hiyamizu's blog

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白石一文『私という運命について』を読む

2016年11月11日 | 読書2

 

白石一文著『私という運命について』(2005年4月30日角川書店発行)を読んだ。

 

ちょっとオーバーな宣伝文句

大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀は、元恋人・佐藤康の結婚式の招待状に出欠の返事を出しかねていた。康との別離後、彼の母親から手紙をもらったことを思い出した亜紀は、2年の年月を経て、その手紙を読むことになり…。―女性にとって、恋愛、結婚、出産、家族、そして死とは? 一人の女性の29歳から40歳までの“揺れる10年”を描き、運命の不可思議を鮮やかに映し出す、感動と圧巻の大傑作長編小説。

 

物語は4章立てで、29歳~40歳までの亜紀の人生を描く。

第1章「雪の手紙」
 29歳の冬木亜紀は、元恋人の佐藤康(やすし)と、亜紀と康の過去を知らない後輩の大坪亜理紗の結婚式に出るか迷う。25歳だった亜紀は28歳の康と2年間交際し、新潟の康の実家に行き、母親の佐智子と親しくなった。しかし、康からのプロポーズを、「あなたのことは好きだったけど、ども、結婚するほど好きではなかった、と気がついたの」と断ってしまう。

康は亜紀を呼び出して、式に欠席するように頼む。母の佐智子がいまだに亜紀に執心していると言うのだ。

亜紀は、弟・雅人が恋人の加藤沙織を紹介するといので、両国にある実家に帰る。亜紀は際立った美人の沙織になにか違和感を感じる。

 式場のホテルの最上階のレストランで亜紀は、佐智子から受け取った手紙を読み直す。
「亜紀さん。あなたはどうして間違ってしまったのですか?・・・亜紀さん。選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです。・・・あなたを一目見た瞬間、私には、私からあなたへとつづく運命がはっきりと見えました。・・・」


第2章「黄葉の手紙」

福岡に赴任し1年が過ぎた33歳の亜紀は、年下のインダストリーデザイナー稲垣純平と暮らす。純平は「きみが事務所に姿を現した瞬間、僕は思ったんだ。ああ、やっとこの人が僕に会いに来てくれたって」と言った。亜紀も「なんだ、私はこの男と巡り合うためにこんな遠くの街までやって来たんだ」と感じた。

しかし、事故を起こした純平のあまりにも自己中心的一言に傷つき、亜紀は彼と別れてしまう。

第3章「雷鳴の手紙」
 34歳になり亜紀は閑職を希望して東京に戻る。弟・雅人の妻・沙織は心臓病を持ちながら妊娠する。そして、・・・。

 雷鳴の中、飛び込んだレストランで亜紀は、沙織が雅人に残した手紙を読む。

「どうか、哀しまないでください。私は長年の望みを叶えられたのです。命懸けであなたを愛することができたのです。私はあなたと出会い、あなたと一緒に生きることができて幸福でした」

第4章「愛する人の声」
 広報課次長になった37歳の亜紀は、インタビュー記事のため、香港事務所長になった康を訪ねる。東京に戻った亜紀は手紙を書き、康からの返信があった。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 意外な事件、事故がおき、どんでん返しもあり、感動的と言えば言えるが、私にはやたらわざとらしくドラマチックにしていると感じられて、素直についていけなかった。

 

迷ってばかりいて、結局ズルズルと妥協する女性は多いだろう。男性に比べ女性は結婚により大きく人生が変わることが多いので、それも理解できるのだが、主人公の亜紀は、迷ってばかりだったのに、40歳近くになって急に思い切り跳んでしまう。そのあたりが、素直に納得できない。

 

また、出会った瞬間に運命を感じたという場面が何度も出てくる。結果が出てから、振り返ればあの時はそうだったのだと思いかえすことはあるだろうが、そんなに運命を予感するようなことがたびたび起こるだろうか。

 

 章末に長文の手紙が付加されるのだが、いずれも長文で、とくに第4章の康からの返信は本文10ページにも及ぶ長文で、有り得なくない?

 

 

白石一文(しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。
文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。
2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞
2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。
他に『幻影の星』、『不自由な心』、『すぐそばの彼方』、『僕のなかの壊れていない部分』、本書『私という運命について』、『どれくらいの愛情』、『この世の全部を敵に回して』、『砂の上のあなた』、『翼』など。

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