樋口裕一著「ホンモノの文章力-自分を売り込む技術」集英社新書0056E、2000年10月発行を読んだ。
表紙の裏にはこうある。
文章を書く機会が増えている。大学の入試だけでなく入社試験でも、小論文を書かねばならない。そのうえ、自己推薦書や志望理由書、会社に提出する報告書や企画書、eメールやホームページでディスプレイ上に書く文章…。あなたは「文は人なり」と思って、そのような文章を書いていないか。そして、そのために大損をしていないか。本書は「文は人なり」ではなく、「文章とは自己演出だ」という考えにもとづき、現代人の生活全般で必要とされる“文章”の書き方を明快に解説する。自分を演出する文章を組み立てるうちに論理的思考が身につき、未知な自分にも出会える!ホンモノの文章力も手に入るはずだ。
小論文、自己推薦書など大学入試のための文の書き方が全体の2/3で、4章、5章のエッセイ、手紙の書き方についても、文章をあまり書いたことがない人が簡単にそれなりの文を書くための手引書になっている。
したがって、文の構成は型にはまって書き、イエス・ノウを明確にし、自分のアッピール・ポイントをはっきり意識、強調するなどの初歩的内容になっている。
樋口 裕一 (ひぐち ゆういち 1951年 - ) は、大分県出身の作家・翻訳家・大学教授・予備校講師。早稲田大学第一文学部卒業。立教大学大学院博士課程修了、翻訳業を続けながら予備校講師として教壇に立ち、大学入試小論文の指導にあたる。「頭がいい人、悪い人の話し方」など著書多数。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
一般向けの書物ではあるが、大学受験の人が読むべき本だ。自分を売り込むなど文を書く目的を明快にして、目的に最適な構成、文章の書き方を実例で示し指導している。
文学的文章を書くには参考にならないが、割り切った著者の考え方はビジネス文書と共通するものがある。
いくつか拾う。
「小論文試験というのは、言ってみれば、頭の良さを演出するゲームなのだ、それがほんとうの自分の意見である必要はない。」
「型どうりに書く人は、初めはうまくいかなくても徐々に上達する。論理がしっかりしているので、失敗しても、それなりのものができあがる。」
小論文はYESかNOを答える文章で、問題提起、意見提示、展開、結論の四部構成で書く。
朝日新聞の天声人語や社説を読むより、投書欄を読んで、それに賛成意見と反対意見を考える練習の方が有効だ。
小論文・レポートは自分の意見を一方的に説明すればよいが、作文・エッセイは読者に共感してもらう必要があるので、より難しい。
作文・エッセイもまずは型を利用すべきだ。
Ⅰ・予告:インパクトあることをずばりと書くか、会話や行動の描写で始め、読者の興味を引く。全体の1/5程度。
Ⅱ・エピソード:出来事を具体的に書く。全体の1/3.
Ⅲ・テーマ:Ⅱで書いた内容から得た印象や考えを深く鋭く書く。全体の1/3.
Ⅳ・まとめ:多少は余韻のある締めの言葉が欲しい。
目次
第1章 「文は人なり」にもの申す
第2章 小論文・レポート・投書―意見文の書き方
第3章 自己推薦書・志望理由書の書き方
第4章 作文・エッセイの書き方
第5章 手紙・eメールの書き方
第6章 文章は現代を救う