森博嗣著『作家の収支』(幻冬舎新書401、2015年11月30日発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
1996年38歳のとき僕は小説家になった。作家になる前は国立大学の工学部助教授で、月々の手取りは45万円だった。以来19年間に280冊の本を出したが、いまだミリオンセラの経験はなく一番売れたデビュー作『すべてがFになる』でさえ累計78万部だ。ベストセラ作家と呼ばれたこともあるが、これといった大ヒット作もないから本来ひじょうにマイナな作家である―総発行部数1400万部、総収入15億円。人気作家が印税、原稿料から原作料、その他雑収入まで客観的事実のみを作品ごと赤裸々に明示した、掟破りで驚愕かつ究極の、作家自身による経営学。
原稿料
漫画の原稿料 1枚(1頁)6000円~15000円~5万円
新聞の連載小説 一回 5万円
長編小説 400枚~600枚を雑誌に連載すると、200~300万円
印税
本の価格の 8%~14%、多くの場合 10%、書下ろしで 12%
電子書籍の印税率は 15%~30% が多い
紙の本は売れなくても刷られれば印税が払われる(出版社リスク)。
電子書籍は売れた分だけ印税が払われる(著者リスク)。
翻訳
印税を原作者と翻訳者で50:50に分けるのが普通
講演料
著者は 1時間40万円
その他
日常的に本を読む人はそんなに多くはない。小説になると数十万人と言われているほど少ない。・・・とにかく、小説というものが、超マイナなのである。・・・森博嗣程度でも、なかなかに条件の良い商売として成立している。それは・・・経費もかからないし、比較的短時間で生産できることなどが、好条件といえる。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
作家の収入をあからさまにした珍しい本だ。この森博嗣という作家を私は知らなかったが、大きなベストセラーはないが、多作でコンスタントに売れ続けた作家のようだ。収入、印税などは一例であり、平均的な値なのか私には判断できない。
そして、この作家は書く前に調べ物もしないし、ごく短期間で書き上げるようで、支出はほとんどないという。これは最盛期には毎年二十数冊を出版していたという量産型作家の場合にかぎられる特殊例だろう。
著者は小説などはほとんど読まないし、風景描写など無駄という徹底した考え方で、あきれるが、実績があるので感心するばかりだ。
著者の『すべてがFになる』は、20年かかって、
合計6000万円以上をいただいている。この作品は18万字くらいだったので、執筆に30時間かかっている。ゲラ校正などを含むと、60時間ほどが制作時間になる。時給にすると100万円だ。
著者は1時間で6000文字(原稿用紙約20枚分)打てるので、1枚5000円だと時給10万円。その後、手直し、ゲラのチェックなどがあり、時給5万円程度だという。ともかく普通ではないのだろう。
森博嗣(もり・ひろし)
1957年愛知県生まれ。小説家。元名古屋大学工学部建築学科助教授。
1996年『すべてがFになる』でメフィスト賞受賞し作家デビュー
『スカイ・クロラ』など多数
エッセイ『小説家という職業』『自由をつくる 自在に生きる』など。