「道教の美術 TAOISM ART」 三井記念美術館

三井記念美術館中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
「道教の美術 TAOISM ART - 道教の神々と星の信仰 - 」
7/11-9/6



日本と中国の文化に深く根ざす道教の世界を紹介します。(公式HPより一部引用。)三井記念美術館で開催中の「道教の美術 TAOISM ART」へ行ってきました。

まず道教とは何ぞやということで、展示解説文より記載の部分を引用しておきます。

老子を祖と仰ぎ、不老長寿を理想として中国で生まれた宗教。東アジアの思想文化のベースとなり、風水や易学、または神仙思想などを取り込んで発展し続けてきた。
美術の観点からでは、老子や仙人像をはじめとして、星座を擬人化した像、または閻魔王などの裁判官、陰陽道の符などが挙げられる。
日本へは主に修験道や、古代律令時代以来、安倍晴明にも代表されるような陰陽道、または鎌倉期の禅や律宗寺院で祀られた道教の神、伽藍神などに影響を与えた。



会場は比較的詳細なキャプションの他、その文を抜き出した解説シートなども用意されていて、私のように道教の知識がなくとも、最低限の歴史や思想を追えるようには工夫されています。以下、細かな部分は公式HP内に譲るとして、印象深い作品を簡単に挙げてみました。

「青銅 騎獣人物博山炉」(前漢時代/大阪市立美術館)
蓋を仙山という博山に象った香炉。珍獣を手にのせる男の様子がコミカル。

「正統道蔵 唐玄宗御註道徳真経」(明時代/宮内庁書陵部)
古くは後漢、そして唐に編纂され、現存する最古のものとしては明時代に至る道教の経典。世界で4例しかないという極めて珍しい品。

「黄庭経 王羲之 宋拓」(東晋時代/三井記念美術館)
有名な書家、王羲之の書。彼も道教信者であったらしい。端正な漢字が引き締まった印象を与える。

「道教三尊像」(北魏時代/大阪市立美術館)
文字通り道教の三尊像。手を胸の前をやる主尊の表情が印象深い。長身の脇侍の造形は鋭角的な線が走るシャープなものだった。

「老子出関図 岩佐又兵衛筆」(江戸時代/東京国立博物館)
思いもしない場所で登場した又兵衛の絵画。墨の陰影によって巧みな立体感を引き出した牛にのる老子の姿が描かれている。くつろいだ様が良い。

「焔口餓鬼図(面然大士)」(明時代/六道珍皇寺)
道教の一神を表した作品。中央ににやりと笑って座禅を組む神が描かれている。その下には供養する人間や救済される者が群れていた。上部の観音の姿と合わせてどこかエキゾチックな様子が興味深い。

「五星廿八宿神形図巻 谷文晁筆」(江戸時代/栃木県立博物館)
五星(木・火・土・金・水)と二十八の星座を擬人化して描いた巻物。元々は栃木の絵師、小泉斐(こいずみあやる)が描いたものを文晁が写した。鳥の面をつけた者や鳳凰にのる者など、その様子は多彩。



「妙見菩薩立像 院命作」(鎌倉時代/読売新聞社)
堂々たる菩薩立像。ちなみに今回はこの他にも数体の仏像が出ているが、残念ながらどれもがガラスケースの中に窮屈におさめられている。スペースの制約はやむ終えないとは言え、明らかに箱の容量を遥かに越えた展覧会という印象が強い。



なお本展はそもそも大阪市立美術館が中心となって企画した展覧会です。終了後、大阪市立美術館(9/15-10/25)、また長崎歴史文化博物館(2010/1/12-3/22)へと巡回しますが、メインの大阪市美では三井記念美の約2倍弱にあたる330点もの作品が、一度の展示替えを挟んで全て登場します。(ちなみに三井会場の出品は約170点です。それが計6回の展示替えを挟んで紹介されています。出品リスト。)内容をしっかりと吟味するには、大阪会場でまとめて観覧した方が適切かもしれません。

「道教の美術 TAOISM ART」大阪市立美術館会場の公式HP)

9月6日までの開催です。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )