小和田哲男監修『知識ゼロからの国宝入門』(2016年3月10日幻冬舎発行)を読んだ。
70あまりの国宝を、各、見開き2ページで、左半分は写真で、右ページに「国宝ココガスゴイ」、国宝名・成立年代・国宝指定年月・所在地、「国宝が解き明かす日本史」、「国宝の時代」と並べ、その国宝の魅力を時代背景とともに解説。さらに24の国宝について、各1/4頁づつ解説。
「国宝を紹介しながら、それぞれの国宝にまつわる物語を通して、古代・中世・近世、日本史の流れをつかもうという趣向である。」と「はじめに」にある。
現在、1100件近くの国宝が登録されている。1950年に7000件ほどに膨れ上がった国宝を「重要文化財」と変更し、とくに価値の高いものだけ「国宝」に指定した。指定されなかったものが「旧国宝」と称されることがある。
「正倉院正倉」自体は国宝だが、収納物は皇室に所有権があり、国宝には指定されていない。
都道府県別国宝保有数の第1位は東京都(276件)、2位は京都府(231)、3位は奈良県(199)、4位は大阪府(60)、以下、滋賀県、和歌山県、兵庫県、広島県と西国が並び、第9位神奈川県(18)、栃木県(17)と続く。0件なのは徳島県、宮崎県で、1件は北海道、秋田、新潟、富山、群馬、佐賀、熊本、鹿児島、沖縄だ。
『御堂関白記』は、世界的にも珍しい時の最高権力者・藤原道長の自身の日記であるが、誤字や脱字と、文法の間違いだらけ。当時の上級貴族の子息は親の引き立てで出世できたので、真剣に学問に励まなかった。誤りの訂正のし方からも道長の大雑把な性格が知れるという。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
国宝の写真をパラパラ見るには便利。
「ZOOM UP」で一部が拡大された写真が付加されているが、多面的な写真はなく、一面の外観が分かるのみで、詳細は知ることができない。一方で、その時代の中での国宝の位置づけは短文ながらよく説明されている。
「はじめに」にあるように、歴史の中での国宝たちを振り返るのには良いが、特定の国宝自体を知るには不十分。
小和田哲男(おわだ・てつお)
1944年、静岡市に生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。静岡大学名誉教授。専攻は日本中世史。文学博士。時代劇や大河ドラマの時代考証でも活躍。
目次
第1章 古代(縄文~飛鳥): 古代人の信仰を伝える国宝群
西ノ前遺跡出土土偶/七支刀(しちしとう)/金印/出雲大社本殿/高松塚古墳壁画 ほか
第2章 奈良時代: 政変に揺れた平城の歴史を彩る国宝群
『日本書紀』/阿修羅像/正倉院正倉 ほか
第3章 平安時代: 貴族社会に花開いた国風文化と国宝群
木造五大明王像/御堂関白記/中尊寺金色堂 ほか
第4章 鎌倉・室町時代: 武士が心を託した国宝群
平家納経/円覚寺舎利殿/慈照寺銀閣 ほか
第5章 近世: 乱世から泰平の世へうつろう時代を見守った国宝群
彦根城天守/東照宮/二条城二の丸御殿 ほか
付録 もっと知りたい日本史と国宝