「トレース・エレメンツ」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「トレース・エレメンツ - 日豪写真メディアにおける精神と記憶 - 」
7/19-10/13(会期終了)



これほどロングランに関わらず、何故か見るのはどうも会期末になってしまいます。先日までオペラシティで開催されていた「トレース・エレメンツ」へ行ってきました。

10名の日豪アーティストによる、写真から映像メディアまでを横断する展覧会です。主力は『映像』、また括りは『日本とオーストラリア』ということで、見る前は失礼ながらも散漫ではないかと危惧していましたが、実際には期待以上の内容で楽しむことが出来ました。一見、バラバラに映るメディアアートを器用にまとめてしまうのも、日頃手堅い企画で魅せるオペラシティならではのことかもしれません。



一番の目当てはもちろん田口和奈です。彼女の独特なモンタージュ絵画はこれまでにもタロウナスの個展、または佐倉市美の「カオスモス」などで追ってきましたが、今回紹介されてい新作群(2008年)には、従来にはない新たな要素が加わっているようにも感じられました。つまりかつては、例えば真直ぐ前を見据える女性ポートレートのように静的で、あまりモデルの人となりを感じさせない、まさにモンタージュそのものだったのが、新作では動的な、ようは髪を振り乱す女性のような激しい情念が発露されたものに変化していたわけです。これは意外な展開でした。



さて田口以外でこの展覧会が比較的良かったのは、通常なら『忍耐』の要求される映像系の作品に、双方向の要素が加わっていたからかもしれません。秀逸なのは、アレックス・デイヴィスの「ディスロケーション」です。長方形の展示室の正面に小型のモニターを4台埋め込み、作家によるパフォーマンスと、それを覗き込む観客自身との姿を奇妙な形で融合させています。作品の中へ入り込むのはやはり照れくさいのでしょうか。観客の大方は自身の写り込まない、一番左のモニターの前に立っていました。ここは大手を振ってパフォーマンスと絡み、犬に吠え立てられたいところです。

双方向メディアと言えば同じオペラシティ内にあるICCも有名ですが、そちらと連携する企画があればなお良かったような気がしました。

展覧会は既に終了しています。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「正木美術館 開館四十周年記念展 禅・花・茶」 東京美術倶楽部

東京美術倶楽部港区新橋6-19-15
「正木美術館 開館四十周年記念展 禅・花・茶」
9/23-10/12(会期終了)



終わってしまった展示なので手短にいきます。大阪は泉北郡忠岡町に位置する、正木美術館所蔵の東洋古美術品を展観します。東京美術倶楽部での「禅・花・茶」へ行ってきました。



押しの強い解説にやや興ざめしてしまったのも事実ですが、それでも鎌倉より室町に至るまでの水墨画や宋の茶器など、美術館創設者の正木孝之氏が僅か一代で築いたとは思えないほどのコレクションはさすがに壮観でした。雪舟の「山水図」における、無駄のない構図と澱みないパースペクティブは、今回の展示の演出とは打って変わっての素朴でかつ、また静かな魅力をたたえた正木コレクションの美意識を知るのに最適な作品と言えるかもしれません。また天目好きには南宋期のそれが一つ出ていたのも嬉しいところでした。天目台の蒔絵風の文様が実に艶やかです。青貝の松竹梅がきらきらと瞬いていました。

お茶関連では対決展の再現ならぬ、長次郎の黒楽と光悦の赤茶碗の並列展示が見応え十分です。瑞々しく、また躍動感のある光悦の赤と、やや類型的されすぎた嫌いはありながらも、その枯れた面持ちに達観を思う長次郎の黒と、甲乙付け難い魅力が感じられました。またその他では、伝等伯の「千利休図」も見事な逸品です。同じく対決展の文脈に準えれば、かの永徳より信長像を思わせるような、モデルの真に迫った肖像でした。キリリと引き締まった口元に、緊張感を是とする侘茶の一片を見るような思いがします。



須田悦弘の一角はさすがに完成されていました。足利義政の築いた空間をイメージしながら、ひっそりとけなげに咲く草花を見ることには、時空を超えた神秘の世界を覗き見ているような気持ちにさせられます。

いつかは泉北の地で正木コレクションを拝見してみたいものです。展覧会は既に終了しています。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )

「矢津吉隆 - Holy and Common」 TSCA

TSCA Kashiwa千葉県柏市若葉町3-3
「矢津吉隆 - Holy and Common」
9/20-10/25



ひたすら回転する『何か』が、鮮やかな光をまとった未知の空間を作り上げます。1980年生まれで、かつてAntennaのメンバーとしても活躍していた、矢津吉隆の新作インスタレーション個展へ行ってきました。









回転運動という極めて単純な運動自体が、元々のモノの持つ形をこれほど鮮やかに解き放つとは知りません。何ら変哲のない、まさに多種多様なモノたちが、矢津の独特の美感に支えられた演出の力も借りて、あたかも顕微鏡で覗き込んだ宝石の結晶のような姿を披露しています。実際のところ、その回転し続ける何かを知ることは、一種の種明かしともなってしまうので控えますが、まさかあれほど一般的で身近なモノを回転させるだけで、全く別種の『幻』が生み出されることは、誰しもが驚きをもって見るほかないのではないでしょうか。ようはあの日常慣れ親しんだ文房具が、そして夏のビーチでは必須のアイテムが、上に挙げた写真のような意外な姿を見せて回転しているのです。その種明かしは是非、会場でご覧になってください。



回転運動の瞬間を写真に切り取り、一種の光のオブジェを平面に仕立て上げたシリーズや、多様な発光体を回転させて、大掛かりなインスタレーションにした作品なども見応えがあります。それらは「日食」をイメージさせたとのことですが、むしろ私には夜空に打ち上がる花火のようにも見えました。光が闇に広がり、輪を描きながら、また美しい形をとって散っていくわけです。





10月25日まで開催されています。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

予定と記録 2008年9、10月編

大琳派展シリーズとオフ会と気を取られ、今月の予定と振り返りを書くのをすっかり忘れていました。毎月恒例、私的スケジュール帳のコーナーです。

10月の予定

展覧会
「液晶絵画」 東京都写真美術館(~10/13)
「トレース・エレメンツ」 東京オペラシティアートギャラリー(~10/13)
「アヴァンギャルド・チャイナ」 国立新美術館(~10/20)
「近代日本の巨匠たち」 出光美術館(~10/26)
「ピサロ展 家族と仲間たち」 大丸ミュージアム・東京(~10/27)
「川合玉堂とその門下」 講談社野間記念館(~10/26)
「パリ - ニューヨーク 20世紀絵画の流れ」 府中市美術館(~11/3)
「高山辰雄遺作展」 練馬区立美術館(~11/3)
「百寿を超えて」 山種美術館(~11/3)
「丸山直文展 後ろの正面」 目黒区美術館(~11/9)
「ジョットとその遺産展」 損保ジャパン東郷青児美術館(~11/9)
「近代日本画の巨匠 速水御舟」 平塚市美術館(~11/9)
「三沢厚彦 アニマルズ08」 横浜そごう美術館(~11/16)
「大琳派展 継承と変奏」 東京国立博物館(~11/16)
「岡村桂三郎展」 神奈川県立近代美術館・鎌倉(~11/24)
「開館80周年記念 鎌倉の昇華」 鎌倉国宝館(~11/24) 
「横浜トリエンナーレ2008」 新港ピア、日本郵船海岸通倉庫他(~11/30)
「ボストン美術館 浮世絵名品展」 江戸東京博物館(~11/30)

コンサート
「東京交響楽団 第560回定期演奏会」 チャイコフスキー「交響曲第5番」他(17日)

9月の記録

展覧会
「アネット・メサジェ 聖と俗の使者たち」 森美術館
「正木美術館 開館四十周年記念展 禅・花・茶」 東京美術倶楽部 
「ジョン・エヴァレット・ミレイ」 Bunkamuraザ・ミュージアム
「舟越桂 夏の邸宅」 東京都庭園美術館
「エモーショナル・ドローイング」 東京国立近代美術館
「横浜トリエンナーレ2008」 新港ピア/赤レンガ倉庫1号館/日本郵船海岸通倉庫他
「THE ECHO」 ZAIM
「北斎DNAのゆくえ」 板橋区立美術館
「パラレル・ワールド もう一つの世界」 東京都現代美術館
「ICHIKENTEN 2008」 東京藝術大学大学美術館・陳列館、正木記念館
「狩野芳崖 - 悲母観音への軌跡 - 」 東京藝術大学大学美術館
「浮世絵 - ベルギーロイヤルコレクション展」(前期/後期) 太田記念美術館
「高崎市美術館彫刻展 彫刻をめぐる空間」 高崎哲学堂
「源氏物語の1000年」 横浜美術館
「引込線」 西武鉄道旧所沢車両工場

ギャラリー
「西尾康之 - 健康優良児」 NADiff GALLERY
「会田誠 展」 ミヅマアートギャラリー
「津村陽子 展」 青山|目黒
「塩保朋子 - Cutting Insights」 SCAI
「シュウゴアーツショー 池田光弘、小林正人、中平卓馬」 シュウゴアーツ
「渋谷奈緒 - passage - 」 TWS本郷
「松江泰治 - Nest - 」 TARO NASU GALLERY

コンサート
「NHK交響楽団 第1625回定期Aプロ」 マーラー「交響曲第5番」他 ドレヴァンツ(17日)
「東京都交響楽団 第667回定期Aシリーズ」 ブルックナー「交響曲第6番」他 ストリンガー/デュメイ(25日)

10月の展覧会の予定がまだ怒濤のように連なっていますが、液晶、エレメンツ、ピサロなどは既に先日、拝見してきました。近々、感想を書くつもりです。また大琳派は各展示替えを追い、平塚の御舟展は一度、自転車ツアーで廻ったトリエンナーレへの再チャレンジを兼ねて見に行きたいと考えています。もちろん各ブログで好評の練馬の高山展、目黒の丸山展なども早々に足を運びたいです。

先月は哲学堂、および群馬県美の山口展を見た群馬日帰りツアーが一番印象に残りました。なお山口薫展はもう間もなく世田谷へ巡回します。出来れば展示の感想をそちらで書きたいです。

秋の上野が例年の如く大変なことになっています。ロングランにも関わらず、土日は常に2、30分待ちの行列が続くフェルメール、また今年、静かなブームを呼びそうな西美のハンマースホイ、そして拙ブログでも勝手に大推奨中の大琳派と、一期一会の特大企画が目白押しです。ちなみに検索キーワードでも多くいらっしゃる大琳派展の混雑についてですが、現在のところ、対決展の出だしよりは人が多く、かといって薬師寺展のラストのような状況ではないと表せるのではないでしょうか。入場待ちの列もなく、館内も絵巻などの小さな作品を除けば、それほど並び合うこともなく見ることが可能です。(12日現在。)また金曜夜、もしくは土日でも午後4時を過ぎると館内に余裕が生まれます。ストレスなくご観覧を望まれる方には、そういった時間に出向かれるのがおすすめです。

感想を書けていない美術館、もしくは画廊の展示が多すぎます。いつもながらの駄文でもブログへ蓄積して、その足跡を少しでも残したいところです。

それでは今月もよろしくお願いします。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )

大琳派オフへのご参加をありがとうございました。

本日、先にご案内させていただいた「大琳派オフ」を無事終えることが出来ました。どうもありがとうございました。



一、二次会を合わせ、こちらの予想を上回る計35名の方にご参加いただきました。何ぶん慣れない旗ふり役のため、至らない点も多くあったかと思いますが、その辺はどうかご容赦下さい。また二次会にて本領発揮していただき、色々引っ張ってくださった共催の弐代目・青い日記帳のTakさんにも感謝申し上げます。お疲れさまでした。

二次会にて、ご参加の方々に「大琳派展この一枚」を挙げていただきました。結果は以下の通りです。

1位 鈴木其一「風神雷神図襖」 4票
2位 酒井抱一「白蓮図」 3票
3位 酒井抱一「夏秋草図屏風」 3票
4位 尾形光琳「三十六歌仙図屏風」 2票
5位 尾形光琳「燕子花図屏風」 2票
6位 尾形光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」 2票
番外編 円山応挙「朝顔狗子図杉戸」 (本館2階平常展)

江戸琳派の時代が来たという認識で宜しいのでしょうか。抱一好きには何とも嬉しい順番でした。

これに懲りず、また機会があれば、再度の企画を致すつもりです。今回、都合のつかなかった方も、是非お気軽にご参加ください。

最後にご参加いただいた全ての皆さま、改めまして今日は本当にどうもありがとうございました。
コメント ( 19 ) | Trackback ( 0 )

「大琳派展」 東京国立博物館 Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「琳派ミニ特集『絢爛の琳派絵画 - 巨匠と継承者』」(平常展 本館2階第8室 - 書画の展開、安土桃山・江戸)
10/7-11/16



大琳派シリーズの5回目です。今回は本編の大琳派展より離れ、本館2階、第8室の江戸絵画コーナーで開催中の、「琳派ミニ特集 - 絢爛の琳派絵画」に目を向けてみます。東博と言えば、日本随一の規模を誇る日本美術の常設展示です。今回も点数こそ少なめ(約10点)ですが、なかなか見応えのある作品が紹介されていました。

「西行物語絵巻(渡辺家本)巻上」俵屋宗達(重文)



西行物語がこちらにもお出ましです。宗達が模した二本の絵巻のうち、一本の上巻がまとめて展示されています。

「秋草図屏風」俵屋宗雪(重文)



金屏風に秋の草花が群れるように咲き誇ります。宗達イズムを確かに受け継いだ弟子、宗雪の代表作です。

「和歌巻」尾形宗謙



何とも流麗な書が雲霞と草花の中を舞踊ります。光琳の父、宗謙作の見事な巻物です。

「拾得図」尾形光琳

大琳派展でも光琳の墨画が紹介されていましたが、こちらもそれらに負けない魅力をたたえています。

「紅葉に菊流水図」尾形乾山
 
紅葉こそ、器に描かれた文様そのものですが、その下の水流はあたかも紅白梅図のそれのようでした。

「梅鴛鴦若松春草図」田中抱二
 
抱一の弟子、抱二による、可愛らしい鳥が印象的な二幅の鴛鴦図です。丸みを帯びた表現に抱一よりも芳中のテイストを感じます。

「御伽噺図」池田孤村
 
同じく抱一門下で、其一と並べ称された池田孤村の作品です。

この他、撮影不可のために写真をあげられませんが、中村芳中の「蝦蟇鉄拐図屏風」も、そのコミカルな動きが興味深い佳作でした。雪佳、芳中あたりはもはや琳派を語るに欠かせない人物でもあります。

大琳派展に登場する絵師は6名(宗達、光悦、光琳、乾山、抱一、其一)にほぼ絞られていますが、こちらは彼らの抱えた弟子たちなどにもスポットが当たっていました。まさに大琳派展を補完する内容と言っても良さそうです。

平常展「琳派ミニ特集」は大琳派展の会期と同じです。11月16日まで開催されています。なお展示替えの予定はありません。

*大琳派展シリーズ
Vol.12(鈴木其一+まとめ)
Vol.11(酒井抱一)
Vol.10(光琳、乾山)
Vol.9(宗達、光悦)
Vol.8(光琳、抱一、波対決)
Vol.7(風神雷神図そろい踏み)
Vol.6(中期展示情報)
Vol.4(おすすめ作品など)
Vol.3(展示替え情報)
Vol.2(内覧会レクチャー)
Vol.1(速報・会場写真)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )

「大琳派展」 東京国立博物館 Vol.4(おすすめ作品など)

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「大琳派展 - 継承と変奏 - 」
10/7-11/16



大琳派展シリーズの4回目です。今回はVol.2のレクチャーVol.3の展示替え情報をふまえ、なるべく現時点で展示されているものを中心に、私の独断と偏見によるおすすめ作品を挙げていきたいと思います。

【屏風で見比べる】
サブタイトルに「継承と変奏」とあるように、琳派の系譜を同モチーフの作品で比較するセクションがいくつか存在します。中でも屏風が一番その差異が分かり易い作品です。Vol.3と重なりますが、注目はやはり3点です。

「風神雷神図屏風(襖)」(第一会場、第1章「宗達・光悦」)
今回の目玉はやはりこれでしょう。現在、光琳と其一の作品のみが展示されていますが、21日より抱一が、そして28日より真打ちの宗達が加わり、全4点の風神雷神図が一堂に揃います。率直なところ、オリジナルの強みもあって宗達作に圧倒的な優位がありますが、其一の気宇壮大な襖などは、トレースして描いた抱一などとは異なった面白さがあるのではないでしょうか。



「波図屏風」(第二会場、第4章「抱一・其一」)
光琳と抱一の屏風が並んで展観されます。(現在は光琳のみ。抱一は28日より。)ともに滅多に見ることが出来ない作品だけに、今展示の一つのハイライトともなりそうです。



「燕子花図屏風」(第一会場、第2章「光琳・乾山」/第二会場、第4章「抱一・其一」)
残念ながら展示場所も、また時期も異なりますが、光琳の大作「燕子花図屏風」(~10/19)と、抱一の同名の屏風(10/21日~)が出品されます。光琳作があまりにも有名なため、抱一のそれは完全に陰に隠れている感は否めませんが、まるで水に泳ぐように流麗な燕子花やひらりと舞い降りたトンボなど、彼らしい情緒を感じる風雅な一枚であることは相違ありません。また抱一では、同モチーフからもう一点、「八橋図屏風」(10/21~)もおさえておきたい作品です。どちらかというとこちらの方が光琳の燕子花に近い表現をとっています。

【絵を読む】
上に挙げた「燕子花」も、元はと言えば伊勢物語に由来する作品ですが、今回の展示では琳派で好まれる物語がいくつか登場しています。

「源氏物語図」(第一会場、第1章「宗達・光悦」)
空蝉、篝火、夕霧(伝宗達)の3点が出品中です。会期最終日まで展示されます。

「伊勢物語図色紙」(第一会場、第1章「宗達・光悦」)
芥川、水鏡など、伝宗達の作品が計6点ほど登場です。10月28日の展示替えを挟み、各3点ずつ公開されています。



「西行物語」(第一会場、第1章「宗達・光悦」/第一会場、第2章「光琳・乾山」)
宗達の「西行法師行状絵」2巻、3幅と、光琳の同名作より1巻分が展示中です。巻物は各々2週間ごとに巻き替えです。

【琳派の迫力】
造形美に優れた琳派のこと、迫力満点の作品ももちろん展示されています。



「唐獅子図・波に犀図杉戸」、「白象図・唐獅子図杉戸」(第一会場、第1章「宗達・光悦」)
京都・養源院より修復を終えて蘇った各4面、表裏8面の宗達の杉戸絵です。実際、私も何年か前に現地で見ましたが、その時の印象が覆るほどに形、色とも鮮やかでした。通期展示が嬉しいところです。

「夏秋渓流図屏風」(第二会場、第4章「抱一・其一」)
改修前の根津美術館で見た際にも度肝を抜かれました。其一渾身の大作屏風が会期後半(11/5~)に登場します。

【視覚のマジック】
プライス展での感動こそありませんが、本展覧会でも光の効果を巧みに用いた作品が僅かながら紹介されています。

「光悦謡本」(第一会場、第1章「宗達・光悦」)
先日のレクチャーの際に教えていただきました。見る角度を変えると、その艶やかな料紙より文様と文字とがきらきらと合わせ重なって浮かび上がってきます。(通期。但し頁替あり。)

「秋草・月に波図屏風」(第二会場、第4章「抱一・其一」)
表に秋草、また裏面に波文様の描かれた小屏風です。展示のライティングも工夫され、裏から照明があてられると、通常は見えてこない波と月模様が浮かんできます。しばらく立ち止まって昼夜の光景を楽しみたい作品です。(通期)

【水墨の達人、宗達】
琳派と水墨とはあまり結びつかないような印象がありますが、実際には「蓮池水禽図」など、相当に見応えのある作品が多数紹介されています。(以下、全て第一会場、第1章「宗達・光悦」で展示。)



「龍図」「鴨図」(~10/19)
「蓮池水禽図」「龍樹図」(~10/26)
「牛図」(~10/28)
「双犬図」(10/21~11/3)
「兔図」「撫子杜鵑図」(11/5~)
「牡丹図」(通期)


展示替えが多岐に分かれていますが、19日までに一回、そして21日から28日の間にもう一回、さらには11月5日以降に一回と、計三回通えば全部制覇できそうです。

【工芸を愛でる】
絵画だけでなく、器、蒔箱、それに小袖など、いわゆる工芸品の品々にこそ琳派の技が光っています。幸いにも通期での展示が多いので助かりました。(以下はともに通期展示。)

「赤楽茶碗 銘 峯雲」(第一会場、第1章「宗達・光悦」)
非常に展示の珍しい光悦の赤楽茶碗です。楽好きには茶碗が3点出ていたのも嬉しいところでした。



「扇面貼交手筥」(第二会場、第二章「光琳・光悦」)
奈良・大和文華館よりの貴重な工芸品がいくつか展示されています。乾山の本作品をはじめ光琳の「武蔵野隅田川図乱箱」などは是非見ておきたいところです。

【抱一の金と銀】
一見、地味な印象がありますが、金と銀を巧みに操り、雅やかでかつ儚さをたたえた屏風を描かせたら抱一の右に出る者はありません。(以下、全て第二会場、第4章「抱一・其一」で展示。ともに通期。)



「夏秋草図屏風」
今更言うまでもありません。抱一畢竟の大傑作です。抱一の風神雷神図へのオマージュは、この作品で確かに示されました。溜息が出るほどに叙情的です。

「月に秋草図屏風」
夏秋草と並んでの展示です。夢幻の虚空を秋草が彷徨います。「夏秋草」との取り合わせはもうしばらくなさそうです。

最後に会場の様子についてです。写真などはVol.1の速報記事をご参照いただきたいところですが、今回の琳派展は平成館をほぼ四等分し、右に向かって右の第1会場に宗達、光悦、光琳、乾山と並べ、左の第2会場に「光琳顕彰」と抱一、其一の江戸琳派が続く構成となっています。また、基本的に各絵師ごとの展示ですが、「風神雷神図」などの同モチーフの作品は並べて置かれています。ただしそのように『変奏』している作品でも、並列展示されているものとそうでないものがある部分がややこしいところです。よって、同モチーフの細かな差異や特徴については、図録のコラムにあたるのがベストでしょう。3000円と高価ですが、カラー図版、充実した解説(一部不可解な部分あり。)と、なかなか良く出来ていました。

(全375頁の豪華図録。)

第3章の「光琳意匠と光琳顕彰」が控えめです。文字通り「光琳顕彰」を見るとのことで、それに特につとめた抱一の細かな活動(光琳百回忌など。)の紹介展示に期待しようとするとやや肩すかしを食らいます。琳派の変奏を見るには、個々の作品にあたって比べ見ることも重要ですが、こうしたテーマ別展示ももう一歩充実していればなお良かったのではないでしょうか。少々物足りなさを感じました。

対決展の印象が残っていると若干、分が悪いかもしれません。構成こそ大味ながらも、怒濤のごとく名品が連なったかの展示に比べると、琳派の系譜はやや真面目で、また作品自体にも迫力よりも繊細さで勝負するようなものも目立っています。とはいえ今回、江戸琳派から特に其一に相当のスポットライトが当たるのではないでしょうか。琳派三巨匠に比べると露出も少なく、既視感のある他絵師に比べると、明らかに新鮮味が感じられます。近美のRIMPAで見た「朝顔図屏風」をもう一度とも思いましたが、それは無い物ねだりのことなのでしょう。今回の主役は其一になるのかもしれません。

Vol.3の展示替え情報でも触れましたが、会期が全部で6回にも分かれています。足を運ぶのに3、4度では多すぎ、また1度では物足りないという方には、前後期、特に燕子花図屏風の出品されている19日までにまず一回観覧し、「風神雷神」が揃い、また『波対決』もはじまり、さらには其一の「夏秋渓流」も出る11月5日以降にもう一度というのがベストかもしれません。

*大琳派展シリーズ
Vol.12(鈴木其一+まとめ)
Vol.11(酒井抱一)
Vol.10(光琳、乾山)
Vol.9(宗達、光悦)
Vol.8(光琳、抱一、波対決)
Vol.7(風神雷神図そろい踏み)
Vol.6(中期展示情報)
Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)
Vol.3(展示替え情報)
Vol.2(内覧会レクチャー)
Vol.1(速報・会場写真)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 13 ) | Trackback ( 0 )

「大琳派展」 東京国立博物館 Vol.3(展示替え情報)

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「大琳派展 - 継承と変奏 - 」
10/7-11/16



Vol.1(速報・会場写真)Vol.2(内覧会レクチャー)に続きます。東京国立博物館での大琳派展です。既に公式HPでも出品リストが記載されていますが、今展覧会の会期は、各1週間ごと、計6回に分かれています。さすがにその全てを追うのは難しいかと思いますので、本エントリでは特に注目したい展示替え作品をいくつか抜き出してみました。

【主要屏風(襖)三変奏】
風神雷神図に始まる勇壮華美な屏風は、琳派の絵師の最も得意とするところです。中でも著名な以下3点の屏風は必見と言えるでしょう。



「風神雷神図屏風(襖)」4点揃い(10/28~)
かつての出光美術館による「風神雷神図」展や、対決展での会期最終週の熱気でも明らかなように、誰もが知る「風神雷神図屏風」は大変な人気があります。今回は宗達、光琳、抱一、そして其一の襖と、全4点の風神雷神が『対決』する予定です。既に光琳と其一の作品は展示されていますが、全部を見るには一番後に出る宗達作を待つしかありません。



「槙楓図屏風」2点揃い(~10/19)
現在、宗達と光琳の「槙楓図屏風」がともに展示されています。二者の絵師の特徴を比べるに最適な一枚になりそうです。

「波図屏風」2点揃い(10/28~)
メトロポリンタンより里帰りした光琳の「波図屏風」と、国内にありながら意外とお目にかかれない抱一の「波図屏風」が同時に展示されます。私としては本展示で一番注目したい屏風対決です。

【国宝を楽しむ】
琳派で国宝指定を受けている作品は決して多くありませんが、さすがに歴史的な琳派展だけあって、数点ほど出品されています。



尾形光琳「燕子花図屏風」(~10/19)
誰もが知る門外不出(根津美術館蔵)の至宝、「燕子花図屏風」が満を持して登場します。会期前半、約2週間しか公開されません。こちらはお早めにどうぞ。

俵屋宗達「蓮池水禽図」(~10/26)
京博ではお馴染みの「蓮池水禽図」が東京にお出ましです。東博で展示されるのはかなり久しぶりのことではないでしょうか。



俵屋宗達「平家納経」(巻き替えあり)
今回の目玉の一つでもある、広島は厳島神社所蔵の「平家納経」全3巻がお披露目中です。基本的に全会期を通して展示されていますが、2週間毎に場面毎の巻き替えがあります。要所を楽しむには足しげく通う他なさそうです。

【江戸琳派を極める】
今回の展示の主役を飾りそうな『江戸琳派』の展示替え主要作品です。いくつかピックアップしてみました。

酒井抱一「遊女立姿図」(~11/3)
今回、比較的珍しい抱一の美人浮世絵が3点出ていますが、中でも色鮮やかで気品を感じさせるものはこれでしょう。是非見ておきたいものです。

酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」(10/21~)
また十二ヶ月花鳥図かと思ってはいけません。現在、全4類(揃いで)確認されている十二ヶ月花鳥図のうち、国内でこのファインバーク・コレクション本が一挙展観されるのは極めて珍しいことです。(本邦初公開の可能性あり。)



鈴木其一「夏秋渓流図屏風」(11/5~)
其一らしさが良く出た六曲一双の大作屏風が久々に登場します。会期後半、2週間のみの限定公開です。



鈴木其一「蔬菜群虫図」(10/28~)
まるで若冲の「池辺群虫図」思わせるような作品です。其一の技が光ります。

【その他・注目作など】
上記以外の作品で展示替えのある注目作を挙げてみました。

・宗達、光悦「四季草花下絵古今集和歌巻(畠山記念館・重文)」(~10/19)
 後に頻出する琳派モチーフの登場する始祖的作品と言えるかもしれません。
・光悦「樵夫蒔絵硯箱(MOA美術館・重文)/芦舟蒔絵硯箱(東博・重文)」(~10/26)/「竹蒔絵硯箱(MOA美術館)」(10/28~)
 光悦の硯箱は計5点。展示替えは一度です。
・伝宗達「四季草花図屏風(根津美術館蔵)」(~10/19)/「草花図屏風(大和文華館)」 (10/21~)
 宗達の草花図屏風対決。
・宗達「牛図(頂妙寺・重文)」(10/28~)
 今回、宗達の水墨画が数点出ます。どれも見ておきたい作品です。
・光琳「中村内蔵助像(大和文華館・重文)」(10/28~)
 曰く付きの怪しげな人物像です。
・光琳「竹に虎図(京博)」(~11/3)/「竹梅図屏風(東博・重文)」(11/5~)
 光琳竹比べ。ユーモラスな虎に和みたいところです。

あくまでも私観ですが、後半の方が「風神雷神図」対決を含め、より見応えのある展示になるのではないでしょうか。とはいえ光琳の「燕子花図屏風」など、会期の早々に展示を終えてしまうものも少なくありません。結局、数度、上野へ足を運ぶしかなさそうです。

*大琳派展シリーズ
Vol.12(鈴木其一+まとめ)
Vol.11(酒井抱一)
Vol.10(光琳、乾山)
Vol.9(宗達、光悦)
Vol.8(光琳、抱一、波対決)
Vol.7(風神雷神図そろい踏み)
Vol.6(中期展示情報)
Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)
Vol.4(おすすめ作品など)
Vol.2(内覧会レクチャー)
Vol.1(速報・会場写真)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )

「大琳派展」 東京国立博物館 Vol.2(内覧会レクチャー)

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「大琳派展 - 継承と変奏 - 」
10/7-11/16



Vol.1(「大琳派展」速報・会場写真)より続きます。本日より始まった東京国立博物館での大琳派展です。本エントリでは、主催者側による展示のポイントなどを、先日の内覧会の際に行われた田沢裕賀氏の簡単なレクチャーに沿ってお伝えしたいと思います。(以下の写真の撮影、また掲載については許可をいただいています。)

大琳派展について

・東京国立博物館での本格的な琳派展の開催は、1972年以来36年ぶり。6人に絞った琳派の絵師たちを、記念年を迎えた光琳を軸に計4章の構成で追っていく。
・宗達、光悦=桃山時代、光琳、乾山=元禄時代、抱一、其一=文化・文政時代と、個々の絵師の特徴だけでなく、各時代の背景についてもある程度踏み込んだ展示になっている。
・壮麗な金屏風と銀屏風の展観と、視覚的にも分かり易く楽しめる内容を心がけた。

第1章「本阿弥光悦・俵屋宗達」

琳派のモチーフ
 光悦の「四季草花下絵古今和歌巻」など。全体に絡み合う蔦や秋草、銀の月は、琳派の重要なモチーフである。これらの図柄を意識して見ると、それぞれの絵師の特徴が浮かび上がり易い。
初期の宗達に見る装飾性
「四季草花図屏風」。金屏風にすかし気味の絵具が散らされる。光琳の燕子花とは対照的。宗達の比較的初期の頃の作品は、特に装飾性の高い作品が多い。
光の効果
「光悦謡本」。角度を変えてみると、文様と文字とが交互に浮かび上がって見える。手元に寄せて読む書の味わいと、飾りとして楽しむ絵画性が同居。



2つの「槙楓図屏風」
宗達、光琳の「槙楓図屏風」対決。宗達作はやや筆が重めで重量感があるのに対し、光琳の方はなめらかで構図も整理されている。またたらしこみも宗達は幹の太さを強調するような丸みを帯びているが、光琳は模様的な描写がとられている。



「風神雷神図」そろい踏み
会期後半の3週間に宗達、光琳、抱一、其一の風神雷神図を並べる。琳派の表現展開を追うには最適の作品。本展覧会の一つのハイライト。
珍しい楽茶碗
3点ほど出品される楽茶碗の中でも、「赤楽 銘峯雲」は極めて貴重。滅多に出ない作品だけによく見ていただきたい。



上野にゾウがやってきた。
京都・養源院より「杉戸絵」、計4枚(表裏8面)が出品。一度見ると忘れられないような個性的な造形。杉戸は痛みやすいが、このほど修復を終えて蘇った。
装飾から絵画へ
「源氏物語図」、「伊勢物語図」などに見る宗達の絵画性。弟子の関与も濃厚な作品だが、一般的に宗達の画風は晩年になるほど絵画的になったと言われている。



国宝「蓮池水禽図」と「白蓮図」
宗達水墨画の傑作を展示。ふわりと浮くような蓮の花に水禽が二羽。第4章に登場する抱一の「白蓮図」と比べると興味深い。また蓮も琳派を繋げる重要なモチーフの一つである。

第2章 尾形光琳・尾形乾山

2点の国宝「燕子花」
光琳の「八橋蒔絵螺鈿硯箱」と「燕子花図屏風」(~10/29)。八橋をぐるりと箱の周囲を回る斬新な意匠の硯箱と、目映い金屏風にはっきりとした絵の具で示された燕子花の並んだ「燕子花図屏風」。同屏風については所蔵の根津美術館が新築工事中のため借りることが出来た。まさに一期一会の展観である。
西行物語変奏
宗達と光琳の「西行物語行状絵」を展示。巻き替えがあるので注意されたい。



歌仙絵変奏
三十六歌仙(実際には35名しかいない。)を屏風全面に押し込めたような「三十六歌仙図屏風」。その人麻呂の姿を抜き出して描いた抱一「柿本人麿呂像」を合わせて展示。
・表と裏と
「寿老人・山水図団扇」。団扇の絵の部分だけではなく、そのまま姿で残った光琳作の貴重な団扇。背景の雪舟風の山水図が面白い。
小袖比べ
光琳の二点の「小袖 白絖地秋草模様」(一点は10/19まで)。深川・冬木の豪商の妻女のために光琳自身が直接描いたとされている。第4章の抱一「小袖 白絖地梅樹下草模様」とも比べて見てほしい。
牡丹比べ
宗達と光琳の「牡丹図」。宗達の方は全体がぼんやりとした感触に対し、光琳のそれは明晰。また宗達は葉の中で濃淡を付けているのに対し、光琳は葉の一枚毎に濃淡を付けている。
乾山の立葵
尾形乾山の「立葵図屏風」。まるで器に絵をつけるかのように絵の具をたらしている。乾山作とされる屏風は比較的珍しい。

第3章「光琳意匠と光琳顕彰」

光琳百回忌
 酒井抱一の「瓶花図」。彼によって主催された光琳百回忌の際に、参加者に配られた。光琳の江戸受容の一端。
世界と琳派
 酒井抱一編「光琳百図」。百回忌と合わせ、抱一が光琳の図柄を体系的にまとめて出版した。後に海外へ出回り、様々な芸術家たちに影響を与える。



波対決
 光琳と抱一の「波図屏風」。暗がりの空間を不気味に這う光琳の波と、銀地にたゆたう波が光る抱一。10月28日より合わせ並べて展示。

第4章「酒井抱一・鈴木其一」



酒井抱一「夏秋草図屏風」と風神雷神変奏
 光琳の「風神雷神図屏風」の裏面に描かれた渾身の一作。琳派の主要モチーフの一つである秋草が銀地に舞う。宗達、光琳と続いた風神雷神図への抱一の回答は、この夏秋草と考えるべきであろう。
抱一と江戸文化
 「松風村雨図」などの肉筆浮世絵。仏画と浮世絵にも嗜んだ抱一の意外な一面を見ることが出来る。吉原など、江戸市中に浸って生きた抱一の個性が光る。
其一のウイット
 鈴木其一「秋草・月に波図屏風」。表面に秋草が、裏面に月と波の描かれた変わり種の小屏風。裏から照明を当てると、裏の月と波がほのかに浮かび上がる。照明効果にも注目の一枚。
表具で楽しむ
 其一の「東下図」と「歳首の図」。色鮮やかな絵画が表具部分まであしらわれている。特に「歳首図」における、梅の枝の先にかかった正月飾りは秀逸。絵の一部が表具飾りと一体化している。

以上です。レクチャーは基本的に順路に沿って、各作品を上記のように簡単に解説していくものでした。実際の観覧の際にご参考ください。

*大琳派展シリーズ
Vol.12(鈴木其一+まとめ)
Vol.11(酒井抱一)
Vol.10(光琳、乾山)
Vol.9(宗達、光悦)
Vol.8(光琳、抱一、波対決)
Vol.7(風神雷神図そろい踏み)
Vol.6(中期展示情報)
Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)
Vol.4(おすすめ作品など)
Vol.3(展示替え情報)
Vol.1(速報・会場写真)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「大琳派展」 東京国立博物館 Vol.1(速報・会場写真)

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「大琳派展 - 継承と変奏 - 」
10/7-11/16



いよいよ明日の午前9時30分より、東京国立博物館にて「大琳派展 - 継承と変奏 - 」が始まりますが、本日、それに先立つ内覧会に参加して来ました。まずは取り急ぎ、会場の様子を写真にてご案内したいと思います。(撮影、掲載については許可をいただいています。)



順路は対決展と真逆です。平成館を右回りに進みます。右室(第1会場)に第1、2章、つまりは宗達や光琳らの作品が並び、左室(第2会場)に第3、4章、光琳の系譜を追うテーマ展示と、抱一、其一らの作品が続く構成になっていました。ただし主要二対決、「風神雷神図」(4点揃うのは10/28から。)、または「槙楓図屏風」(10/19まで。)については、第1会場に集められています。基本的に各絵師毎の展示ですが、一部、このような琳派の『変奏』を見る類似的な作品は、それぞれ合わせ並べられるように紹介されていました。

第1章「本阿弥光悦・俵屋宗達」


宗達VS光琳の「槙楓図屏風」対決。




京都・養源院より修復を終えた「杉戸絵」、表裏合わせて計4面が出品。


まず先にお目見えしたのは光琳作の風神雷神です。28日より宗達、光琳、抱一、そして以下の其一の四作が全て揃い踏みします。


展示作品中最大の鈴木其一「風神雷神図襖」全8面。


光悦と宗達の風雅なコラボレーションです。


京博より国宝の「蓮池水禽図」がやってきました。

第2章「尾形光琳・尾形乾山」


奥におぼろげに見えるのは、根津美門外不出の「燕子花図屏風」です。掲載不可のため、判別不能の写真にてお伝えします。




乾山の器もズラリと勢揃い。

第3章「光琳意匠と光琳顕彰」


「光琳百図」など。第3章は他に比べるとやや作品が少なめです。

第4章「酒井抱一・鈴木其一」




艶やかな小袖の向こうには、金銀の二枚の壮麗な屏風絵が控えます。


抱一の珍しい肉筆浮世絵と仏画です。


風神雷神図の扇。光琳作を写した屏風よりも、抱一らしい機知を感じます。


左「夏秋草図屏風」、右「月に秋草図屏風」。二点揃うのは意外と稀です。


酒井抱一の「四季花鳥図巻」、一度の展示替えを挟み、全て展観されます。


里帰り作でも注目の其一、「群鶴図屏風」。

当日行われた美術館側による簡単なレクチャーの模様や、プレス発表による見所、そして私のおすすめ作品や展示のポイントなどについては以降、別のエントリにてまとめるつもりです。

*大琳派シリーズ
Vol.12(鈴木其一+まとめ)
Vol.11(酒井抱一)
Vol.10(光琳、乾山)
Vol.9(宗達、光悦)
Vol.8(光琳、抱一、波対決)
Vol.7(風神雷神図そろい踏み)
Vol.6(中期展示情報)
Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)
Vol.4(おすすめ作品など)
Vol.3(展示替え情報)
Vol.2(内覧会レクチャー)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「西尾康之 - 健康優良児」 NADiff GALLERY

NADiff GALLERY渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 地下1階)
「西尾康之 - 健康優良児」
9/23-10/26



西尾康之というと、かの巨大娘の『顔像彫刻』を思い出しますが、今回はまたそれとは違った、どこかアメコミ風の女性モチーフの平面作品がずらりと並んでいました。西尾康之の新作個展です。

ともかく登場するのは、何やらSMコスチュームでも連想させるような妖しいビキニ姿を露にした、グラマーな、別の言い方をすればまさに『健康体』そのものの女性たちです。性を猛烈にアピールするポーズをとりながら、どこか見る者を挑発するかのように、その大胆な姿を見せつけています。ドギツイ蛍光色の水着や、アスリートのような隆々たる肉体美の描写は、先にも触れた通りアメコミ風です。存在感は抜群でした。

彼女たちを演出する舞台がまたシュールです。胸を大きくせり上げたその下には、無惨にも崩壊し、また煙を噴きながら粉々に砕かれたビル群が広がっています。女性が三名、窮屈そうにビルを下敷きにしながら寄り添う様は、まるで温泉にでも集ってくつろぐかのようでした。下界の様子、つまりはめちゃくちゃになった街の光景など我関せずとばかりに、セクシーアピールを淡々と続けています。

今月26日までの開催です。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「エモーショナル・ドローイング」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館千代田区北の丸公園3-1
「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」
8/26-10/13



作家の「なにかを表現しようとする欲求それ自体」(ちらしより引用)を、いわゆるドローイングから解き明かします。東京国立近代美術館で開催中の「エモーショナル・ドローイング」へ行ってきました。

出品アーティストは以下の通りです。アジア、中東の作家、計16名が紹介されていました。

イケムラレイコ(日本)、アマル・ケナウィ(エジプト)、アヴィシュ・ケブレザデ(イラン/アメリカ)、キム・ジュンウク(韓国)、ホセ・レガスピ(フィリピン)、ナリニ・マラニ(インド)、奈良美智(日本)、ジュリアオ&マニュエル・オカンポ(アメリカ/フィリピン)、S. テディ D.(インドネシア)、坂上チユキ(日本)、ピナリー・サンピタック(タイ)、ミツ・セン(インド)、アディティ・シン、シュシ・スライマン(マレーシア)、辻直之(日本)、ウゴ・ウントロ(インドネシア)

一般的にドローイングと言えば、小さな紙片にでも描かれたペンによるスケッチ風の作品を想像してしまいますが、この展覧会ではもっと広義の、言い換えれば線描から派生するアニメーションやインスタレーション表現までに範囲が広がっています。よって、展示されている作品はいわゆるドローイングだけではありません。実際、映像もかなり多く、また奈良美智の小屋を用いた大掛かりなインスタレーションなど、おおよそドローイングと銘打たれた展示のイメージからはほど遠いものもいくつか紹介されていました。そして今回の主役は、間違いなくそれらの広義のドローイングにあります。率直なところ、思っていた以上に楽しむことが出来ました。



時にデュマス風の激しい感情の発露が見られるようなイケムラレイコ、または性のモチーフも氾濫する、近代美術館としてはなかなか刺激的なミトゥ・センの紙を用いたインスタレーションなども印象的でしたが、まずおすすめしたいのが二点の映像作品、辻直之の「影の子供」と「エンゼル」です。ともに温かみを感じる手書きの線描が、その線の軌跡を残しながらモノクロの画面にて物語を練り上げていくという作品ですが、後者では男女の出生の話が、どこかシュールながらもほのぼのとした味わいにて表現されています。ラストシーンに登場する大きな木は、やはり二人をアダムとイブに位置づけるためのものなのでしょうか。のしかかるように二人を覆っていました。



奈良美智のインスタレーションが他を圧倒しています。展示室中央には、原美術館でも有名な一室を連想させる小屋が構え、その周囲には初期より近作まで、ゆうに100点を超えるドローイングがずらりと掲示されていました。少なくともここ最近、都内近辺にてこれほど多くの奈良のドローイングを見る機会などそうなかったでしょう。また今までとは大きく変化した、最新作の少女のモチーフが何とも刺激的です。まるでこれまでのピュアな瞳の中に秘めてきた、まさにエモーショナル的なものが爆発したかのようにはじけています。かの少女は、ひょっとするとここに来て反抗期を迎えているのかもしれません。



近美の現代美術展というと、どこかいつも難解な印象がありますが、今回はドローイングという間口の広い取っ付き易さと、その反面での多様性を提示した好企画に仕上がっていました。

今月13日までの開催です。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

「THE ECHO」 ZAIM

ZAIM別館3、4階(横浜市中区日本大通34
「THE ECHO」
9/13-10/5



明日、明後日に横浜トリエンナーレを予定の方には、是非ともおすすめしたい展覧会です。日本人若手アーティストのオールスターが揃います。ZAIM別館でのTHE ECHOへ行ってきました。

参加アーティストは以下の通りです。
青山悟、秋吉風人、天野亨彦、泉孝昭、泉太郎、磯邉郎、榎本耕一、大野智史、大庭大介、川上幸之介、鬼頭健吾、榊原澄人、さわひらき、竹村京、田幡浩一、名和晃平、星野武彦、政田武史、増田佳江、山口智子、渡辺豪

 

個々の展示が全体に関係する部分が少なく、画廊の企画をそのまま繋げたような印象は否めませんが、それ以前にこれほどの実力派の作家をひとまとめにして見られることからして大変に貴重であると言えるでしょう。外光を巧みに用い、そのきらめく光の波を壁の三面より照らし出す大庭大介の「UROBOROS」や、木屑をキャンバスへ塗り込めたような独特なタッチで、シュールな光景を鮮烈な色遣いで描く政田武史のペインティング、さらには暗がりの一室で、刺繍絵画をまるで映像のようになびかせた青山悟など、トリエンナーレではお目にかかりにくい、それ自体に力のある作品がずらりと紹介されています。作家の真っ向勝負を見るには、トリエンナーレよりも明らかにこのZAIMではないでしょうか。これぞ『アート』です。



とはいえ、変化球気味の、一風異なったインスタレーションが展示されているのもZAIMの奥深いところです。力漲る性のモチーフが展示室全体を埋め尽くす大野智史の「子宮としての原生林」をはじめ、絵の具チューブのロケットが行き交う泉太郎のビデオインスタレーションなどは、破天荒な面白さと、その反面での奇妙に力の抜けた笑いの感覚が魅力的な作品でした。それに鬼頭健吾や名和晃平らと言ったお馴染みのアーティストも、例えばMOTなどで見るようなイメージとは異なった作品で楽しませてくれます。まさに多種多様です。



これだけの展示を都内の画廊などで追っかけるとしたら、おそらくは数年はかかってしまうのではないでしょうか。無駄に広いスペースも、また音声ガイドの力も必要としない、ダイレクトに心へ伝わる展示が繰り広げられています。

明後日の日曜、5日まで開催です。(入場料500円です。)
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )

大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」

会期(10/7~11/16)が来週に迫りながら、出品作が未だアナウンスされていなかった大琳派展ですが、このほど東博HPにリスト一覧と展示替え情報が掲載されました。まずは下記リンク先をご覧ください。



特別展「大琳派展-継承と変奏-」  展示品リスト

章立てはシンプルに全部で4つです。琳派の系譜に連なる作品を各絵師毎に並べ、さらにそれとは別に、記念年を迎えた光琳にまつわる作品を別章(光琳意匠と光琳顕彰)で探るという構成になっていました。また既に告知されていた通り、国内各地の美術館をはじめ、メトロポリタンやファインバークなどの海外所蔵作の里帰りも予定されています。実際に見ないとイメージが掴みにくいのは事実ではありますが、全240点余りの琳派の響宴は壮観なものとなりそうです。



風神雷神図の4点そろい踏み(但し4点揃うのは10/28以降。)、または根津美の門外不出の「燕子花図屏風」(10/21より。)など、著名作の展示でも注目される本展覧会ですが、先だって出版された東京美術の「もっと知りたい」も参考に、私が各章で気になる作品をピックアップしてみました。

第1章 本阿弥光悦・俵屋宗達


「平家納経 願文・化城喩品・嘱累品」(厳島神社) 各巻2週間ずつ展示。
「四季草花下絵新古今集和歌短冊帖」(山種美術館)

「蓮池水禽図」(京都国立博物館) ~10/26

「西行法師行状絵」(出光美術館) 巻替あり

第2章 尾形光琳・尾形乾山


「四季草花図巻」(個人蔵) 巻替あり
「小西家旧蔵光琳関係資料のうち模写・下絵 立姿美人図」(京都国立博物館)
「波図屏風」(メトロポリタン美術館)

第3章 光琳意匠と光琳顕彰


「光琳百図」(東京国立博物館) 巻替あり
「観音像」(妙顕寺) 10/21~

第4章  酒井抱一・鈴木其一


「四季花鳥図巻」(東京国立博物館) 巻替あり

「白蓮図」(個人蔵)~10/26

「波図屏風」(静嘉堂文庫美術館) 10/28~

「夏秋渓流図屏風」(根津美術館) 11/5~

「群鶴図屏風」(ファインバーグ・コレクション)
「蔬菜群虫図」(出光美術館) 10/28~

なお図版は、「もっと知りたい」シリーズよりお借りしました。先日の記事の繰り返しにはなりますが、以下三冊は、展覧会出品作の下調べに最適なアイテムとなること間違いありません。改めておすすめします。

  

上記リストを見ても明らかなように、展示替えが頻繁です。一度の観覧では十分に楽しめそうもないので、前にもお伝えした前売りペアチケットを買っておくのが無難ではないでしょうか。2000円にて2回分観覧できるという優れものです。

大琳派展オンラインチケット



ここにきて各種雑誌でも続々、琳派展に関する特集が組まれています。中でもブルータス最新刊、「琳派って誰?」はビジュアル的にも琳派を手軽に楽しめる一冊ではないでしょうか。お値段の割には内容がイマイチの美術手帖の新刊「琳派」に比べれば、玉蟲氏の近代日本における琳派再発見の論考など、なかなか読み応えのある内容にまとまっていました。また会田本人へのインタビューによる、会田誠と琳派との関係を追う記事も、琳派ではなく彼の作品を見る上での重要なポイントにもなり得ます。巻末の山口晃のサントリーとのタイアップ特集が意外なほど充実していて驚きましたが、大琳派展の良いお供にもなりそうです。

「BRUTUS - 琳派って誰?/マガジンハウス」

*大琳派展シリーズ
Vol.12(鈴木其一+まとめ)
Vol.11(酒井抱一)
Vol.10(光琳、乾山)
Vol.9(宗達、光悦)
Vol.8(光琳、抱一、波対決)
Vol.7(風神雷神図そろい踏み)
Vol.6(中期展示情報)
Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)
Vol.4(おすすめ作品など)
Vol.3(展示替え情報)
Vol.2(内覧会レクチャー)
Vol.1(速報・会場写真)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )

大琳派オフのご案内

いよいよ来週より東京国立博物館「大琳派展」が始まりますが、拙ブログにて今回、「弐代目・青い日記帳」と共催する形でオフ会を開催することに致しました。



開催日:10月12日(日曜日)
一次会:東京国立博物館にて「大琳派展」を鑑賞(午後3時より)
二次会:上野駅前の「キュイジーヌ! 上野」(午後6時より3時間程度)での懇親会
http://r.gnavi.co.jp/g493572/
二次会会費:5500円(食事、フリードリンク代込み。お店は貸し切りです。)


東博では約35年ぶりとなる歴史的な琳派展です。琳派がお好きな方、あるいはそうでない方もこれを機会に楽しんでみませんか。また特にご専門の方の参加予定はありません。琳派展を皆さんで気ままに見ながら、そのまま懇親会という流れを考えています。(もちろん一次会のみ、二次会のみのご参加もOKです。)当日、上野界隈へご予定がおありの方、また会期一週目に早速の鑑賞をお考えの方などがいらっしゃいましたら、是非ともご参加ください。

参加ご希望の方は以下の方法で参加表明していただくと嬉しいです。よろしくお願いします。

・mixiにアカウントをお持ちの方
 「大琳派オフ」のコミュニティをつくりました。そちらへご参加ください。
 http://mixi.jp/view_community.pl?id=3716102

・mixiにアカウントをお持ちでない方
 拙ブログへ直接メール(harold1234アットマークgoo.jp)をしていただけると幸いです。


集合は午後3時、東京国立博物館の正門入口(門外の左側)です。大琳派展のチラシの入ったクリアファイルを持って立っている男を目印にしてください。それが私です。

それではざっくばらんな会になるかとは思いますが、奮ってのご参加をお待ちしております。

なお、お店への予約の都合上、今週の金曜日までには受付を締め切りさせていただきます。

ご参加の受付を終了致しました。多数の方のお申し出をどうもありがとうございました。

*大琳派シリーズ
Vol.6(中期展示情報)
Vol.5(平常展「琳派ミニ特集」)
Vol.4(おすすめ作品など)
Vol.3(展示替え情報)
Vol.2(内覧会レクチャー)
Vol.1(速報・会場写真)

*関連エントリ
大琳派展@東博、続報その2(展示品リスト公開。)+BRUTUS最新刊「琳派って誰?」
大琳派展@東博、続報(関連講演会、書籍など。)
大琳派展(東博)、公式サイトオープン
コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »