hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

村上春樹『村上さんのところ』を読む

2016年04月04日 | 読書2

 

村上春樹著『村上さんのところ』(2015年7月24日新潮社発行)を読んだ。

 

WEB上で読者の質問・相談に村上さんが答えるという企画「「村上さんのところ」の書籍化

(2015年1月15日から5月13日まで119日間で読者からの質問メールは3万7465通で、村上さんは全部読んで、3716通に答えた) 

この仕事をしてつくづく実感したのは、世の中にはバルク(嵩(かさ))が大事な意味をもつものごとがあるんだな、ということでした、とにかく目の前に嵩をうずたかく積み上げて、それでやっと事態の全容が見えてくるというようなことが。

 頭の切れる人って、こんな面倒なことはまずやらないと思います。ぶちまけた話、ぼくもやっていて、「なんでこんなしんどい物好きなことをわざわざはじめちゃったんだろう?」と後悔することもありました。

 

村上さんが良く読む海外作家は、カズオ・イシグロ、コーマック・マッカーシー、ラッセル・バンクス、ドナ・タート、ジュノ・ディアズ、マッカラーズ。

 

 

読者:去年、「子猫うまれたからあげるよ」と彼女がいうので猫を譲り受けることになったのですが、渡されたのが親猫でした。

 

 

村上:僕が好きな建築? 僕は京都の詩仙堂っていう建物が昔から好きで、できるだけ人が少なそうなときに一人で行って、縁側に座ってぼけーっと庭を眺めています。なんていうことのない素直な家屋なんだけど、どこかしら人を落ち着かせるものがあります。

 

 

読者:・・・女性は目の前のことに腹を立てているのではなく、溜まった怒りを目の前の事象を通して吐き出している、ということです。・・・男性はそのような理屈の通らない状況で混乱し、対処できない、という風に理解しています。

村上:・・・それを切り抜ける方法は二つしかありません。たった二つです。よく覚えておいてください。

①    これは自然現象なのであって(嵐とか竜巻とか噴火とか)あきらめるしかないと思う。

②    とにかく平謝りに謝ってその場を切り抜ける。

それ以外に道はありません、がんばって耐えてくださいね。ソクラテスもプラトンも耐えて大きくなりました。

 

 

村上:・・・小説って、音楽とか絵とかと同じだと僕は思うんです。大事なのは、わかったとかわからないとかじゃなくて、それが身体に沁みるかどうかということなんじゃないかなと。・・・

 

 

村上:・・・読書感想文を書くコツは、途中でほとんど関係ない話(でもどこかでちょっと本の内容と繋がっている話)を入れることです。それについてあれこれ好きなことを書く。そして最初と最後で、本についてちょろちょろっと具体的に触れる。・・・

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

WEB上で個別の質問・相談に応じる企画は、確か2回目だが、サイン会やメディアへの露出より効果的に読者と著者を結び付けていると思う。村上さんの人となりや、執筆への姿勢が具体的によく解る。そのために、すべての時間(多分2か月)をこれに当て、多大な労をとった村上さんに感謝したい。

 

相変わらず、割り切り、徹底し、一貫した個人主義の考え方で、しかし、言葉で相手を傷つけることに細心の注意を払い、厳しい言い方は避け、率直で、ユーモア、余裕を持って語りかける村上さんの態度は範とすべきだ。

 

 

村上春樹(むらかみ・はるき)

1949年京都市生まれ、まもなく西宮市へ。
1968年早稲田大学第一文学部入学
1971年学生結婚
1974年喫茶で夜はバーの「ピーター・キャット」を国分寺駅南口のビルの地下に開店。
1977年(?)千駄ヶ谷に店を移す。
1979年 「風の歌を聴け」で群像新人文学賞
1982年「羊をめぐる冒険」で野間文芸新人賞
1985年「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で谷崎潤一郎賞
1986年約3年間ヨーロッパ滞在
1991年米国のプリンストン大学客員研究員、客員講師
1993年タフツ大学
1996年「ねじまき鳥クロニクル」で読売文学賞
1999年「約束された場所で―underground 2」で桑原武夫学芸賞
2006年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、世界幻想文学大賞
2007年朝日賞、早稲田大学坪内逍遥大賞受賞
2008年プリンストン大学より名誉博士号(文学)、カリフォルニア大学バークレー校よりバークレー日本賞
2009年エルサレム賞、毎日出版文化賞を受賞。スペインゲイジュツ文学勲章受勲。

2011年カタルーニャ国際賞受賞

 

その他、『蛍・納屋を焼く・その他の短編』、『若い読者のための短編小説案内』、『めくらやなぎと眠る女』、『走ることについて語るときに僕の語ること』『村上春樹全作品集1979~1989 5 短編集Ⅱ

 

翻訳、『さよなら愛しい人』、『必要になったら電話をかけて』、『リトル・シスター』、『恋しくて

     

エッセイ他、『走ることについて語るときに僕の語ること』、『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2009』、『日出る国の工場』、『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2

雑文集』 

 

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