知念実希人著『傷痕のメッセージ』(2021年3月12日KADOKAWA発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
息をのむ展開と瞠目のラスト! 医療×警察ミステリの新地平!!
「死んだらすぐに遺体を解剖して欲しい――」医師の千早が父の遺言に従い遺体を解剖すると胃の内壁に暗号が見つかった。28年前、連続殺人事件の犯人を追うため父が警察をやめたことを知った千早は、病理医の友人・紫織と協力して、胃に刻まれた暗号を読み解こうとする。時を同じくして28年前の事件と酷似した殺人事件が発生。現在と過去で絡み合う謎を、千早と紫織の医師コンビが解き明かす!
プロローグ
30年以上のベテラン医師・堀寛太は、患者に脅され、強制されながら常識外れの胃の内視鏡手術を行っていた。
水城千早:純正会医科大学病院の腹部外科が専門だが、一年間病理診断室勤務することになった。
刀祢紫織(とうや・しおり):千早と医学部同期だが、病理部では指導医。170㎝以上。
向井陽介:千早の3年先輩の外科医。
水城穣(みのる):千早の父親(母は葉子(故人))。仕事は警備員。元鬼刑事。
桜井公康:警視庁捜査一課刑事。昔、水木穣に鍛えられた。相棒は25歳の湊。
有賀:殺人班担当管理官。実質指揮を執る。
井ノ原:折紙殺人事件の元捜査員
八木沼和歌子:水木穣が警備員をしていた八木沼建設(隣に「立花材木」の工場がある)の副社長。
折紙殺人事件:28年前、5人の幼女が殺害され、折紙が残された事件。ホシは「千羽鶴」と呼ばれた。陣内桜子1歳(父親は晋太郎)が最後の犠牲者。28年後に穣が死ぬと、折紙殺人事件が再開された。
初出:「小説 野性時代」2020年1月号~12月号
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
父親の謎、その愛情を信じられない千早の気持ちと、殺人事件の謎がからみあって展開し、興味をつないで読み進められる。
最初はぎこちなく、そのうちに良いコンビとなる千早と紫織のやりとりが面白い。紫織のキャラはちっとわざとらしい。
桜井と千早たちが情報交換して協同捜査することになるとき、犯人による放火の件を千早たちは桜井に何故教えなかったのか? 放火の捜査から、防犯カメラなど犯人への追及が行われないのは何故か?
剖検台(解剖して調べる台)、焼灼(しょうしゃく:外科で病組織を焼く)など役に立たない医学豆知識がいたるところにばら撒かれる。
「本書は『傷痕のメッセージ』と『祈りのカルテ』、両作品のスピンオフに当たる作品です。両作品の読了後にお読みいただくと、一層お楽しみいただけます。」と、14頁の「クロスロード」(『傷痕のメッセージ』初回限定書き下ろし短編)が別冊の形で添付されている。(読んでもあまり関係なかったが)
零(こぼ)れた(p87)、嗜虐(しぎゃく)(p317)、嬲(なぶ)られる(p317)