hiyamizu's blog

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辻原登『寂しい丘で狩りをする』を読む

2016年10月09日 | 読書2

 

 辻原登著『寂しい丘で狩りをする』(講談社文庫つ27-4、2016年6月15日発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

映画のフィルム・エディターの野添敦子は、かつてレイプされて告訴した押本史夫の逆恨みに脅え、女性探偵の桑村みどりに出所間近の押本の尾行を依頼する。みどりもまた交際していた久我の暴力に苦しめられていた。予想どおり出所するや否や敦子の行方を執念深く調べ始めた押本の足音が刻一刻と迫る……。

 

 1997年東京・江東区の団地内のエレベーターホールでJTの女性職員が殺害された。7年前に彼女を強姦し、警察に届けられて逮捕され。出所後の逆恨みの犯行だった。
 この作品は、この事件に想を得ている。

 

 映画のフィルムエディターとして働く野添敦子は、かつて自分をレイプした凶悪犯・押本史夫の「あの女は約束を破って被害を警察に届け出た」という理不尽な怒りによる報復におびえていた。

 いつ出所するかも知らされない敦子に依頼され、女性探偵・桑村みどりは、押本の出所を監視し、その行動を尾行する。しかし、彼女もまた、かっての交際相手久我(こが)の暴力に苦しんでいた。

 敦子は転居を繰り返すが、押本は着々と迫り、近づいてくる。久我も、探偵と鍵屋を使ってみどりの自宅に入り込み、帰宅を待っていた。追い詰められ、迫りくる恐怖、癒えない忌まわしい記憶にさいなまれる2人の女性は・・・。

 

初出:2014年3月講談社より刊行

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 ベテラン作家に失礼だが、良く書けてはいる。ストーカーがいろいろな手を使って転居先の住所を調べ、迫って来る恐怖がよく書けている。細部も良く書きこんではいるが、ダイナミックさ、新鮮味には欠ける。

 

 押本と久我の自分勝手な考え方は良く描写されているのだが、彼ら以外の男性たちが、すべて良い人過ぎて、人間臭さがない。

 

 判決文など裁判関連の文書、探偵社の調査報告書、古い映画フィルムの修復作業など、かなりな頁を使って詳細に再現する姿勢には、私は好感が持てた。

 

 

辻原登(つじはら・のぼる)

1945年 和歌山県生まれ。神奈川近代文学館館長・理事長

1967年 文化学院文科在学中に文藝賞佳作

1985年「犬かけて」でデビュー

1990年『村の名前』で芥川賞

1994年会社を退職、執筆に専念。

1999年『翔べ麒麟』で読売文学賞

2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞

2005年「枯葉の中の青い炎」で川端康成文学賞

2006年『花はさくら木』で大佛次郎賞

2010年『許されざる者』で毎日芸術賞

2011年『闇の奥』で芸術選奨文部科学大臣賞

2012年『韃靼(だったん)の馬』で司馬遼太郎賞、紫綬褒章

2013年『冬の旅』で伊藤整文学賞、 『新版 熱い読書 冷たい読書』で毎日出版文化賞書評賞

2016年 日本芸術院賞・恩賜賞     を受賞。

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