「栄光のオランダ絵画展 - レンブラント、ゴッホ、そして現在 - 」 ホテルオークラ東京

ホテルオークラ東京港区虎ノ門2-10-4 アスコットホール 別館地下2階)
「第15回 秘蔵の名品 アートコレクション展 - 栄光のオランダ絵画展」
8/4-30



毎年恒例、オークラでのアートコレクション展も今年で15回目を数えました。ホテルオークラで開催中の「第15回 秘蔵の名品 アートコレクション展 - 栄光のオランダ絵画展」へ行ってきました。

本年の展示のポイントは以下の通りです。

・オランダの芸術、主に絵画を、17世紀より今世紀までの時間軸で概観する。
・サブタイトルに『現在』とあるように、全75点のうち半数以上の40点が20世紀以降の作品であり、なおかつ20点強がいわゆる現代アートである。



ともかくはこの保守的なアートコレクション展で現代アートが出ているとは思いませんでしたが、何やら意味不明なものはともかくも、楽しめた作品はあるのは事実でした。以下、いつものように印象に残った作品を挙げてみました。(展示順。会場では19C→20・21C→17Cの順で作品が展示されています。)

フィンセント・ファン・ゴッホ「静物、白い壺の花」(1886年/吉野石膏株式会社)
ゴッホの『色彩の習作シリーズ』と呼ばれるうちの一枚。色彩の美しさよりも、暗がりの中から朧げに浮かび上がるバラの姿が心を打つ。



ヘンドリック・ウィレム・メスダッハ「日没の穏やかな海の漁船」(19世紀以降/オランダ文化財研究所)
これぞオランダと言うべき海の景色。沈み行く太陽を彼方に、穏やかな海の上を帆船がたゆたう。黄金色に染まる空の色が美しかった。

ヘンク・ヘルマンテル「ロッペルサム教会の南側廊」(1969年/INGコレクション)
誰もいない教会の廊下を捉えた作品。清潔感に溢れながらも、限りなく静かな様相をたたえた空間は、どことなくハンマースホイの世界を思い起こさせる部分があった。

ラオル・ハインケス「静物」(1935年/INGコレクション)
『魔術的リアリスム』として紹介された作品。屋外の石垣の上にのった果実や本が、精緻な描写と反面にある非現実的な世界を呼び込んでいた。

アドリアーナ・ファン・ズースト「磁器の小枝」(2004年/INGコレクション)
スーパーリアリスムを思わせる一枚。白いシーツや木の実などが極めて写実的な描写で捉えられている。現代アートながら、この展示の文脈で見ると不思議と古典的に思えた。

バーバラ・フィッセル「オランダでの一日」(2001年/オランダ銀行)
ハウステンボスを舞台に、オランダ人カップルが日本人に扮する様子が写真におさめられている。実際の日本(場所)とオランダ人(人種)を、写真の中でそれぞれ反転させて見せていた。



レンブラント・ファン・レイン「羊飼へのお告げ」(1634年/アムステルダム国立美術館)
チラシにはレンブラント派の油彩が挙げられ、それが目玉にもなっているが、私としては数点あったレンブラント本人の版画の方により惹かれた。絵画的表現でドラマテックに聖書のワンシーンを描く。



サロモン・ファン・ライスダール「エマオへの路」(1668年/INGコレクション)
オランダ絵画展では絶対に外すことの出来ないが画家の一人。この作品自体はそれほど良いは思えなかったが、その牧歌的な田園風景はやはり魅力的。絵の前で深呼吸したくなるような大自然が広がっていた。



おそらくは観客が期待するであろうレンブラントの他、17世紀のオランダ絵画に関しては、素人の視線からもアベレージはおおよそ高いとは感じられませんでした。とは言え、基本はチャリティの企画でもあるので、その辺云々を言うのは野暮なことなのかもしれません。

なお本展チケットで隣接する大倉集古館の「花・華」展を合わせて観覧することが出来ます。そちらは『間違いのない』展示なので、逆に集古館メインで考えてアートコレクションに出かけるのも良いのではないでしょうか。

心なしか例年よりも会場が閑散しているような気がしました。今月末まで開催されています。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )