三浦しをん著『神去(かむさり)なあなあ日常』(徳間文庫2012年9月)を読んだ。
本屋大賞で第4位になり、2012年に続編『神去なあなあ夜話』が刊行され、発行部数はシリーズ累計で35万部を超えるというヒット作だ。2010年にラジオドラマ化、2014年に映画化された。
神去村(かむさりむら)は三重県中西部、奈良との県境近くにある山奥の村で、「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」というニュアンスだ。(これら方言は著者の創作)
高校を出たら適当にフリーターでもやろうと思っていた平野勇気は、卒業式終了後に担任から就職先を決めておいたと言われ、母親からは行かなければこっぱずかしい詩を友達に暴露すると脅され、仕事内容も分からないまま、すぐ帰ってくればいいやと、三重県の神去村へとやってくる。
就職先は中村林業株式会社。現場での過酷な山仕事、ヒルやダニとの戦いに、脱出を試みるも失敗。雄大な自然、立ち向かう男たちに勇気は次第に魅了され、この地の留まろうと決意する。そこに、神去小学校の美人教師・直紀に一目ぼれ、かるくあしらわれても、諦めずにオズオズとアプローチする。
やがて、神去村で行われる神事オオヤマヅミが行われる。今年は48年に一度の巨大な大木を麓まで落とす危険な行事であり、勇気も・・・。
初出:『本とも』にて2007年7月号から2008年7月号まで連載され、加筆修正の後、2009年に徳間書店より刊行された。2009年5月徳間書店より刊行
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
林業が小説になるとは思わなかった。私は、若い頃、山の大きな木を切り倒すボランティアをやったことがあるので、木の切り倒し方など細かい描写も面白かったが、一般の人はどうなのだろうか。
今までにないテーマだが、地味で、軽やかさのない話を、けっこうおもしろい作品に仕上げているところはさすが筆力抜群の三浦しをん。『舟を編む』と同じと言えば同じパターンだ。
フリーター希望のチャラオが、大自然の中で徐々に山の男に変わっていく過程が見事に描かれる。
三浦しをんの略歴と既読本リスト
平野勇気(ひらの・ゆうき)
飯田与喜(いいだ・よき)
飯田みき(いいだ・みき)
飯田繁(いいだ・しげ)
ノコ
中村清一(なかむら・せいいち)
中村祐子(なかむら・ゆうこ)
田辺巌(たなべ・いわお)、小山三郎(こやま・さぶろう)
直紀(なおき)