「伊勢神宮と神々の美術」 東京国立博物館

東京国立博物館・平成館(台東区上野公園13-9
「第62回式年遷宮記念 伊勢神宮と神々の美術」
7/14~9/6



来る平成25年の式年遷宮を前にして、伊勢神宮の神宝の他、歴史や信仰などを紹介します。東京国立博物館の平成館で開催中の「第62回式年遷宮記念 伊勢神宮と神々の美術」へ行ってきました。

まずは展覧会の構成です。

第1章「神宮の歴史と信仰」:主に中世以降、伊勢に寄せた人々の信仰心を探るとともに、仏教と神宮の関わりをひも解く。「伊勢神宮参詣曼荼羅」など。
第2章「遷宮と古神宝」:神宮内より出土した古神宝を展観。鎌倉時代の太刀、奈良時代の金銅高機など。
第3章「今に伝える神宝」:昭和以降、遷宮に調進された神宝、装束などを紹介。
第4章「神々の姿:9世紀以来、多くの人々の手によって象られてきた神像、約10体を展観。

古来より人々の信仰を集めた場所とのことで、奈良期以来の様々な神宝にも見るべき点があるのはもちろんですが、今なお続く遷宮の存在など、伊勢は過去の遺跡というわけでは決してありません。よって第3章など、現代の遷宮に用いられる品々の展観も見所の一つではないでしょうか。また八幡神や曼荼羅なども、神仏習合的な要素も、伊勢信仰の全貌を明らかにする上において重要なポイントでした。よく目にするような、過去の貴重な宝を公開する寺院展とは一線を画している面はあるかもしれません。(ちなみにかつての伊勢では、神の前から下げられた神宝を火中に投げ入れて処分していたそうです。鎌倉期の太刀が『出土』するというのは、そうした意味でもあります。)



それでは以下、印象に残った品を挙げます。

「伊勢両宮曼荼羅」(南北朝時代/奈良・正暦寺蔵)
内宮と外宮を二幅で示す。宮を四方で守る増長天などの四天王の存在が興味深い。早くも神仏習合の表現を垣間みることが出来た。(公開:8/4~10、8/25~)



「伊勢参詣曼荼羅」(江戸時代/東京・三井文庫蔵)
国内に現存する四点の参詣曼荼羅のうちの一つ。上と同じく二幅の画面に、今度は人で大賑わいの伊勢の様子を劇画的に表す。赤い社や塀など、かつての伊勢はそうした色で塗られていたことがあったのだろうか。遠くには富士も望む。魚の鱗のような川の表現が面白い。(公開:8/4~23)*なお参詣曼荼羅のうち二点は既に公開終了。もう一点、神宮徴古館酒蔵の室町期の作品は11日から。

「雨宝童子立像」(平安時代/三重・金剛証寺蔵)
仏神融合を表す仏像。頭上には五重塔が載っている。



「古神宝 玉纏横刀」(鎌倉時代/三重・神宮司庁蔵)
儀礼用の太刀。取っ手の部分を象る曲線の装具が美しい。これとほぼ同じ形をしたものが、近代に調進された神宝を紹介する第3章でも出ていた。(上の作品画像。)今へと脈々と受け継がれたその伝統に驚嘆。

「金銅高機」(奈良時代/福岡・宗像大社蔵)
高機(たかばた)のミニチュア。奈良期のものとは思えないほど状態が良い。

「赤紫綾御蓋」(昭和4年/三重・神宮司庁蔵)
遷御の道のりで用いられた高さ4~5mにも及ぶ巨大な傘。これと対になってあった「菅御翳」(元々は貴人の顔を隠すために使われた。)など、伊勢ならではの品々に圧倒される。



「八幡三神坐像」(平安時代/大分・奈多宮蔵)
仏教との関係の深い八幡神。僧の形をしているが応神天皇の母体であるともされている。

「男神坐像」(平安時代/京都・大将軍八神社)
鳥帽子を冠った典型的な神像とされるが、手を胸にやり、何かを伺うかのような表情が印象に残る。



古文書なども相当数あって難儀した面はありましたが、私自身の伊勢への関心の取っ掛かりには大いになり得たような気はします。なお本展示には最近の東博に有りがちな凝った演出(ライティングなど。)がありません。まるで平常展の如く、神宝が陳列ケースに収められていました。

物販スペースでは赤福がやはり一番人気でした。例の偽装事件以来、逆に品薄感が強まって人気となった赤福ですが、同会場ではほぼ連日、数百個を仕入れて販売しているそうです。

9月6日まで開催されています。
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