hiyamizu's blog

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東田直樹『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』を読む

2014年07月22日 | 読書2

東田直樹著『自閉症の僕が飛び跳ねる理由 会話のできない中学生がつづる内なる心』(2007年2月(株)エスコアール出版部発行)を読んだ。

著者は、全く会話ができず、跳びはねたり,急に大声を出したりする“平均的な”自閉症の子供だ。そんな著者がパソコンで自分の気持ちを表現している。
コミュニケーションできるタイプの自閉症の人がその内面を綴ったものはあるが、音声での言葉を持たない自閉症の人が内面を綴っているものは少ないという。

自閉症について良く知らない人の質問に答える形で書かれている。

僕は、今でも、人と会話ができません。声を出して本を読んだり、歌ったりはできるのですが、人と話をしようとすると言葉が消えてしまうのです。必死の思いで、1~2単語は口に出せることもありますが、その言葉さえも、自分の思いとは逆の意味の場合も多いのです。(まえがき)


筆談とは何ですか?
自分の力で人とコミュニケーションをするためにと、お母さんが文字盤を考えてくれました。文字を書くこととは違い、指すことで言葉を伝えられる文字盤は、話そうとすると消えてしまう僕の言葉をつなぎとめておく、きっかけになってくれました。
ひとりで文字盤を指せるようになるまで、何度も挫折を繰り返しました。それでも続けてこられたのは、人として生きていくためには、自分の意志を人に伝えることが何より大切だと思ったからです。


大きな声はなぜ出るのですか?
人に迷惑をかけていることは、分かっています。・・・僕も静かにしたいのです。けれども、僕たちは口を閉じるとか、静かにするとか言われても、そのやり方が分からないのです。


どうして質問された言葉を繰り返すのですか?
僕らは質問を繰り返すことによって、相手の言っていることを場面として思い起こそうとするのです。言われたことは意味としては理解しているのですが、場面として頭に浮かばないと答えられません。


声をかけられても無視するのはなぜですか?
・・・僕が悲しいのは、すぐ側にいる人が、僕に声をかけてくれた時も気がつかないことです。・・・声だけで人の気配を感じたり、自分に問いかけられている言葉だと理解することは、とても難しいのです。声をかける前に名前を呼んでもらって、僕が気づいてから話しかけてもらえると助かります。


最後に著者の創作童話が掲載されている。

この本では中学生だった作者が、その後、高校生になって続編『続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡』を出版している。


私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

会話がまったくできない自閉症の人の思いを書いた貴重な本だ。
質問に答える形なので、読みやすい。しかし、内容は私の自閉症への偏見を打壊すものだった。

外見からは想像できない知的な内容で、身体が思いとは別の行動をとってしまうという困難に立ち向かう人の雄々しささえ感じる。極端な例だが、車いすに乗って微動だにしないホーキンス博士の頭の中で、高度な計算がなされているようなもので、外見、発する言葉からは想像できない思いがあるようだ。

身体がというか、脳が思いとは別の命令を下し、迷惑をかけているのが分かっているのに、どうしても奇声をあげてしまったりするという。思っていることが口に出ず、違う言葉を発してしまう。これは一体どういうことか。確かに本人には辛いことだろう。
ただし、本人の感じ方は人により異なり、自閉症といっても様々なようだ。


東田直樹(ひがしだ・なおき)
1992年、8月生まれ
千葉県出身。作家。会話のできない重度の自閉症。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助なしでのコミュニケーションが可能。
小学校5年生までは授業中も母に付き添われて、普通学級に在籍。
小学校6年生から中学3年生までは、養護学校で学ぶ。その後、2011年3月アットマーク国際高等学校(通信制)卒業。
第4回・第5回「グリム童話賞」中学生以下の部大賞などを受賞。
以上経歴は、著者のホームページより 
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