hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

白岩玄『R30の欲望スイッチ』を読む

2014年07月10日 | 読書2

白岩玄著『R30の欲望スイッチ 欲しがらない若者の、本当の欲望』(2014年4月(株)宣伝会議発行)を読んだ。

今の世の中で若者に人気のあるものが、なぜ支持されているかを解析している。ただ、多くの解析本が作り手・送り手の魅力を解析しているのに対して、この本は受け手の側がなにを求めているかという観点で書いている。(まえがきより)

バブル崩壊後の経済低迷時代に育った30歳世代の若者は、「欲望のない世代」と言われる。 小説「野ブタ。をプロデュース」の30歳の著者は、「若い人たちに欲望がないのではなく、欲望の質が上の世代とは変わってきただけ」と指摘する。

アイドル
嵐のメンバーは五人とも「欠けているものが見えやすい」ところがある。キャラ分けがはっきりしているので、一人一人に足りないものが透けて見える。そのことが、大人が恋をしたり好意を持つ上で重要なことなのだ。

SNS
フェイスブックは世の中にあるもので一番近いのは「写真つき手紙」や「絵はがき」、あるいは「年賀状」なのだろう。・・・疲れた体で仕事から帰ってきて家の郵便受けを開けたときに、友達からの手紙や絵はがきが入っていたらちょっと嬉しい。

スポーツ
プロ野球の人気低迷について  プロ野球を見ていて感じるのは、日本の近代の会社の形がそのまま残っているように見えることだ。経営陣は不透明だし、監督やコーチ陣はユニフォームを野暮ったく着ていて・・・

マンガ
『ワンピース』はテンポのいいマンガなのでスラスラ読めてしまうのだが、・・・作者がいかにキャラクターを大事にしているかがよくわかる。・・・『ワンピース』の魅力はキャラクターの色の強さにあると言ったが、・・・メインのキャラクターだけでなく、出てくる登場人物すべてに共通している。

ドラマ
何らかの特徴を大げさにして上で繰り返させ、「この人はこういう人なんだ」というイメージを塗り重ねると存在感は強くなる。・・・そのため年配の人は人物がマンガっぽいと感じるのだが、若い人にとっては抵抗がない。・・・むしろ・・・いくらでも感情移入してしまう。

婚活
男の側が結婚に乗り気でない理由ははっきりしていて、男の人は付き合うときはストライクゾーンが広いのだが、結婚となると「選り好み」をする。・・・結婚で相手を間違えると大きな損をすることになる。・・・相手を一生養っていかなければいけない・・・
女の人は「付き合う前に選り好みをする」ことが多い。・・・信用できる・・・相手でなければ付き合わない。だから女の人は付き合う時点で損の問題が解決されていることが多い。


AKB48、半沢直樹、ONE PIECE、ミスチル、ワールドカップ……。ヒットの裏には、ヒットするモノ・コトに対する受け手の欲望・願望、共通する「ツボ」が存在する。若者の心を動かしている理由を分解し、ヒットの構造を説明する。

AKBヒットの裏に潜む受け手の「幻想」と「なりたい願望」、SNS普及の裏に見え隠れする受け手の「見栄」と「依存」……欲望のない世代の本当の欲望に迫る。

 取り上げられているジャンルは9つ。「アイドル編」ではジャニーズ、「SNS編」ではフェイスブック、「アニメ編」ではジブリなど、誰もが知っている“ヒット商品”が分析対象だ。
各章のラストには、取り上げたジャンルと関連した短編が付き、最終章は書き下ろしの小説となっている。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

若者の新しい流行現象と、なぜ流行るのかをざっと知って、もはや縁がなくなってしまった世界の雰囲気だけでも味わおうと思って読んでみた。

取り上げている流行商品・サービスについてはだいたいのことは知っているつもりだが、なぜ、シラケ世代の若者が熱中するのかはこの本の最後まで読んでも判然としなかった。個々にはなるほどと思う指摘もあるのだが、同年代といっても、ヒットの原因を解析的に理解しているわけではなさそうだ。


白岩玄(しらいわ・げん)
1983年、京都市生まれ。高校卒業後、イギリスに留学。大阪デザイナー専門学校グラフィックデザイン学科卒業。2004年『野ブタ。をプロデュース』で第41回文藝賞を受賞し、芥川賞候補になり、デビュー
著書に『空に唄う』『愛について』。
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