伊坂幸太郎著『陽気なギャングは三つ数えろ』(NON NOVEL-1026、2015年10月30日祥伝社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、消えたアイドル宝島沙耶を追う火尻を、暴漢から救う。だが彼は、事件被害者のプライバシーをもネタにするハイエナ記者だった。正体に気づかれたギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。蛇蝎(だかつ)のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は断崖に追いつめられた! 必死に火尻の急所を探る四人組に、やがて絶体絶命のカウントダウンが! 人気シリーズ、九年ぶりの最新作!
裏表紙の「著者のことば」
シリーズ3作目は9年ぶりとなりましたが、前作から大きな変化はありません。・・・これはどこからどう見ても、現実的な物語ではないと気づきました。おとぎばなしのようなものですので、読者のみなさんもそう受け止め、楽しんでいただければと思います。
『陽気なギャングが地球を回す』『陽気なギャングの日常と襲撃』に続くシリーズ3作目。
冒頭、4人組が押し入った銀行強盗の現場で響野(きょうの)が演説する。彼は見当違いなこと、意味ないことを喋りまくり、すべての人をうんざりさせる。なにしろ強盗中に、コーヒーと紅茶の毒性比較の長口舌を恐怖に震える銀行員たちに聞かせるのだから。
どんな嘘でもお見通しな冷静な成瀬、完璧な体内時計を持ち信号変化を計算しながら目的地に秒単位到着する、運転巧みな雪子、天才的スリで動物オタクの久遠(くおん)。
銀行強盗であることに気づかれた4人組は、ハイエナ記者火尻に面白おかしい推測記事にすると脅される。
被害者のプライバシーをもネタにするハイエナ記者火尻はほざく。
俺は、少し弱った昆虫を、蟻の群れの中に落としてやるだけなんだ。あとは、蟻がその虫を食い尽くす。・・・群がって、食い散らかして楽しむのは、大勢の、普通の、人間だ。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
あいかわらずの主人公4人のキャラクターが魅力的だ。ミステリーというより痛快コメディで、話は軽快にスピーディーに進み、ユーモアに「クスリ」とさせられる場面も多い。軽やかで笑える会話で、伊坂ワールド全開。なにより、著者が楽しんでいるのが良い。
ただそれだけとも言える。
私の好きな、役に立たないが興味を惹かれる豆知識。
「シロアリは蟻の仲間ではないんですよね」「シロアリはゴキブリの仲間だからね。・・・」