hiyamizu's blog

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辰濃和男「文章のみがき方」を読む

2009年06月04日 | 読書2

辰濃和男著「文章のみがき方」岩波新書(新赤版)1095、2007年10月発行を読んだ。

表紙の裏にはこうある。
いい文章を書くために、作家・文章家たちは何を心がけているか。漱石・荷風から向田邦子・村上春樹まで幅広い人びとの明かす知恵を手がかりに、実践的な方策を考える。歩くことの効用、辞書の徹底活用、比喩の工夫…。執筆中と推敲時だけでなく、日常のなかの留意点もまじえて説く、ロングセラー『文章の書き方』の姉妹編。



わかりやすい文章を書くための心構え、方法が、三島由紀夫、江國香織など30名上の作家の文章を引用して示される。一見当たり前のことが書かれているのだが、著者の説得力ある文章に納得させられる。
また、単なる技術論ではなく、心構えが基本になっていて、平易な文章の向こう側に著者の哲学が垣間見られる。
文章は分かりやすいし、1つ1つが数ページに分かれているので、途切れ途切れでも読める。



辰濃和男は、1930年東京生まれ。ジャーナリスト。1953年東京商科大(一橋大学)卒。朝日新聞社入社。ニューヨーク特派員、社会部次長、編集委員、論説委員、編集局顧問を歴任。1975年―1988年に天声人語を担当。1993年退社。「文章の書き方」など著書多数。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

あまりにも正攻法の文章の書き方指南で、へそまがりの私はいろいろ突っ込みたくなる点もあるが、多くは文句のつけようがない基本的な心得だ。ただし、すべてこのとおりにしていたら、分かりやすく、納得できる文だが、ひっかかりがなく、仙人のような文章ができあがりそうだと、負け惜しみで言いたくなる。この本は文章の書き方でなく、みがき方だが、あくまで基本であり、このような基本の上にその人の個性が発揮されるのだろう。



いくつか挙げる。

「何度も何度もテキストを読むこと。細部まで暗記するくらいに読み込むこと。もうひとつはそのテキストを好きになろうと精いっぱい努力すること(つまり冷笑的にならないように努めること)。最後に、本を読みながら頭に浮かんだ疑問点を、どんなに些細なこと、つまらないことでもいいから(むしろ些細なこと、つまらないことの方が望ましい)、こまめにリストアップしていくこと」
と、村上春樹はアメリカの大学の講義で学生に注文したという。

(この本「若い読者のための短編小説案内」は読んだのだが、ここのところは覚えていない。「何度も読む、好きになろうとする、疑問点を挙げる」の3点は心がけたいと思う)



わかりやすい文章を書くには、(1)自分がどうしても伝えたいことをはっきりさせる。(2)単純な文章で書いてみる。・・・
(私もそう思う。言いたいことがないとブログも書けない。あまり更新に日が空かないように、無理してでも伝えたいことを作るようにしている??)

「文章の中に一貫したリズムが流れることも、私にとってはどうしても捨てられない要求であります。・・・言葉の微妙な置きかえによって、リズムの流れを阻害していた小石のようなものが除かれます。」三島由紀夫
(私も、書き下したあとには、必ず黙読することにしている。そして、すらりと読めない点を除くのに苦労する)



目次
まえがき
Ⅰ 基本的なことを、いくつか
1 毎日、書く; 2 書き抜く; 3 繰り返し読む; 4 乱読をたのしむ; 5 歩く; 6 現場感覚を鍛える; 7 小さな発見を重ねる
Ⅱ さあ、書こう
1 辞書を手もとにおく; 2 肩の力を抜く; 3 書きたいことを書く; 4 正直に飾りげなく書く; 5 借りものでない言葉で書く; 6 異質なものを結びつける; 7 自慢話は書かない; 8 わかりやすく書く; 9 単純・簡素に書く; 10 具体性を大切にして書く; 11 正確に書く; 12 ゆとりをもつ; 13 抑える
Ⅲ 推敲する
1 書き直す; 2 削る; 3 紋切型を避ける; 4 いやな言葉は使わない; 5 比喩の工夫をする; 6 外来語の乱用を避ける; 7 文末に気を配る; 8 流れを大切にする
Ⅳ 文章修業のために
1 落語に学ぶ; 2 土地の言葉を大切にする; 3 感受性を深める; 4 「概念」を壊す; 5 動詞を中心にすえる; 6 低い視線で書く; 7 自分と向き合う; 8 そっけなさを考える; 9 思いの深さを大切にする; 10 渾身の力で取り組む













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