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「奇想の王国 だまし絵展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム渋谷区道玄坂2-24-1
「奇想の王国 だまし絵展」
6/13-8/16



話題のだまし絵展の会期も残り僅かとなりました。文化村で開催中の「奇想の王国 だまし絵展」へ行ってきました。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章「イメージ詐術の古典」:アルチンボルド「ルドルフ2世」他、16世紀西欧以降におけるイメージトリック。アナモルフォーズ(歪曲像)など。
第2章「トロンプルイユの伝統」:絵で欺く。目だまし(=トロンプルイユ)の絵画。静物画など。
第3章「アメリカン・トロンプルイユ」:南北戦争以降、主に東海岸地方で隆盛したアメリカのトロンプルイユ絵画。
第4章「日本のだまし絵」:描表装、国芳の人物による人の顔を表した作品など。
第5章「20世紀の巨匠たち - マグリット・ダリ・エッシャー」:20世紀美術におけるだまし絵の世界。
第6章「多様なイリュージョニズム」:現代美術における視覚トリック。

*会場構成上、実際の順路(一部、展示作品も含む。)は上記の構成と異なっています。ご注意下さい。



なおこの展覧会では西欧のだまし絵を語る上で、普段あまり聞き慣れない三つの用語が登場します。会場でも紹介されていましたが、前もって頭に入れておいても良いかもしれません。

「ダブルイメージ」:一つの絵に別のイメージを含ませる。野菜や果物から人物を象るアルチンボルドなど。
「アナモルフォーズ」:歪んで見える絵。ある視点から覗くとイメージが浮かび上がる。
「トロンプルイユ」:目だましの手法。リアルに描くことで現実とイメージとの違いを浮き上がらせる。



さて今回の展覧会の特徴を大まかに表せば、決して「だまし絵」を学問的に検討するものではなく、むしろもっと曖昧な広義のだまし絵(単純な視覚トリックを含む。)をエンターテイメント的に見ていくものだと言えるのではないでしょうか。実のところ第4章に登場する描表装をだまし絵に含むのは疑問もありますが、目玉のアルチンボルドに始まり、それ自体で一つのシュルレアリスム展が成り立つほど充実したマグリットにダリ、さらには広重・国芳などまで、古今東西の絵を『だまし』という観点を通すとこうも面白くなってくるとは思いもよりませんでした。会場の混雑にも納得です。いわゆる絵画展でこれほど楽しめたのは久しぶりのことでした。

 

だまし絵云々をさておき、私として今回一番印象に深かったのは、マグリット7点、ダリ2点、デルヴォー1点と続く第5章の「20世紀の巨匠たち」でした。いつぞや同じく文化村のマグリット展を見て、何ら感じることなく終わってしまったのに自分でもがっかりした記憶がありますが、何故か今回はどれもが非常に魅力的に思えてなりません。馬に乗った人物が現実ともう一つの世界を縫うように進む「白紙委任状」をはじめ、画中画が拡大して景色全体へととねじ込むように繋がる「囚われの美女」など、絵画空間を操作して見る側に次元を超えた旅を体験させるマグリットの力量には至極感心させられます。大好きなデルヴォーの一点、屋外と屋内の景色を女性を軸に転回させた「窓」も見られて満足出来ました。



現代アートファンの端くれから言わせていただければ、ラストに登場する現代アートの品々が、会場で驚くほどの関心をもって見られていたことだけでもこの展覧会の意義は十分にあったのではないでしょうか。福田繁雄の「Sample」をはじめ、このところいささかワンパターンに過ぎる本城直季もここでは大きく輝いて見えました。下手な現代アート展より観衆の注意を作品に払わせることに成功しています。



ところで作品に一部、展示替えがありましたが、今月4日より暁斎の「弾琴五美女憩の図」野他、其一の「業平東下り図」の展観も始まりました。だまし的要素云々はさておいても、本展の日本絵画はなかなか興味深い作が揃っているので、そちらを追っかけつつ見納めとするのも良いかもしれません。ちなみに日本絵画ではまさにこの時期に涼をとるに相応しい暁斎の「幽霊図」をはじめ、伝抱一の「蓬莱山・春秋草花図」(展示は終了しています。)など、点数こそ少ないものの見所は満載でした。

最後に展覧会の現在の混雑状況についてお知らせします。先日、改めて問い合わせたところ、午後の時間帯を中心に平日では10分程度、また土休日では30分以上のチケット購入のための列が出来ているとのことでした。また最終日まで無休、連日夜9時まで開館していますが、夜間に関しては土日を含め、午後の最混雑時間帯よりは幾分余裕があるそうです。

16日までの開催です。なお終了後は兵庫県立美術館へと巡回(8/26~11/3)します。今更ながらもお見逃しなきようご注意下さい。
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