「ユーラシアの風 新羅へ」 古代オリエント博物館

古代オリエント博物館豊島区東池袋3-1-4 池袋サンシャインシティ文化会館7階)
「ユーラシアの風 新羅へ」
8/1-9/6



主に韓国・新羅の出土品を中心に、西アジアから中国、そして日本に至るまでの東西の交流史を辿ります。古代オリエント博物館で開催中の「ユーラシアの風 新羅へ」へ行ってきました。

新羅の宝剣、または杯や土器をはじめ、同時代はおろか、それよりも遥か以前のペルシャ時代の角杯など、なかなか見所の多い展覧会です。そもそもこの展示は、昨秋より今年にかけて韓国の国立慶州、及び済州博物館で開催された「新羅と西アジア」展を日本で再構成したものですが、それらの博物館はもとより、MIHOや岡山市立オリエント美術館所蔵の貴重な品々を池袋で手軽に見られる機会を逃すわけにもいきません。時代こそ違えども、同モチーフ、例えばイランのリュトンと新羅の角杯、またはローマと新羅の切子椀など、それぞれを比較して楽しむのもまた一興でした。

それでは印象に残った作品をいくつか挙げます。



「装飾宝剣」(新羅 5~6世紀)
ガーネットやガラス玉をはめ込んだ金の剣。紋章風の金細工はさほど精巧ではないものの、その輝きには目を奪われた。(上の図版はその一部)

「金冠飾」(新羅 5世紀)
鳥の翼のような形をした冠。透かし彫りの冠からは円盤状の金の飾物がいくつもぶら下がる。5世紀のものとは思えないほど見事な保存状態だった。

「金製耳飾」(新羅 6世紀)
二つの球と円錐を繋ぎ合わせた金の耳飾。表面を縫うチェーン状の装飾が驚くほど細やかだった。

「円形切子杯」(新羅 5~6世紀)
損壊が激しいが、切子風の紋様に組み合わされた透明ガラスの杯からは清涼感が感じられる。

「円形切子碗」(イラン・イラク 6世紀)
まるで楽茶碗のように肉厚の切子碗。写真で紹介されていた正倉院蔵の日本の碗にそっくりだった。東西での文化の伝播を肌で感じる作品。

「鶏をくわえる山猫装飾 リュトン」(イラン・中央アジア 紀元前2世紀~1世紀)
ディオニュソスのモチーフ。尖った耳をした山ねこが鶏を口でがっちりとくわえている。鶏は驚いた様子にて目を大きく見開いていた。これは一推し。



「獅子頭装飾角杯」(イラン・小アジア 紀元前8世紀~紀元前6世紀)
ベロを突き出した獅子が角杯に象る。たてがみの細やかな装飾は必見。



「鴨装飾腕輪」(アケメネス朝ペルシア 紀元前6世紀~紀元前4世紀)
腕輪の上部に番の鴨がそれぞれ反対の方向を向いて座っている。羽の部分には小さなラピスラズリやトルコ石が敷き詰められていた。ちなみにこの腕輪は今でも開閉が可能だということ。



「加彩武人俑」(北斉 5世紀)
ライオンの絵が描かれた盾を構えて立つ武人。天狗のような鼻を突き出した厳めしい表情が印象的だった。

残念ながら出品リストはありませんが、その代わりに書店でも取り扱われている図録が刊行されています。キャプションも比較的充実していましたが、足りない部分はそちらで補うのも良いかもしれません。

「ユーラシアの風 新羅へ/山本孝文/山川出版社」

ショッピングセンター内の立地ということで、例えば豊洲の浮世絵館ほどの施設を想像していましたが、ややがらんとした寂しい雰囲気ではあったものの、意外と立派な博物館で驚きました。何ぶん初めての訪問なので、この美術館の平均的な展示というのは良く分かりませんが、少なくとも今回の質を鑑みれば、池袋駅から人ごみを抜けて15分ほど歩いて向かう価値もあるのではないでしょうか。

なおぐるっとパスでフリー入場可能です。パスをお持ちの方には是非ともおすすめします。

9月6日までの開催です。
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