「国立西洋美術館 常設展示」(Vol.1・本館編) 国立西洋美術館

国立西洋美術館台東区上野公園7-7
「国立西洋美術館 常設展示」(Vol.1・本館編)
6/4~8/31

所蔵版画展に合わせ、先だってリニューアルを終えた常設展示を見てきました。

久々に本館、そして新館合わせての全面展示ということで、質は言うまでもなく、量に関しても相応の見応えがあります。なお常設は、一部作品を除き写真撮影が可能です。ここでは本館をVol.1、新館をVol.2に分け、いくつか印象深い作品を挙げてみました。

シエナ派「聖ミカエルと龍」(14世紀)





黙示録の一節に基づくミカエルと怪物退治の物語です。ミカエルによって踏みつけられ、槍を突き刺された龍が、まさに断末魔の叫びを放っています。

ヨアヒム・ブーケラール「十字架を運ぶキリスト」(1562)





照明が反射してしまいましたが、右上方の磔刑場へと進むイエスの一行が描かれています。十字架を背負い、手を地面に落としながらも前へと進むイエスの姿は既にか弱く、その前で悲しむマリアも全身の力が抜けたように崩れおちていました。群像的な表現でありながらも、個々の情景も見事に浮かび上がってくる作品です。

レアンドロ・バッサーノ「最後の審判」(1595-96)

 

お馴染みの最後の審判をモチーフとします。画面は縦70センチ、横50センチほどと、そう大きくありませんが、聖人の栄光より右下への地獄へと至るドラマチックな物語には迫力がありました。

ホーファールト・フリンク「キリスト哀悼」(1637)





十字架よりおろされたイエスを人々が嘆き悲しむ様子が描かれています。暗がりにスポットライトを当てたような表現はもとより、髪を振り乱し、イエスの足にすがるマグダラの姿は非常に激情的です。インパクトがありました。

ダフィット・テニールス(子)「聖アントニウスの誘惑」





西美常設内で一番シュールで愉しい作品かもしれません。聖アントニウスを取り囲んで誘惑する魔女や魔物が我が物顔で登場します。白いドレスから伸びる足先が鳥の形をしている(つまり魔女)様子の他、空中に飛んで口から炎を吐き出し、何やら戦うような仕草を見せる魔物たちには目を奪われました。

アレッサンドロ・マニャスコ「嵐の海の風景」(1718-25)





画面の随所で跳ねるように伸びる白の描線が印象に残ります。荒々しい海が丘にぶつかり、その中を何とか進もうとする人間がか弱い存在として描かれていました。

如何でしょうか。新館の作品は、次回の「新館編」(Vol.2)のエントリにまわしたいと思います。(追記:下のリンク先にアップしました。)

「国立西洋美術館 常設展示」(Vol.2・新館編) 国立西洋美術館

ちなみに展示作品は全て図版入りにて、下記の西美HP上でも紹介されています。データベースは館内地図とも連動していて、なかなか使い勝手良く出来上がっていました。そちらも合わせてご覧下さい。

「所蔵作品 - 常設展」@国立西洋美術館
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )