大場大著『東大病院を辞めたから言える「がん」の話』(PHP新書1013、2015年10月30日PHP研究所発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
いまや、2人に1人ががんに罹る時代。しかし、巷には利益を最優先に治療を行ったり、勉強不足から時代遅れの治療を施したりする医師が溢れ、大手メディアは日々、がんに対するインチキ情報を垂れ流し続けている。著者は、がん外科医と腫瘍内科医という二つの資格を持ち、がん診断、手術の執刀、抗がん剤治療、緩和ケアまでを臨床現場で経験してきた、世界的にも稀有ながん専門医。抗がん剤から先端治療、大学病院の実態まで、「がん」の真実を赤裸々に語る。あなたや大切な家族が後悔しない治療を選ぶために、正しいがん知識をぜひ本書で身につけてほしい。
医者にも、知識が古い医者、金もうけ優先の医者、不勉強な医者などがいる。
インターネット上の「がん情報」は半分以上がデマ。
医学、とくにがんに関する研究開発は急速に進んでいる。
医者は上手に事実を伝え、患者も受ける治療に関心を持ち、積極的な意志表示を行うよう求められている。
大学病院勤務医の給与は、一般病院勤務医の1/2~1/3
- 標準治療:世界中どこの先進国であっても通用する、推奨レベルのもっとも高い治療
- 先進医療:保険診療との併用が認められているが、まだ安全で有効であると充分確立されていない暫定的治療
- 先端医療:医学的・行政的に意味のない私的な造語、注意が必要
高濃度ビタミンCがかんに効くといエビデンスは欠如したまま。
がんの自然退縮は、がん患者約1.2万人に1人(0.008%)の割合で発生。
日本の医療用麻薬(モルヒネなど)の消費量は欧米先進国の1/10程度。
後半は、「がん放置療法のすすめ」などの近藤本への批判
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
近藤誠氏のトンデモ本(私の見解)やマスコミの煽情的ながん情報などに煩わされて、医療現場と一般社会との情報乖離が進み、「がんリテラシー」がいっこうに育まれていないような気がします。
という著者の思いから書かれた本だ。
私としては納得できる論旨、内容であると思ったので、近藤本などに毒された人には是非読んでもらいたい。しかし、一般的にがん情報が欲しい人にとっては端的にがんについてわかる本とは言えない気がする。
「東大病院を辞めたから言える・・・」というタイトルを付けたのは売らんがなの姿勢が感じられる。辞めなければ言えなかったという内容でもないだろう。
大場大 (おおば まさる)
東京オンコロジークリニック代表、がん治療専門医 外科医・腫瘍内科医。医学博士。
1972年、石川県生まれ。金沢大学医学部卒業。
がん研有明病院等を経て東京大学医学部附属病院肝胆膵外科助教。
2015年退職し、がん相談やセカンドオピニオン外来の「東京オンコロジークリニック」を開設、院長に就任。
他の著書に『がんとの賢い闘い方 「近藤誠理論」徹底批判』