池田利道著『23区格差』(中公新書ラクレ542、2015年11月10日中央公論新社発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
一人勝ちとも言われる東京で進む「格差」。ある区で少子化や高齢化が止まった理由とは? 子育て支援や医療の手厚い区、学歴・年収・職業が非凡な区とは? その力強さの秘密を東京23区研究所所長がデータで解析。成長のヒントはここにある! 23区通信簿付き。
各区の比較は簡単ではない
世田谷区の人口は88万人。世田谷区より人口が少ない県が7つある。
人口あたりにすると千代田区がなんでも一番になってしまう。夜間人口は5万人だが、昼間は82万人。
「少子化」というウソ
2013年の合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子供の数)の全国平均は1.43で、確かに東京は1.13で全国最低だ。しかし実は、23区には若い世代が多く、5歳以下の子供の割合が多い。
年収が非凡な区・平凡な区
全国所得水準(2012年):港区904万円、千代田区763万円、渋谷区684万円、芦屋市567万円、以下中央区、文京区、目黒区、世田谷区、武蔵野市、新宿区と続く。
23区の最後は足立区323万円。しかし、足立区は全国812市区で157位、192位の大阪市、285位の札幌市より上だ。
渋谷区
ファッション文化の区。美容院店舗数が1位で、美容師が78百人と2位の港区の2倍近く。2007年には書店の売上げがダントツ1位だったが、大型書店の多くが閉店、大幅縮小し、東急本店内のMARUZEN&ジュンク堂が唯一残っている。
杉並区
関東大震災で多くの文化人が杉並に越してきて、文化のまちとなった。区立図書館の蔵書数が23区で一番だが、貸出数は5位。パラサイト男子が多く、ポルシェで走り抜ける(確かに、浜田山など井の頭通りには外車ディーラーが多い)。
目黒区
女性比87.9で、23区で女性がもっとも多い。女性の好むブランド区だ。ただし、ハイソな区は庁舎移転や都立大学移転跡地再開発などで最貧区だ。
男性と女性
男性超過の台東区(性比110)と女性超過の目黒区(88)の差は大きい。女性比が低いのは目黒、港、渋谷、文京、世田谷と続く。いずれも山の手に属し、「住みたい区ランキング」上位のブランド区。高所得、高学歴、高職種の「三高」を体現するあこがれのまちだ。
一方、男性は実利を優先し、大田区など地元雇用力が高いまちや、豊島区など都心への通勤が便利なわりに地価・家賃が安いまちなど、まさに実利優先の区を選んでいる。
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
23区間の差異に着目した点は評価できるが、内容は都民なら日頃から感じていることが並ぶ。
何かというとデータの数字がずらずら出てきて、読みづらい。その割に理由の説明ができておらず、あいまいなレッテル貼りでごまかしている。
23区の地図が欲しかった。区名が出てきても、具体的位置が分からない場合がある。東京は広い。山の手の住民でも葛飾区と江戸川区などの位置関係が思い浮かばない
池田利道(いけだ・としみち)
1952年生まれ。一般社団法人東京23区研究所所長。
東京大学工学部都市工学科卒、東京大学大学院都市工学科修士課程修了後、(財)東京都政調査会研究員、(株)マイカル総合研究所などを経て、
2011年に東京23区研究所 設立。
目次
前章 多極化する23区に生まれる「格差」
第1章 23区常識の「ウソ」
第2章 ニーズで読み解く23区格差
第3章 年収・学歴・職業で非凡な区、平凡な区
第4章 23区の通信簿
最終章 住んでいい区・よくない区を見極める方法