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山の中腹には比叡山延暦寺の別院で「湖南三山」のひとつである「善水寺」があり、岩根山に十二の塔頭があったことから「十二坊」と呼ばれるようになったようです。
また岩根山は、甲賀五十三家で後の甲賀流忍術の中心となった名門のひとつとされる岩根家が当地を自治していた事と山名が符合します。
今年は山登りをお休みしていましたが、積雪情報がなく、長丁場にならない山で、登ったことのない山の中から十二坊(岩根山)を選んで山始めとしました。
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登山口は「十二坊温泉ゆらら」の駐車場のすぐ横にあり、約2カ月ぶりとなる山登りはここから始まります。
最初は登りながらも下の道路の車の音を騒がしく感じたが、すぐに林道に出て別の登り口から山に入り直します。
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山道の中で何度か“十二坊TRAIL RUN&WALK”のチェックポイントがあり、十二坊ではトレイルラン・ウォークの大会が開催されているようです。
トレイルは22㌔・累積標高1200mのコースで、ウォークは8キロのコースとなっている。
〜修験道を駈ける〜と題されていて中々の距離だと思いますが、今日の山歩きはたったの2.5㌔なので修験の道にはほど遠いレベルですね。
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この日は反時計回りで山頂を経由するつもりでしたが、林道を横切った時の案内板に導かれてしまい、時計回りでの周回になりました。
どちらから登っても周回なので同じ道ではあるものの、感覚的にはアップダウンが多いのは時計回りの道だったように思います。
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しばらく沢沿いの道を歩くと急登が始まります。
途中までは登ったり下ったりで中々しんどい道が続くが、何ヶ所かからウグイスの鳴き声が聞こえてくる。
ウグイスの鳴き声を今年聞いたのは始めてで、もう野山には春が来ていることを実感する。
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気持ちの良い稜線歩きの道もあり、走りやすそうな道なのでトレランのランナーがここを駆け上がっていく姿を想像してみる。
とはいっても稜線は走りやすそうなものの、登りは急な場所もあったので、そこを走るのにはかなり脚力と心肺能力がいりそうです。
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稜線から山頂への道に入るまでにはシダ科植物が生えた嫌な感じの道があります。
気持ち悪いので駆け足にしたいが、前日までの雨で足元が悪いので軽快には走れない。
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大きな岩がゴロゴロしてきて空が抜けてきたので山頂近し。
想像していたより時間はかかったけど、疲れはそれほどでもなかったと思います。
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登山道には景観のある場所がありませんでしたが、山頂寸前の所に景色が見渡せる場所がありました。
岩に腰かけて一息入れようかとも思いましたが、岩の下は絶壁になっていて怖いので止めておく。
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急に道がザレてきたと思ったら、すぐに山頂に着きました。
湖南の山はこのようなザレた山が多いのは花崗岩の山が多いからなのでしょうね。
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三角点を確認。
山頂がこんなにザレていると、経年で標高が低くなったりしないのだろうかと疑問に感じたりしてしまいます。
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平地を挟んだ向こうに見えるのは飯道山とか阿星山方面でしょうか?
下に見える平野部は、竜王町方面?よく分からなかった。
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登山道で見る光景と山頂のザレ場は全く印象が異なります。
見える方向が逆光になっていて、陽の光を浴びながらパノラマで撮ってみた。
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しばらくゆっくりとしていたかったけど、下に東屋があったので下りてみる。
NHK・NTT無線中継所のアンテナ塔からまだ先に道があって進めそうだったが、どの道が正しいか分からず引き返す。
山頂に下山道があるので山頂に戻るのですが、このザレ場でズルズルと滑りそうになりながら、蟻地獄のような登りを楽しむ。
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十二坊(岩根山)で人気のスポットといえば、蔓がハート型をしたように見える「好運の蔓」です。
下山道で突然に出会いましたが、好運の御利益はなんでしょうね。
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下山した後は、渓流沿いを歩いて「磨崖不動明王」のある場所へ向かいます。
摩崖仏は高さ620cm・幅198cmの巨岩に彫られており、像高は425cm・肘幅210cm・顔幅80cmという巨大な不動さんです。
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右手に持った宝剣の長さだけでも2.3mあるといい、通称「車谷不動尊」、花園不動と呼ばれる像は江戸初期の作といわれています。
白洲正子さんも「かくれ里」で取り上げており、そこでは花園山中の不動明王は鎌倉時代として紹介されています。
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滋賀県では野洲市・栗東市・湖南市の辺りに摩崖仏が集中しており、渡来人の石の文化と密教や山岳信仰・修験道の影響が強い地方だったように思われます。
また、巨石や巨岩の多く摩崖仏に適した地盤だったことも大きな影響があったのではないでしょうか。
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元々は野鳥観察のため。次は摩崖仏や滝・巨樹・山上の磐座などの信仰の跡を見たくて山中に入っていたのが、すっかり山を登る楽しさに魅了されています。
いわゆる低山巡りですが、今年も楽しい山登りを沢山したいものです。