垣谷美雨著『夫の墓には入りません』(中公文庫か86-2、2019年1月25日中央公論新社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
ある晩、夫が急死。これで嫁を卒業できると思いきや、舅姑や謎の女が思惑を抱えて次々押し寄せる。〝愛人〟への送金、墓問題、介護の重圧………がんじがらめな夏葉子(かよこ)の日々を変えたのは、意外な人物と姻族関係終了届!? 婚姻の枷に苦しむすべての人に贈る、人生逆転小説。『嫁をやめる日』を改題。 〈解説・角田龍平〉
疎遠であった夫が急死し、自由を謳歌しようとする夏葉子(かよこ)に、舅や、姑・美哉は、親切ではあるのだが、高瀬家の嫁に繋ぎとめようとあれやこれや制約をかけてくる。夏葉子は、様々な問題を振り切り、嫁をやめ、1人の女性として生きようと奮闘する。
東京から、夫・高瀬堅太郎の故郷である長崎に引越してきた夏葉子は、仕事で忙しくしていて疎遠であった夫が46歳で死んでしまっても特別悲しいとは思わなかった。家のローンは夫の死で返済したし、ミニコミ誌のアルバイトも楽しく、夫から解放され、久しぶりに自由を味わっていた。
そんな時、姑に買うのを任せた大きな仏壇が我が家に運ばれてきて、今後も夫の一族に束縛され続ける気がしてしまい、気持ちが暗くなってしまった。葬式後も様々な人が線香をあげに夏葉子の家を訪れるようになり、中でも、姑は留守のときも合い鍵を使って家に入っていたこともあった。
そんな時、夫の中学時代の同級生という女・サオリが、線香をあげに来て、夫との親密さを示唆する。出てきた夫の通帳からはサオリに何回もお金が振り込まれていた。夏葉子は浮気を疑う。
高瀬家に縛られることにうんざりした夏葉子は、東京の実家に帰り、相談すると、父は長崎に来て、話をつけてくれることになった。また、夏葉子は、母から、舅や姑との関係を切る、「姻族関係終了届」というものがあることを教えられる。
果たして、夏葉子は……。
本書は、単行本『嫁をやめる日』として2017年3月中央公論新社より刊行。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの? 最大は五つ星)
想定の範囲で先の展開が想像できる。程度問題ではあるが、どこにでも“あるある”話なのだが、気楽にスイスイ読み進められる。
夏葉子は長女で小さな時からしっかりして、大人の言うことをよく聞くしっかり者との想定だが、その夏葉子がいきなり姻族関係終了届を出すのには違和感がある。高瀬家の人たちは少なくとも悪気はないのだから、夏葉子の気持ちをもっと説明してから最終手段に出るべきだと思った。