hiyamizu's blog

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渡辺千鶴『発症から看取りまで認知症ケアがわかる本』を読む

2016年11月07日 | 読書2

 

渡辺千鶴著、杉山孝博監修『発症から看取りまで認知症ケアがわかる本』(2016年9月9日洋泉社発行)を読んだ。

 

65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症の人は462万人、MCI(軽度認知障害、予備軍) 数は400万人で、4人に1人が認知症とその予備軍。(2012年)

 

PART1

認知症をよく理解するための9大法則・1原則

 認知症の症状や、認知症の人の世界を理解し、言うことを頭から否定せず、現実とのギャップをできるだけ感じさせないようにする。ほめたり、感謝したりし、「それは困ったわね」と同情や共感を示し、あやまったり、認めたりと、演技する。そうすれば認知症の人も異常行動をとることが少なくなり、ケアに要するエネルギーが少なくてすむ。

 

認知症の進行に合わせたケアのポイント

初期2~3年、中期4~5年、後期2~3年に分けて、具体的症状とケアのポイントが整理されている。

 

PART2

「認知症ケア 実践!シミュレーション」として「一人暮らしのナオコさんの伯母さんが認知症を発症した!」として、受診、介護保険申請、ケアプラン作成、介護認定ケアマネジャーの探し方から、入院、転院、リハビリ、入所施設選び、成年後見制度まで、ケアの具体例が時系列で詳細に語られる。

(朝日新聞の医療・健康・介護系の専門サイト「アピタル」への連載をまとめたもの)

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

 

分かりやすく、具体的、詳細で、久しぶりに手元に置きたいと思った本だ。

 

表にまとめたり、用語説明を囲み記事にしたり、本文も、イラストもポイントを示していてわかりやすい。

 

バカげたことを言ったり、やったりしても、奥さんが私に対して優しく接することができるようにとの思いやりの気持ちで欲しい本なのだ。

 

 

 

渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。東京大学医療政策人材養成講座1期生。医療ライター

医療系出版社を経て、1996年よりフリーランス。

共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。現在、総合女性誌『家庭画報』の医学ページで「がん医療を支える人々」を連載中。

 

杉山孝博(すぎやま・たかひろ)

1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院で内科研修。川崎幸(さいわい)クリニック院長。

1975年川崎幸病院に内科医として勤務。

1998年川崎幸病院の外来部門を独立させ川崎幸クリニックが設立、院長に就任。

1981年から、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)の活動に参加。
著書は、「認知症・アルツハイマー病 早期発見と介護のポイント」、「介護職・家族のためのターミナルケア入門」、「杉山孝博Drの『認知症の理解と援助』」、杉山孝博監修「よくわかる認知症ケア 介護が楽になる知恵と工夫」杉山孝博編「認知症・アルツハーマー病 介護・ケアに役立つ実例集」など多数。

 

 

 

認知症の症状

 失認(しつにん):最近の出来事をまったく忘れてしまう。家族の顔さえわからない。

 失行(しつこう):簡単な日常会話もできない。

 妄想:金銭や物に対する強い執着

 徘徊:町をあてもなく歩き回る

 他、収集癖、夜間不眠、入浴嫌い、異食、失禁など。

 

 

認知症をよく理解するための9大法則・1原則

 

第1法則:記憶障害に関する法則(経験そのものを10数年単位でごそっと忘れる)

(1)  記銘力の低下(ひどい物忘れ)
「何度言ったらわかるの」と叱っても意味がない。認知症の人は、感情が逆に鋭敏になっているので、叱られたという感情だけが残ってしまう。「財布がなくなったの?たいへんね」とオウム返しでいなす。

(2)  全体記憶の障害(経験そのものを忘れる)

(3)  記憶の逆行性喪失(過去の記憶の中で生きる)
記憶が現在から過去に向ってさかのぼって失われていく。認知症の人の「現在」は最後に残った記憶の時点。

 

第2法則:症状の出現強度に関する法則

身近な人に対してより強い症状を見せる。
認知症の人は一番身近な人にもっとも強い症状を示して、他の人には比較的しっかりした対応を示す。
財布を盗んだという疑いは、世話をしてくれる一番身近な人にもっとも強い症状を示す。一種の甘えだと思う。

 

第3法則:自己有利の法則

認知症の人は、自分にとって不利になることは絶対に認めない。
知的機能が低下し、ウソをつくことによって起る結果に対する推理力、判断力を失い、本能的自己防衛のメカニズムが働いている。
失禁しても、「私に覚えはない、孫がやったのではないか」などと平気で見え透いたウソをつく。
説教したり諭そうとしたりしても無駄な努力。病気だと割り切ること。

 

第4法則:まだら症状の法則

しっかりした部分とおかしな部分が入り混じる。

 

第5法則:感情残像の法則

頭はボケても、感情だけが残像のように残る。
楽しいできごとはすぐ忘れても、いやな思いをしたという感情だけは引きずる。
「お風呂に入らないと身体が不潔になって、病気になるといけないのでお風呂に入りましょう」というと、認知症の人が突然怒り出すことがある。「不潔」と「病気」という言葉だけが頭に残った。
「温かくて気持ち良いですから、お風呂に入りませんか」と誘う。
良い感情を残すポイント:「ありがとう」とほめたり、感謝したりする。「それは困ったわね」と同情や共感を示す。「ごめんなさい」とあやまる、認める、演技する。

 

第6法則:こだわりの法則

認知症の人があることに集中するとそこから抜け出せない。
そのままにしておく(ちらかしたまま)/場面転換をする(一緒に歌を歌う)/第三者に登場してもらう(デイサービスのスタッフ・銀行員)/地域の協力・理解を得る/一手だけ先手を打つ(不燃性にする)/認知症の人の過去を知る/長期間は続かないものと割り切る(お金や食べ物など生存に密着したこだわり以外は、長くても半年から1年)

 

第7法則:作用・反作用の法則

介護者が穏やかに接すれば、認知症の人も穏やかな表情になる

 

第8法則:認知症症状の了解可能性に関する法則

すべての認知症の症状は理解できる。
夜、大声をあげて家族の名前を呼ぶ「夜間不眠」は、一定期間必ず出現する症状だが、「見当識障害」のためいつもの部屋で夜寝ていることもわからず、恐怖感にとらわれるためだ。

 

第9法則:衰弱の進行に関する法則:認知症の老化は非常に早く進む

認知症の人の老化は、なっていない人の2~3倍の速さで進む。お世話できる期間はそれほど長くない。

 

ケアに関する1原則:認知症の人の世界を理解し大切にする

認知症の人が形成している世界を理解し、現実とのギャップをできるだけ感じさせないようにする。そうすれば認知症の人も異常行動をとることが少なくなり、ケアに要するエネルギーが少なくてすむ。

 

PART2

「認知症ケア 実践!シミュレーション 一人暮らしのナオコさんの伯母さんが認知症を発症した!」

 

認知症の専門医を知るには

「公益社団法人 認知症の人と家族の会」の「全国のもの忘れ外来(認知症外来なども含む)の一覧」

http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=2825

「日本認知症学会」の「認知症専門医リスト」

http://dementia.umin.jp/g1.html

「日本認知症学会」の「専門医のいる施設リスト」

http://dementia.umin.jp/g2.html

とうきょう認知症ナビ「かかりつけ医・認知症サポート医名簿」

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/zaishien/ninchishou_navi/soudan/iryou_kikan/meibo/

 

 

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