宇佐見りん著『くるまの娘』(2022年5月30日河出書房新社発行)を読んだ。
Web河出のそっけないが、力こぶの紹介。冒頭9頁ほどの試し読みがある。
車で祖母の葬儀に向かう、17歳のかんこたち一家。思い出の景色や、車中泊の密なる空気が、家族のままならなさの根源にあるものを引きずりだしていく。52万部突破『推し、燃ゆ』に次ぐ、慟哭必至の最高傑作!
本作に関する著者インタビューでの冒頭の内容紹介
物語の主人公は17歳の女性、かんこ。真面目なのにときどき家族に暴力を振るったり暴言を吐いたりしてしまう父、脳梗塞で倒れてから感情のコントロールが利かなくなった母との3人暮らしだ。兄と弟は、そんな家庭に嫌気がさし、気がついたら家から出ていっていた。そんな家族が父方の祖母の死をきっかけに久しぶりに集まる。父の実家への長い道中、車中泊で旅をするのだが……。
かんこは思う。自分はひとりだけ逃げ出したいわけではない。自分も地獄を巻き起こす一員だ。誰かだけが加害者なのではない。みんな傷ついて、どうしようもないのだ。
初出:「文藝」2022年春季号
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
感情のコントロールが効かない家族4人の車での旅。うんざりの話が続き、「これは途中で投げ出すな」と思った。崩壊ぎりぎりの家族の話など当方読みたくないのだが、ともかく読ましてしまう筆力のせいなのか、意外と読めてしまった。
でも、面白くはないし、深く考えさせられたり、感動する話でもない。極端な家族だが、確かに普通の家族の中にも、こんな要素はあるかもな、と思わされた。
宇佐見りん(うさみ・りん)
1999年静岡県沼津市生まれ、神奈川県育ち。
2019年、『かか』で第56回文藝賞(遠野遥と同時受賞)、史上最年少で第33回三島由紀夫賞を受賞。
2021年、『推し、燃ゆ』で第164回芥川賞を受賞。50万部を超えるベストセラー。
かんこ:17歳の高校生。姓は秋野。動けなくなるか、何かを反復し続けるか、どちらかになり高校に行けなくなった。授業中は熟睡するし、持物や課題を忘れてしまう。
母親:脳梗塞の後遺症で悩む。リハビリでも感覚が戻らず、子どもらが背を向けていくことに耐えられず、いきり立つ。
父親:ひとたび火が付くと、人が変わったように残忍になり、DVで家族の誰かが半狂乱になる。母親(かんこの祖母)は奔放で、末っ子の父はほとんど放置されて育ち、独力で大学を出た。
兄:あきら。昨年独断で大学をやめて家を出て行った。職場の同僚(夏さん)と結婚し栃木の家に住む。
弟:「ぽん」。母の実家近くの高校を受験し、来年から祖父母の家へ行く。