアに唐突に立つ巨大オブジェ。壁面には何やら山のような形をした銀色のオブジェがへばりつき、中央にはカラフルなブラインドによってデコレーションされた物体が鎮座する。中を覗き込むとジオラマ的景色が広がっていたのが印象深かった。
市川裕司展@コバヤシ画廊(中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1)
4m×4mにも及ぶ透明アクリル板を折り、その表面に胡粉などを用いてダイナミックな波模様を描きだす。アクリル板の内部には灰色の布も挟まれ、それが絵具の色とも共鳴して、複層的な景色を生み出していた。絵画を超えた作品全体の造形には驚かされるものの、個人的には奥の小部屋の小品の方が馴染む。
深井聡一郎展@ギャラリーなつか(中央区銀座5-8-17 ギンザプラザ58 8F)
スカートを広げ、貴婦人の如く立つ陶の人形が十数点ほど並ぶ。その取り澄ました様子はまるで西洋人形のようだが、一部、人形のスカートの部分をそのまま拡大したような山のオブジェ、またはそこから手だけが伸びた作品など、シュールな味わいもまた独特のものがあった。なおなつかでは本企画に合わせての小品展を開催中。参加画廊の出品作家のドローイングなどの手頃な作品(価格も数千円から。)が数十点ほど展示されていた。
森哲弥展@GALERIE SOL(中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F)
横10センチ、縦4~5センチほどの木片を積み重ね、高さ3メートル近くはある少年と馬の彫刻を制作する。その他、同じく木片による等身大の人物像なども展示されていた。馬に関連した小品の平面も合わせて紹介。
佐藤裕一郎展@ギャラリー58(中央区銀座4-4-13 琉映ビル4F)
展示室の両サイドに、曲線を描いて連なる計18メートルにも及ぶ日本画を並べる。斜めに走る白、そして藍色から青へと変化するグラデーションは神秘的な様相を醸し出す。ちょうど展示室の中央、両サイドと前面とに向かい合う形で作品の前に立った時、宇宙空間の中に漂うかのような気持ちにさせられた。
菊池絵子展@藍画廊(中央区銀座1-5-2 西勢ビル2F)
ホワイトキューブに鉛筆のみで描かれたドローイングが15、6点。全て壁に直接ピンで留めてある。モチーフはコンセントやサンダル、それに凧などの日常のものだが、余白を大きくとり、全て同縮尺にて、例えば脈絡もない靴とミラーボールなどを絶妙な距離感を置いて同時に描いている様子がとても面白かった。個人的に今回見た一連の展示では一番印象に深い。今後も追っかけたい作家だ。
釘町一恵展@なびす画廊(中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F)
色鮮やかな色彩感によって表された熱帯を連想させる土地の景色。地中から魂とも炎とも呼ぶべき何かが噴き出している。決して具象に忠実ではなく、例えば人の気配などを追求したという作品は、いささか捉え難いが、何か訴えてくるものは感じられた。
統一したテーマがあるわけではないので、全体として何かが提示されるわけではありませんが、主に70年代後半から80年代前半生まれの比較的若い世代の、またこのような比較的規模の小さい画廊で活躍されている作家の『今』を知るには最適な企画と言えるかもしれません。
なお画廊の地図も掲載されたちらしの情報はギャラリーなつか(オーナーインタビュー)、また展示風景はギャラリーQのサイトが便利です。エリアも京橋から銀座6丁目までと限定的なので、ゆっくり歩いて廻っても1時間半もあれば十分に見られるのではないでしょうか。
8日の土曜(最終日は17時まで)までの開催です。また公式冊子が300円で販売されていましたが、一部の画廊では無料で配布していました。
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